「日本遺産」認定で注目! 岡山・西大寺で「北前船」ゆかりの地を巡る旅

岡山市の東部に位置する西大寺(さいだいじ)は、奇祭・はだか祭りや、昭和レトロな商店街で知られるまちです。そんな西大寺に、新たな「日本遺産」の名所が誕生しました。江戸から明治時代に「北前船(きたまえぶね)」という商船に乗り、荒波を越えて一攫千金を夢見た船乗りたち。この船の寄港地だった西大寺の関連地などが、日本遺産の構成文化財に認定されました。今回は、北前船ゆかりの地である西大寺で、文化財を巡り歴史に触れる旅をご紹介します。
【監修】西大寺活性化協議会:片山紀子
目次
そもそも「日本遺産」って何?
日本遺産とは、日本各地に受け継がれてきた歴史や文化を文化庁が「ストーリー」として認定し、次世代へ伝え守り続ける取り組みです。城や祭り、伝統工芸、町並みなどが、それぞれの地域に根付くストーリーとともに「構成文化財」に選ばれています。全国に100件以上ある「日本遺産」のうち、岡山県に関するものは7件。広く知られているのは「桃太郎伝説」にまつわるストーリーですが、今回ご紹介するのは「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~」という、ロマンあふれる商船の物語です。
日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~」とは?
江戸時代から明治中期にかけて、大阪と北海道を結んだ商船「北前船」の歴史を伝えるストーリーです。北前船は、日本海、瀬戸内海を往復し、昆布やニシン、米、木綿など各地の名産品を売り買いすることで寄港地を発展させました。船主たちは交易で築いた富で各地に豪華な屋敷を建てるなど繁栄し、また寄港地で歌い継がれた民謡が船乗りたちにより海を越え、さまざまな文化や芸能として広まっていきました。荒波の危険と引き換えに一攫千金を狙えることから、船主や船乗りたちにとって夢とロマンの象徴でもあったのです。岡山市西大寺エリアも北前船の寄港地のひとつ。北前船の構成文化財となっているスポットを巡り、当時の歴史と賑わいを感じてみましょう。
まずは西大寺駅前で「いちごサイクル」をレンタル
旅のスタートは西大寺駅から。西大寺駅は、岡山駅からJR赤穂線で約18分です。まずは、駅前にあるレンタサイクル「saidaijiいちごサイクル」で自転車をレンタルしましょう。構成文化財はすべて自転車で巡ることができるエリアにあります。
◆saidaijiいちごサイクル
住所:岡山県岡山市東区西大寺上2丁目4(西大寺駅前自転車等駐車場)
電話:086-944-1807(西大寺駅前自転車等駐車場)
営業時間:8:00~18:00
料金:1日1台500円(8:00~18:00)
↓saidaijiいちごサイクルを出発し、自転車で約5分
北前船ゆかりの「金陵山西大寺(西大寺観音院)」を参拝
約1250年の歴史を誇る岡山の代表的な寺院で、日本遺産「北前船寄港地・船主集落」の構成文化財のひとつです。境内に開かれた市場を中心に寄港地として発展し、多くの商人や旅人で賑わいました。ここで全国の名産品や文化が行き交い、さぞかし活気に満ちていたことでしょう。
また、日本三大奇祭のひとつ「西大寺会陽(えよう)」が行われる寺としても有名で、かつて北前船の拠点港であった兵庫の廻船問屋「北風家」が祝主(スポンサー)を務めていたことから、この祭りも北前船ゆかりの構成文化財に認定されています。
本堂には、画家・狩野永朝が明治時代の西大寺会陽や、港に停泊する北前船を描いた絵図も展示。こちらも構成文化財のひとつで、当時の様子を知ることができる貴重な資料です。
◆金陵山西大寺(西大寺観音院)
住所:岡山県岡山市東区西大寺中3丁目8-8
電話:086-942-2058
時間:本堂授与所/8:30~17:00、堂内拝観/9:00~16:00※参拝は24時間可、会陽行事により規制する場合あり
定休日:なし
2月は天下の奇祭「西大寺会陽」を体験しよう
毎年2月第3土曜日の夜には、西大寺観音院の境内で「西大寺会陽(はだか祭り)」が行われます。まわしを締めた約1万人の男たちが、たった2本の「宝木(しんぎ)」を巡って激しい争奪戦を繰り広げる姿は迫力満点。会場は湯気が立つほどの熱気と歓声に包まれます。北前船の船乗りも、福を求め参加したのかも……? 気迫を存分に感じたいならば有料観覧席もおすすめです。当時から変わらぬ熱気を体験してみては。
↓西大寺観音院を出発し、自転車で約2分
「西大寺文化資料館」で歴史を学ぶ
西大寺地域や北前船の歴史について幅広く知ることができる資料館です。江戸時代に西大寺会陽で使われた宝木や、北前船で活躍した弁財船(べざいせん)という船の模型(構成文化財)、高瀬舟の模型、商家の看板やそろばんなどが展示してあり、当時の人びとの暮らしや文化を垣間見ることができます。そのほか、構成文化財の「船箪笥」や「引札」、「船名額」レプリカも所蔵しています。
◆西大寺文化資料館
住所:岡山県岡山市東区西大寺中1丁目16-17
開館時間:日曜日10:00~16:00(団体10名以上の場合は日曜日以外でも開館 ※要事前連絡)
定休日:月~土曜日
料金:大人(高校生以上)200円、小・中学生100円
↓西大寺文化資料館を出発し、自転車で約2分
昭和レトロな「五福通り」を散策
かつて西大寺観音院の門前町として栄えた「五福通り」。レトロな建築が立ち並び、数々の映画やドラマのロケ地になったことでも知られています。「五福」とは人生の五種の幸福のことで、①寿(寿命の長いこと)、②富(財力の豊かなこと)、③康寧(無病なこと)、④好徳(徳を好むこと)、⑤終年(天命をもって終わること)という意味があるのだそう。ここでグルメや買い物を楽しむと「福」がもらえるかもしれません。情緒ある町並みを散策して、西大寺観音院を中心に賑わったこのまちの歴史に触れてみましょう。
↓五福通りを出発し、最南端にある「九蟠常夜灯」まで自転車で約15分
北前船を導いた「常夜燈」を巡ろう
岡山市西大寺エリアは岡山県三大河川のひとつ「吉井川」の河口近くに位置し、その沿岸に建てられた「常夜燈」は、北前船や高瀬舟の出入りを安全に導く灯台として重要な役割を果たしていました。明治時代は菜種油を使い、文字どおり一晩中点灯していたのだそう。地域のシンボルともいえる、北前船ゆかりの常夜燈(7カ所8基 ※旧九蟠港常夜燈は令和7年度末に復元予定)を巡って、その灯りを頼りに航行した船乗りたちに思いを馳せてみませんか?
今回は、レンタサイクルでサクッと巡ることができる北前船ゆかりの地をご紹介しました。北前船に関連する日本遺産の構成文化財は全国52自治体に400件以上もあります。 江戸から明治時代にかけて、日本の経済を動かし、ハイリスク・ハイリターンな商売に賭けた船乗りたち。「北前船ドリーム」に興味を持ったら、ぜひ各地を巡ってみてください!