伊勢ツウのグルメライターが食べ比べ。お伊勢まいりに欠かせない、歴史ある名物餅6選
今年の初詣はどこに行くか、決まっていますか? 初詣といえば、昔から一生に一度は行ってみたいと言われる「お伊勢まいり」。伊勢神宮の周りには参拝客の為に腹持ちがよいとされるお餅を提供するお茶屋さんがたくさんあり、さまざまな名物餅があります。みなさんご存じの赤福はその代表ですね。今回は一年に一回、お伊勢さんを訪ねている旅色LIKESのグルメライターのヒロミが実際に食べ比べたお餅を6つ紹介します。お伊勢まいりが流行したのが江戸時代なので、名物餅たちも歴史があり、それぞれに由緒や特徴があります。その種類の多さや逸話を知れば、きっとお伊勢まいりと食べ比べに出かけたくなるはずです。
目次
志摩市磯部町生まれ 松阪市民にも愛されている「甘味処 山作」のさわ餅
一軒目は伊勢ではなく、松阪市内のお店です。伊勢市駅の手前にある松阪駅から歩いてすぐのところにある「甘味処 山作」は1893(明治26)年創業で、名物は「さわ餅」。四角に切ったお餅に餡を挟んだお餅で、志摩市磯部町が発祥の地ですが、松阪市にも昔からさわ餅を作っているところがいくつかあり、その一つが山作です。さわ餅は定番の白とよもぎのほか、季節限定もあります。この時期はチョコ、桜あんにいちごがありました。桜餅は正直苦手なのですが、ここの桜餡は甘過ぎず、柔らかいお餅とも合って私の中でヒットでした。あずきを使った赤飯やぜんざいも人気のようで、私が訪れた12時には地元の方がぜんざいや赤飯を食べていて、さわ餅は帰りがけにテイクアウトしていました。
◆甘味処 山作
住所:三重県松阪市中町1857
電話:0598-26-6364
営業時間:9:00〜16:00
定休日:火曜日
創業は戦国時代! 「二軒茶屋餅角屋本店」の二軒茶屋餅
二軒目はなんと、1575(天正3)年創業の「二軒茶屋餅角屋本店」。この年はあの織田信長が名実ともに天下人となった「長篠の戦い」がありました。こちらの名物「二軒茶屋餅」は、こし餡を薄い餅皮で包んできな粉をまぶしたものです。お店は伊勢市駅からバスで約20分の場所にあります。お店の裏を流れる勢田川(せたがわ)の船着き場に「角屋」と「湊屋」という二軒の茶屋があったことが名前の由来だそう。内宮(※)の参道でも買えますが、どうしてもこの由来となる風景を自分の目で見たくて初めて訪れました(ちなみに京都にも同じ由来の二軒茶屋があるのだとか)。さっそく作り立てをいただくと、まぶしたばかりだとわかるきな粉の軽い食感と、中のこし餡がマッチしていておいしい! この前にさわ餅も食べていましたが、どちらもぺろっといただけました。
◆二軒茶屋餅角屋本店
住所:三重県伊勢市神久6丁目8番25号
電話:0596-23-3040
営業時間:8:00〜18:00 ※売り切れ次第終了
定休日:無休
※内宮(ないくう): 伊勢神宮は内宮・外宮(げくう)を始め、125社から成り立っています。
季節限定商品や食事メニューも充実 「伊勢神宮内宮前 岩戸屋」の岩戸餅
おはらい町(※)の入り口にあり、お多福印でお馴染みの創業1910(明治43)年の「岩戸屋」は。2階がお食事処になっていて、関西生まれの主人が修学旅行で昼食を食べた思い出のお店なのだそう。食事メニューには伊勢名物「伊勢うどん」や「手こね寿司(マグロ)」などがあります。こちらで食べられるお餅「岩戸餅」の中はこし餡で、たっぷりのきな粉をまぶした柔らかいお餅です。小さくて甘過ぎないので、これも何個でもいけます。季節柄、桜の岩戸餅もありました。時期をずらせば桃や栗、芋などもあるみたいです。
◆伊勢神宮内宮前 岩戸屋
住所:三重県伊勢市宇治今在家町58
