日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』の舞台・端島(軍艦島)を巡る旅
長崎市在住、旅色LIKESライターのおんりです。10月20日の21:00~日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』がスタートしました。舞台は長崎県の端島(はしま)、通称・軍艦島です。主演は神木隆之介さんで、ほかにも豪華俳優陣が多数出演しています。端島は、007シリーズの『007 スカイフォール』でセットモデルとなったり、映画『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』のロケ地にもなったので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。今回は、話題の端島を紹介します。
目次
端島ってどんな島?
端島は、長崎港から南西に約18キロメートルの沖合に位置する海底炭鉱の島です。戦艦「土佐」に似ていたことから、別名「軍艦島」とも呼ばれています。元々は岩礁だけの小さな島でしたが、良質な石炭が採れることから人々が移り住み、6回以上の拡張工事を経て現在の姿になりました。軍艦島のゆるキャラ「ガンショーくん」は、岩礁の上に人工の島がつくられた様子を表現しています。とぼけた表情がなんともいえず可愛いですよね。
端島炭鉱は1974(昭和49)年に閉山し、長い間立ち入りが制限されていました。2001(平成13)年に三菱マテリアル株式会社から高島町へ所有権を無償譲渡。その後高島町が長崎市と合併したことで2005(平成17)年長崎市へと継承されました。2008(平成20)年に長崎市端島見学施設条例と端島への立ち入りの制限に関する条例が成立し、ようやく観光客が上陸・見学できるようになったのです。2015(平成27)年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業の構成資産」として世界文化遺産に登録されると、世界中から観光客が訪れ、いまや長崎観光にかかせない場所となっています。
軍艦島に行くには?
軍艦島に上陸するには、ツアーに参加しなくてはなりません。現在5社が上陸クルーズを運航しており、それぞれ出港時間、料金、所要時間、内容が異なります。私は軍艦島との関りが深い高島(たかしま)にも上陸できる高島海上交通のツアーを選びました。高島海上交通のブラックダイヤモンド号はドラマの影響もあり、定員約200人にもかかわらず平日でも満員御礼! 事前予約は必須です。ちなみにドラマの1話目に登場していたのは、軍艦島コンシュルジュが催行する「第3世代 JUPITER」です。
軍艦島への上陸は天候に大きく左右され、出港できたとしても上陸できるとは限りません。上陸率は約60パーセント。この日、天気は良かったのですが風がやや強かったため、上陸するのは難しいかなぁと思いつつ出港しました。
◆軍艦島クルーズ事務所(高島海上交通)
住所:長崎市長崎市元船町11-22
電話:095-827-2470
料金:大人4,000円、小人(4歳以上~小学生)2,000円 ※ネット予約割引あり
その他:要予約
船からしか見ることができない世界遺産
「明治日本の産業革命遺産」は、岩手県から鹿児島県までの23の構成資産で成り立っており、軍艦島だけで世界遺産というわけではありません。23の構成資産のうち、8つ(①小菅修船場跡➁第三船渠③ジャイアント・カンチレバークレーン④占勝閣⑤旧木型場⑥端島炭坑⑦高島炭坑⑧旧グラバー住宅)が長崎県にあり、そのうち➁③④は稼働中の造船所の中にあるため非公開とされています。非公開の「ジャイアント・カンチレバークレーン」と「第三船渠」は、海からしか見ることができないので、居眠りして見逃さないようご注意ください。
高島で炭坑の歴史を学ぶ
長崎港から約40分で高島へ到着します。構成資産のひとつ「高島炭坑」は日本初の蒸気機関を石炭産業に導入し、日本の石炭産業を飛躍的に進歩させたことが評価されています。1986(昭和61)年に閉山し、最盛期には約1万8千人だった人口も今では約370人に減少しています。軍艦島には資料館や売店、トイレなどの観光施設はありません。そのため高島の「石炭資料館」で、これまでの歴史や当時の生活について学びつつ、お手洗い休憩も済ませます。滞在時間は30分ほど。ガイドさんによると『海に眠るダイヤモンド』で謎の歌手・草笛リナを演じている池田エライザさんの父は高島出身で、祖父は炭鉱夫だったそう。なんとも不思議なご縁。
◆石炭資料館
住所:長崎市高島町2706-8
電話:095-896-3110
開館時間:9:00~17:00
休館日:12月29日~1月3日
入館料:無料
いざ、軍艦島へ!
