【静岡】大人も学ぶ夏! 伊豆半島ジオパークで大地のパワーを体感しよう
静岡県在住の旅色LIKESライター・さっかです。全国的にも有名な観光地である伊豆半島は、美しい海、キンメダイなどのおいしい魚介類、多くの温泉地など魅力でいっぱいのエリアです。この夏に海遊びなどで出かける方も多いのではないでしょうか。そんな伊豆半島は地質学の面から見ても、世界的に重要な場所です。約2000万年前の伊豆半島は日本のはるか南、数百キロの太平洋に沈む火山群でした。その後、約100万年前にフィリピン海プレートに乗って本州に到着。今も、プレートの動きにより本州に押し込まれ続けています。そんな伊豆半島で大地のパワーを体感できる旅を紹介します。
目次
ジオパークとは
地球・大地を意味する「ジオ」と公園を意味する「パーク」を組み合わせた言葉で、地質学的意義のあるサイトや景観が、保護・教育・持続可能な開発が一体となった考え方によって管理された、一つにまとまったエリアを指します。美しい模様の地層や「どうしてこの形になったんだろう」と考えさせられてしまう岩石、温泉などの恵みも与えてくれる火山などを見て、自然とわたしたちの暮らしとのつながりを考えるきっかけとなることが目的です。少し難しく聞こえるかもしれませんが、まずは気軽に伊豆半島ジオパークを観光し「地球ってすごい!」をたくさん見つけましょう。
“30度”が美しさの秘密 「大室山(おおむろやま)」
大室山は、はるか南の海で生まれて移動してきた海底火山の集まりである「伊豆東部火山群」の一つ。約4000年前の噴火でできた火山弾やダラダラと流れる粘り気の弱いマグマ(スコリア)が火口の周囲に降り積もってできたスコリア丘です。これらが積み重なって丘ができる様子は、砂時計の中にできる山の砂が積もることによって崩れ高くなっていくのにも似ています。砂時計同様、スコリアが積もって崩れ、斜面が約30度になることを「安息角(あんそくかく)」と言い、大室山の見栄えが美しく見えるために必要な条件なのだとか。
山体保護のため、徒歩での登山は禁止されているので、リフトで山頂へと向かいます。大室山は火山ですが、単成(たんせい)火山と言い、同じ場所から再び噴火することはないそう。山頂に着いたら噴火口跡は必ず見てほしいです。すり鉢状の噴火口跡は直径約300m、周囲約1,000m、深さ約70m。徒歩約30分で一周でき、月のクレーターを見ているかのような非日常感が漂います。また、標高580mの山頂の周りは遮るものがなく、真っ青な海を眺められ爽快感でいっぱい。条件が良い日にはスカイツリーや富士山も見えます。
◆大室山登山リフト
住所:静岡県伊東市富戸1317-5
電話:0557-51-0258
営業時間:3〜9月 9:00~17:00、10〜2月 9:00~16:00
定休日:不定休 ※荒天候時、6・12月に長期整備休業あり
料金:大人往復1,000円、小学生往復500円
自然が作り出した美しい六角形に驚き! 「爪木崎」
爪木崎は青い海に真っ白な灯台が映えるのどかな場所です。西側の海岸には「俵磯(たわらいそ)」と呼ばれる六角形の柱上の岩が積み重なった景色が広がっています。この岩は「柱状節理(ちゅうじょうせつり)と呼ばれ、マグマや溶岩が冷え固まるときに堆積が縮んでできたものです。爪木崎の柱状節理は、はるか南の海底でマグマが噴火せず、冷え固まったものが移動し本州に衝突・隆起したもの。この大移動だけでも壮大な物語を感じますし、人の手で六角形に削ったわけでもないことを知ると「自然の力ってすごい!」と感じます。周囲には遊歩道が整備されているので夏らしい風景を求めて散策してみるのも良いですね。足元が悪いところもあるので、歩きやすい靴で散策してください。
◆爪木崎
住所:静岡県下田市須崎1237
海底でできた地層の縞々に出会う「柿崎弁天島」
下田市にある無人島・柿崎弁天島は、幕末に来航したペリーの乗る黒船に吉田松陰が密航するために舟を漕ぎ出した場所です。「島」ではありますが、現在は陸続きになっていて歩いて渡れます。 近付いて見ると、くっきりとした縞々模様の地層であることがわかります。この縞々は、数百万年前に海底火山から噴出した火山灰や軽石が波や海流によって運ばれて出来上がります。この地層が地殻変動によって海中から隆起し、波で削られて出来上がったのが弁天島なのです。ではなぜ、海の中にあったと言えるのでしょう。その答えは縞々にあります。よく見ると、縞々が並行ではなく斜めに交差する部分があります。「斜交層理(しゃこうそうり)」と呼ばれる部分で、浅い海底で海流の動きによって土砂が流動した痕跡になります。当時の海流の向きや水深を推定するヒントでもあるそう。ほかにも、この地層には生物の這った後もあるそうなのですが、わたしは見つけられず……。地層を見るって、謎解きのようですね。
柿崎弁天島は遊覧船「黒船サスケハナ」からも観察できます。遊覧船が港のほうへ進路を変える辺りで見られる、見事な縞々と岩に突き刺さるかのように建つ神社のお社は必見! 周遊中にはほかにも、小さな島があったり、たくさんのカモメがエサを求めてギリギリのところをかすめていったりするのも楽しいです。
◆柿崎弁天島
住所:静岡県下田市柿崎27-27
◆伊豆クルーズ(下田港内めぐり)
住所:静岡県下田市外ヶ岡19番地
電話:0558-22-1151
営業時間:始発便9:10、最終便15:30
定休日:無休
料金:大人1,500円、小人 750円
温泉熱のエネルギーでのびのび暮らすワニたちにメロメロ「熱川バナナワニ園」
大地のパワーを感じるものとして最も身近なのは、やはり温泉。伊豆半島の東にある熱川(あたがわ)温泉は、この地域で育まれてきた「湯守り」と呼ばれる温泉管理・利用の⽂化が大地の遺産とそれを持続可能な方法で活用してきた好例であると、ジオサイトに登録されました。電車からも見えるほど湯けむりが立っている温泉櫓が印象的です。この地でワニをはじめ、熱帯の動植物たちが温泉の熱を利用して飼育・栽培されているのが熱川バナナワニ園。「怖そう」という一般的なイメージとは全く違う、かわいらしいワニの姿が見られます。飼育しているワニの種類は世界でもトップクラスの16種約140頭。ワニのエサやりは迫力満点なので、公式ホームページから開催日時を確認して出かけてください。温泉の熱を使って熱帯のジャングルのような環境をつくりだした植物園エリアもおすすめ。バナナなど熱帯の植物も数多く育ち、ジャングル探検のような雰囲気が味わえます。
◆熱川バナナワニ園
住所:静岡県賀茂郡東伊豆町奈良本 1253-10
電話:0557-23-1105
営業時間:9:00~17:00
定休日:無休
入園料:大人2,000円、小学生 1,000円
おわりに
伊豆半島には堂ヶ島・仁科港ジオサイトや三島ジオサイトなどまだまだジオパークがたくさんあり、洞窟散策や露天風呂など楽しみ方もさまざま。この夏は大人も楽しみながら地球の恵みや大地のパワーを感じ、自然と人間の関わり方を考えるきっかけにしてみませんか。