電話:059623-3188
営業時間:9:00〜17:00
定休日:無休
※おはらい町:伊勢神宮・内宮の前の通り。およそ800mの美しい石畳の通りには、伊勢市内特有の切妻・妻入り様式の町並みが軒を連ねています。
江戸時代から参拝者のお腹を満たしていた「へんばや商店」のへんば餅
かつて、伊勢神宮に行くためには馬から降りて川を越えなければならず、馬を返す場所=返馬所(へんばじょ)がありました。その近くで食べられた餅、ということから名のついた「へんば餅」。そんなへんば餅を販売する「へんばや」は江戸時代創業で、本店は伊勢参宮街道の最終宿場町であった小俣町明野にあり、当時使われていた物など見られますが、今回は時間がなく、おはらい町店を訪ねました。こし餡を柔らかいお餅で包んだへんば餅は餅米ではなく、団子などに使われる上新粉が使われています。また、焼いたあとにすぐ冷ますのが重要な工程だそうで、これによって餅が締まり、ほかでは味わえない弾力がでるのだとか。名物へんば餅以外にもさわ餅などの名物餅も販売しているのですが、この日は平日にも関わらず売り切れ……。次の日の朝にもう一度訪れました。やっぱり人気なんですね。次は本店に行きたい!
◆へんばや商店 おはらい町店
住所:三重県伊勢市宇治浦田1-149-1
電話:0596-25-0150
営業時間:9:00〜17:00
定休日:月曜日 ※祝日の場合は翌日休み
豊臣秀吉も食べていた? 「太閤餅」の太閤出世餅
今回初訪問の「太閤餅」。おはらい町にある創業1565(永禄8)年のお店で、名前の通り太閤さん(豊臣秀吉)が伊勢神宮を訪れた際に好んで食べていたと言われるほど参道のお店の中でも古い歴史を持つ老舗です。店内には太閤さんにゆかりのあるひょうたんがたくさん飾ってあります。スタッフさんがお店の説明をしてくださって、試食もいただきました。見た目はへんば餅に似ていますが、こちらは粒あん。甘い粒あんで柔らかいお餅でした。名前からして縁起が良さそうなお餅です。おはらい町のメイン通りから少し離れていますが、ほかのお店は改装して生まれ変わったお店が多いので、昔ながらの雰囲気を残した「太閤餅」もぜひ訪ねてほしいです。
◆太閤餅
住所:三重県伊勢市宇治今在家町63
電話:0596-22-2767
営業時間:10:00〜15:00 ※土・日・祝日は〜16:00
定休日:無休
「お伊勢まいり」のテッパン! 「赤福」の赤福餅
最後はもう説明いらないくらい全国で有名な「赤福」です。創業は1707(宝永4)年で、自宅がある大阪でも買えますが、赤福餅は絶対、本店で食べたい派。本店で食べる作りたてのお餅は別格のおいしさです。指で形取った手作り感がたまらない……。本店は明治時代からの建物で、お参りができる朝5時に合わせて開店します。内宮近くに泊まる際は必ず日の出前にお参りするのですが、参拝後、すでに営業しているのを見るとなんだかほっこりします。最近は白餅・黑餅が出たので、3種類の味が楽しめます。初めて黑餅を食べた時はいつもの赤福餅だと思っていて、食べて驚きました。黑餅は黒糖なんですね(やっぱり赤福餅派かな)。
◆赤福 本店
住所:三重県伊勢市宇治中之切町26番地
電話:0596-22-7000(総合案内)
営業時間:5:00〜17:00
定休日:無休
おわりに
お伊勢参り旅人が道中で空腹を満たすために、お餅を出すお茶屋さんや名物餅が生まれたそうですが、今でもこれだけたくさんの名物餅が人々に愛されているのは素敵なことですね。ほかにも、桑名市の「安永餅」に四日市市の「なが餅」に伊勢市の「神代餅」、とまだまだ食べたいお餅がたくさん。みなさんも、お気に入りの名物餅を見つけてみてください。