さらば青春~青春18きっぷリニューアル~
愛読書は時刻表、旅色LIKESライターの鉄道旅担当・なおです。10月25日、鉄道マニアの間で衝撃的なニュースが走りました。毎年春、夏、冬の休暇期間中を中心に発売されてきた「青春18きっぷ」。鉄道ファンでなくてもその名前は知っているという方は多いと思いますが、この冬の分から内容が大幅リニューアルされるというニュースでした。その全貌と考察を記します。
大きなメリット2つを失うリニューアル
「青春18きっぷ」は1枚の切符で5日間(または5人)、JRグループの普通・快速列車の普通車自由席、BRT、JR西日本の宮島航路を利用することができる切符でした。
では今回のリニューアルで何が変わったのかというと、
①自動改札機をご利用いただけるようになります。
②「5日間用」に加え、新たに「3日間用」を発売します。
③有効期間はご利用開始日から連続する3日間または連続する5日間です
(JRグループプレスリリースより引用)
の三点です。
①について、これまでの青春18きっぷは長尺の切符で自動改札を使うことはできませんでした。特に利用の初めには駅員から日付入りのスタンプをもらわなくてはいけなかったのですが、昨今無人駅や時間限定でしか駅員がいない駅が多くなり、非常に不便でした。今回の利用から自動改札利用可となったことでこの点は便利になったと感じます。
一方で自動改札は1人1枚切符を持っていないと通れません。これまでの青春18きっぷは例えば3人で日帰り旅行をする際に1枚の青春18きっぷに3つスタンプを押してもらえば使うことができたのですが、これからはそういう使い方はできず、3日間用、あるいは5日間用のきっぷを3人分そろえないといけなくなりました。
②について、これまでの青春18きっぷは5日間用しかありませんでしたが、新たに3日間用が発売されることとなりました。これは次の③のルール改正に起因するものと推察されます。
③について、 これまで青春18きっぷは春、夏、冬の利用可能期間であればどの日でも使うことができました。例えば冬なら12月10日から翌年1月10日までの間なら12月10、11日で大阪に遊びに行って、今度は12月24日に名古屋に行って、1月1日に初詣に伊勢に行ってという使い方ができました。ところが今回からは12月10日に利用を開始したら連続する5日間、すなわち12月14日までしか利用することができなくなります。学生や引退後のシニアの方などお時間のある方であれば利用可能ですが、仕事のある方の利用は極めて困難になりました。その救済ということで発売されたのが連続3日間用の青春18きっぷです。これなら土日に有給を1日足せば3日間利用することが可能です。
ちなみに料金は5日間用で12,050円と据え置き。新たに発売される3日間用は10,000円です。
青春18きっぷは1日換算2410円でその日一日全国どこでもJR線に乗れるのが魅力でした。しかしながら新幹線の開業にともなう並行在来線の第三セクター移管により信越本線、東北本線、鹿児島本線、北陸本線という在来線の主要幹線が次々JRから切り離されその利用可能区間が大きく狭まって近年魅力が低下していました。
それでも「1枚のきっぷを複数人でシェアできる」点や「比較的長い有効期間のなかで使う日を自由に決められる」点が魅力だったのですが、今回のリニューアルでそのメリットを2つとも失うこととなりました。
今回のリニューアルの理由はいくつかあると思いますが、大きくは先ほどの駅の無人化に対する対応、有人駅における青春18きっぷ業務対応の負担軽減化、そして金券ショップに余剰券を売られないための対策だと思われます。今回のリニューアルで特に3日間用は秋に発売される「秋の乗り放題パス」と内容がほとんど同じで料金が高くなっただけの商品になりました。今後は「秋のフリーきっぷ」が青春18きっぷに統合されて7,850円から10,000円になるのかもしれません。
格安帰省も、超ローカル線が「青春18キッパー」で埋まるのを見るのも、もう叶わない
わたしはこれまでどれだけ青春18きっぷにお世話になってきたかわかりません。札幌から愛知県まで夜行快速を2つ乗り継いで実質5,000円で帰省したことも何度もあります。北海道のローカル線を1日で乗りつぶしたのも友人の青春18きっぷが1日分余ったからこそできたのでした。全国に点在する超ローカル線は青春18きっぷ発売期間中だけいわゆる「18キッパー」で満員になりますが、青春18きっぷの魅力が低下したことで今後はこのような光景も見られなくなりそうで、そういった線区は廃止も早まるかもしれません。
国鉄時代の昭和57年に増収策として登場した青春18のびのびきっぷ。42年の長きにわたって多くの鉄道ファンに愛されてきましたが、時代が変わり長距離移動には新幹線に乗ってほしいJRにとっては増収策どころかうまみのないきっぷになってしまったのかもしれません。廃止にならなかっただけまだよかったのかもしれませんが、なんとも残念なリニューアルだと思います。