【石川県】小松の人が紡いできた町人文化で“和”に触れるおとな旅

お酒と旅が大好きな旅色LIKESライターのあやっこです。今年3月に延伸した北陸新幹線に乗って石川県小松市へ行ってきました。小松は様々な“和文化”が紡がれてきたまち。あたたかな小松の人たちに案内いただきながら、北陸の豊かな“和文化”を体感してきました。
目次
伝統と最先端が融合するまち、石川県小松市

小松駅前の「コマツの杜」では世界最大級のダンプなどが展示されています。
石川県小松市は、北陸の空の玄関口・小松空港があるほか、3月には北陸新幹線延伸により、その停車駅として小松駅が誕生。東京からは2時間40分ほどで訪れられるようになりました。世界的な建設機械メーカー、コマツの発祥の地のほか、先端企業が多数立地し産業都市としても有名。
また平安時代から絹織物が盛んです。江戸時代には加賀藩主・前田利常(としつね)公の文化政策により町人文化が花開き、小松瓦、小松畳表、絹織物、茶の湯、生花、和菓子といった“和”の産業・文化が今も色濃く残っています。今回は、「小松の町人文化」にスポットを当て、“和”を感じる旅を楽しんできました。
九谷焼を使った華やかなアクセサリー作りを体験
石川県を代表する伝統工芸品、九谷焼(くたにやき)。誰もが一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。発祥はお隣の加賀市とされていますが、原料となっている「花坂陶石(はなさかとうせき)」の産地は小松市にあります。色鮮やかな色彩と大胆な絵付けが魅力です。市内には現在も九谷焼の窯元が約20軒あります。
今回は、浅蔵五十吉深香陶窯(あさくらいそきちしんこうとうよう)に伺いました。豊かな色彩の釉薬(ゆうやく)※1 を開発し、九谷焼発展の基礎を築いた浅蔵五十吉が開いた工房です。展示室には、名作がずらり。色鮮やかな九谷焼の数々に思わず見入ってしまいます。
※1 陶磁器の表面にかける薬品
◆浅蔵五十吉深香陶窯
住所:石川県小松市八幡己50-1
電話:0761-47-0051
営業時間:10:00~16:00
定休日:不定休
ギャラリーに併設したカフェで、九谷焼を使ったアクセサリー「九谷花(くたにか)」作りを体験しました。花びらを模した布を重ねてコサージュを作り、九谷焼と組み合わせます。ふんわりとした花になるよう力加減に気をつけるのがコツ。花の雰囲気と飾りの色合いを組み合わせて、オリジナルの作品が出来上がりました。
体験は今回特別に行われたイベントですが、気になった方は小松駅前のお土産ショップ、小松土産店(こまつとさんてん)で「九谷花」を購入できます。とくに小松市出身の布花(ぬのはな)アーティスト、鮫島亜紀さんとのコラボは、柔らかな質感の布花と色鮮やかな九谷焼の飾りのコントラストが凛とした雰囲気で素敵。 焼物というと貴重で縁遠い感じがしますが、アクセサリーだと日常使いができるのもいいですね。
良縁の象徴・うさぎとさるの神社を巡る「うさる詣」
まち中でも九谷焼に触れることができます。「菟(うさぎ)」とご縁の深い莵橋(うはし)神社、本折日吉神社には御祭神 大山咋神(おおやまくいのかみ)の使いである「神猿(まさる)」の九谷焼の置物が奉納されています。2つの神社を周ることを「うさる詣」といい、うさぎとさるは良縁の象徴とされていることから、良縁成就祈願をする人が多いのだそう。
置物は1個800円から購入できるので、奉納用とお土産用に2個買いする方もいるんだとか。また御朱印は、九谷焼の絵付け師が描いた絵が使われ、両方の御朱印を合わせると一枚の絵と「縁」の文字が完成します。
◆菟橋神社
住所:石川県小松市浜田町イ233
電話:0761-24-2311
◆本折日吉神社
住所:石川県小松市本折町1
電話:0761-21-6913
2つの神社を巡る間には、地元の商店街の散策もおすすめです。伝統的な建築様式「こまつ町家」が残るまち並みは風情があり、つい立ち寄りたくなるお店もたくさん。老舗の名店もあり、小松の文化に触れる体験ができます。
茶壷の看板が目を引く創業約400年の「長保屋(ちょうぼおや)茶舗」は、北陸最古のお茶屋。こちらでは石川のお土産の定番、加賀棒茶の焙煎を体験しました。緑がかったお茶の葉と茎を焙烙(ほうろく)に入れ、弱火でゆっくり煎っていきます。茶葉が焦げないか心配になりましたが、焙煎が進むにつれて部屋中に甘く香ばしい香りが広がっていきました。通常は茶葉のみが用いられますが、加賀棒茶は茶葉と茎を一緒に焙煎することで香り高くなるのだそう。フレッシュなお茶の香りから徐々に香ばしい香りに変化する様を楽しめるのは焙煎体験の醍醐味です。元の茶葉の色と、出来上がりの色の違いにもびっくり。
◆長保屋茶舗
住所:石川県小松市龍助町81-1
電話:0761-22-1079
営業時間:9:00~18:00
定休日:無休
茶焙煎体験(要予約):1,100円
小松市には江戸時代から明治時代まで、北海道と大阪を結んだ北前船が寄港しました。北海道から運ばれてくる海産物を160年以上扱ってきた乾物屋「すみげん」。こちらでは、伝統の食文化を伝える講座が行われています。今回は出汁についてのレクチャーと飲み比べを体験しました。鰹節や昆布などを実際に見ながら、種類や味の違いなどを教えてもらえます。店内では乾物のほか佃煮や粕漬けなど、酒の肴も並んでいてお土産にあれこれ買ってしまいました。
◆すみげん
住所:石川県小松市三日市町9
電話:0761-22-4214
営業時間:9:30~18:00
定休日:水曜日
※体験日時、費用は公式HPを要確認
町をあげて繋ぐ歌舞伎の文化、絢爛な「曳山」に圧倒

