【川瀬良子の農業旅】いわき市の田んぼで忘れられないお米を作る
こんにちは! 農業旅アンバサダーの川瀬良子です。今回は、私たちの食に欠かせない「お米」を作っている、福島県いわき市の農家・白石長利さんを訪ねました。5月に田植えを行い、7月末に成長の様子を見てきたので、その時の模様もお届けします。
目次
忘れられないお米を求めて再びいわき市へ
“いわきの太陽”ことファーム白石の白石さんとの出会いは、昨年11月に行われた旅色LIKESのイベントでした。イベントの内容は過去の記事をご覧ください。
イベントに参加したみなさんと一緒に、白石さんが育てたサトイモを収穫し、お昼ごはんにはニンジンやダイコンがたっぷり入った豚汁や野菜のアヒージョ、おいしいお米をいただきました。野菜は、すべて白石さんが育てていると聞いて驚いたものです。年間約18種類もの野菜を栽培しているのだそう。お米がとてもおいしくて、その場で注文をした方もいました。私も今年に入ってから、白石さんのおいしいお米が食べたい……と取り寄せをしています。毎日のように食べていて「久々に田植えをしたいな~、白石さんの田んぼで体験できたらありがたいな〜」と思い連絡。普段から地域の方の田植え体験などを受け入れている、ということで快諾いただき、5月末に再びいわき市へ行ってきました。
泥との格闘!? 協力プレーで田植え体験
ファーム白石は、いわき駅から車で約15分のところにあります。田んぼはイベントのときに、お昼ごはんを食べたビニールハウスの斜め前の場所にあり、なんだか懐かしさを感じました。
作業は、苗が育っているトレーをハウスから田植機まで運ぶところからスタート。「今回のお米の品種は、ひとめぼれ。種もみ※1から、植え付けができる10センチ程の苗になるまで約1カ月経っています」などの説明を聞き、管理してここまで育てていただいていることに感謝だな〜と思いました。
※1 もみ殻が付いている状態のお米
見えてきたのは、25メートル×100メートル程の田んぼ。「こんなに広いの!? 」と、友達と話していたら、後ろから白石さんが颯爽と田植機に乗って登場しました。そのまま田んぼへ入っていき、田植機で次々に苗を植え付けていきます。まっすぐ綺麗にすごいスピードで植え付けられていき、気づくと緑色の面積が多くなっていました。道路側のスペース5メートル×100メートル程を残してストップ。
「ここからは、みんなで植え付けてね。」の声がけで田植えがスタート、と思いきや……田植え初挑戦の友達が多く、泥に慣れるまでにワチャワチャの大騒ぎ! 履いている長靴がすぽっと足から抜けてしまったり、転びそうになったり、悲鳴が聞こえてきます(笑)。
農作業大好きになったきっかけがお米作りだった私は、コロナ禍前まで毎年のように田植え体験をしていたので、スムーズに田んぼに入り歩くことができました。ベテランです(笑)。数年ぶりの田んぼは、長靴を履いていても太陽のぬくもりのある温かい泥やにゅるっとした独特の感触、におい。久しぶりに全身で自然を感じ「たのしい~!」と、私もみんなと叫んでいました。大人になると、泥と触れ合うことがなかなかなく、童心に戻れる感じが妙に楽しくなります。これこそが、田植えの醍醐味!
泥の中に立つことに体のバランスが慣れてきたところで、手のひらサイズに分けた苗を片手に持ち、そこから3束ほどを摘まんで、植え付けをしていきます。倒れないようにしっかりと土に刺すようにするのがポイントです。腕を遠くまで伸ばし、前かがみの体勢になるので、足がプルプルして、そのまま倒れそうになることも。無事に植え付けても、まだ油断はできません。後ろ向きに下がっていくのですが、後ろに人がいないか、誰かが植え付けた苗を踏みつぶしたりしないか、そして自分自身が転ばないようになどの体力だけでなく神経も使います。「後ろにいるからね~! 」とみんなで声を掛け合いながら、誰も転ぶことなく、終えることができました!
田植機で植え付けたところと私たちが手で植えたところでは、苗の並び方の違いが一目瞭然ですが、植え付け直後から愛着が湧いて、しばらく田んぼを眺めていました。
お米の成長から考える自分の成長
田植えから約2カ月経った7月末、苗の成長過程を見たくて再び白石さんの田んぼへ行ってきました。植え付けの時は10センチ程だった苗が、倍以上の背丈になり、片手で握るのがやっとの太さになっています。白石さんの日々の管理に本当に感謝です。そして時の流れを感じるのと、しっかり根を張ってくれたんだ、という感動が込み上げてきました。「この2カ月で苗はこんなに成長しているのに、私は何も成長してないな……」とつぶやくと「俺なんかね、毎年毎年、なんかやれたっけ? みたいな反省ばかりですよ」と白石さん。作物の成長って、本当にたくさんのことを感じさせてくれるんです。お米作りは何度体験しても、たくさんのことを学ばせてくれます。この後は苗の成長に合わせて、水の管理や除草などの作業を続け、順調にいくと10月下旬には収穫ができるそう。農作業は数カ月かかるからこそ、楽しみがずっと続きます。
最後に、プロの農家である白石さんが、一人でも多くの人に農業体験をしてもらいたいのはなぜか、気になったので聞いてみました。
「一番の理由は、誰もが必要不可欠な「食」という行動に対し、自らの身体に入る野菜やお米など“作物の一生”を体験を通して理解することで、人生を楽しんで貰いたいなぁと思ったからです。人は長く生きられますが、作物のほとんどは1年で寿命を全うします。半年や1年という時間の要所要所でかかわり合いをもつのも、農家だけ体験するにはもったいないと思っています。自然の恵み、日本の農業に親しみや楽しみ、慈しみを感じて欲しい!って、感じで、やってんだと思うのであります(笑)」
“農家だけ体験するにはもったいない”という考え方は、白石さんのお人柄をすごく表している感じがして、胸を打たれました。そんな白石さんが作るおいしいお米は、インスタグラムのダイレクトメッセージから注文できます。福島弁で言うと「うぢげのお米が食べかったら、インスタグラムからダイレクトメッセージくんちぇ!」ということです(笑)
今秋に黄金色の稲穂が実ったら収穫も体験に行く予定です。たくさんの気持ちを、みんなでしっかり味わいたいと思います。楽しみです! 白石さん、暑い中本当にありがとうございました!