高島から約10分で軍艦島に到着します。島が近づくにつれ、その異様な姿に乗客からは「おぉ~。」とどよめきが。他の船会社と時間を調整して上陸するため、私達は先に軍艦島を周遊をすることになりました。外海は波が荒く、船酔いしやすい人は酔い止め必須です。修学旅行生たちの悲鳴があちこちから聞こえ、「絶叫アトラクションじゃん!」という声まで。上陸するには、国土交通省九州運輸局や長崎市条例の安全基準を満たす必要があり、上陸の瞬間まで可能かどうかわかりません。今回は、何とか上陸できることになりました。よかったー。
上陸すると、そこは別世界。目に入るものすべてが廃墟と瓦礫です。ガイドさんから聞く当時の仰天エピソードは、たくさんありすぎて紹介しきれないほど。炭坑へのエレベーターは壁も天井もなく、スカイツリーの高さを一気に下降するため失神する人もいたとか、最盛期には東京都の9倍もの人口密度となり世界一だったとか、当時10パーセント程度だった「三種の神器(洗濯機、冷蔵庫、白黒テレビ)」の普及率がほぼ100パーセントだったとか、枚挙にいとまがありません。ガイドさんが変われば説明内容やエピソードも変わるため、何度訪れても楽しめます。当時暮らしていた人たちは現在50代~90代。元島民がガイドをしていることも多いので、当時のリアルなエピソードが聞けるかも。
見学できる場所は、島全体の約2パーセントほど。ドラマに登場する幹部住宅や竪坑なども辛うじて残っていますが、いつ崩れてもおかしくない状態です。約50年前にここが時代の最先端の場所だったとはとても信じられません。台風のたびに劣化した建物が崩れていくので、今見ている景色が常に一番新しい状態です。私は3回目の上陸ですが前回あったベルトコンベア跡が半分くらい崩れていたので、すべて瓦礫と化す日は近いのかもしれません。このまま何もせず放っておくと、軍艦島は元の岩礁に戻ってしまうそう。訪れてみたい方はお早めにお越しください。
上陸できなかったときもあきらめない!
軍艦島クルーズは天候に左右されるため、天気が良くても上陸できなかったり、運航中止になったりすることがあります。また船が苦手な方、小さなお子さん連れの家族など、軍艦島へ行くことが難しい方には「軍艦島デジタルミュージアム」がおすすめです。プロジェクションマッピング、VR、MRホロレンズ体験などの最新デジタルコンテンツで、島の様子をゲーム感覚でリアルに体感することができます。展示資料も充実しており、軍艦島への理解がより一層深まること間違いなし! 冒頭にご紹介した「ガンショーくん」が気になった方は、ミュージアムショップも忘れずに覗いてみてくださいね。
◆軍艦島デジタルミュージアム
住所:長崎県長崎市松が枝町5-6
電話:095-895-5000
営業時間:9:00 ~ 17:00(最終入館16:30)
休館日:不定休
入館料:一般1,800円 中学生・高校生1,300円 小学生800円 3歳未満無料
その他:団体料金、県民割などあり
おわりに
『海に眠るダイヤモンド』は、「端島炭坑」が最盛期だった1950年代の島の生活や人間模様を中心に展開していきます。私のイチオシは土屋太鳳さん演じる百合子が、原爆による心の傷と自分の心のモヤモヤや、やり切れない気持ちを持て余し、つい高飛車に振舞ってしまう姿。軍艦島クルーズを終えてからドラマを見ると、「あぁ、ガイドさんが言っていた場所だ!」とか「軍艦島ミュージアムで見た」というエピソードが次々に出てくるのでより理解が深まります。ドラマと共に、軍艦島の過去と現在に思いを馳せる旅、おすすめです。