毎年5月に行われる「お旅まつり」は、小松市を代表するイベントです。まつりで使われる「曳山(ひきやま)」という山車は、小松市の宮大工などの職人によって作られ、小松市指定文化財に登録されています。駅から歩いて5分ほどの場所にある「こまつ曳山交流館みよっさ」にて実物を見ることも。
全部で8機ある曳山は、それぞれ市内8つのまちが受け継いでいます。意匠が異なり、間近で見ると豪華さに驚きます。「お旅まつり」では曳山の上で子ども達が演じる「曳山子供歌舞伎」が目玉のひとつで、250年もの間続いてる伝統なんだそう。まち全体で文化を繋いでいることに、想いの深さを実感しました。
◆こまつ曳山交流館みよっさ
住所:石川県小松市八日市町72-3
電話:0761-23-3413
営業時間:10:00~17:00
定休日:4~11月 無休、12~3月 水曜日、12月30日~1月1日
入館料:無料
町民が育んできた料亭文化の中で過ごす、贅沢な時間
和文化体験のなかでもわたし一押なのが、料亭での食事です。料亭というと敷居が高いイメージですが、小松では商人たちが利用してきた歴史から、格式がありながらも親しみを感じられる雰囲気があります。お値段も京都や金沢の一流料亭に比べると手が届きやすいのも嬉しいです。
「長沖(ながおき)」は、明治時代に創業された老舗。歌舞伎の演目「勧進帳」の舞台となった「安宅の関」の近くにあります。歴史を感じる館内は風情があり、離れの客室「長沖金剛(こんごう)」は国の有形文化財にも指定されているのだそう。紅色の壁など加賀の文化を感じられます。
どれも絶品で、特にお造りは色々なお刺身がたくさん盛られていて驚きました。 小松市のご当地グルメとして知られている「かに甲羅揚げ」はこちらが発祥なのだそう。サクサクの衣の下には蟹の身がたっぷり入っていて、一緒にいただいた小松のお酒が進んでしまいます……。加賀の伝統を感じるお部屋のしつらえや、お料理が盛られた九谷焼のお皿など、食事だけでなく料亭で過ごす時間全体で小松の文化を堪能できました。
◆長沖
住所:石川県小松市安宅町タ140
電話:0761-22-3838
営業時間:11:00~19:00 ※19:00以降は予約の場合のみ営業
定休日:不定休
豊かな和文化を楽しむ小松旅のすすめ

今回初めて訪れた小松市。同じ石川県内の金沢に負けず劣らず、さまざまな伝統文化に触れられます。特にまちの人たちが当たり前のように、それぞれの文化を紡いでいることは感動しました。伝統文化というと少し構えてしまいますが、あたたかなまちの人たちのおかげで、楽しく堪能することができます。和の文化が今も息づく小松、北陸旅にぜひ追加してほしい旅先です。