【今月の旅写真】大阪で優雅なひとときを感じる3つのバラ園めぐり

大阪府

2023.06.07

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【今月の旅写真】大阪で優雅なひとときを感じる3つのバラ園めぐり

新緑の若葉が芽吹き、緑のまぶしい季節。外を歩いていてもすがすがしい空気を感じられ、気持ちがいいものです。まもなくやってくる梅雨前線を前に大阪を訪れ、満開のバラが楽しめる3つの公園を巡りました。花だけでなく、造園や景観の美しさを取り入れた撮影ポイントをお届けします。

Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材: RICOH GRⅢx

目次

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バラの開花時期や見頃はいつ?

雨の「浜寺公園ばら園」でしっとりと

国の登録有形文化財「浜寺公園旧駅舎」のカフェで一息

川に挟まれた都会のオアシス「中之島公園」のバラ園

ビジネス街にたたずむレトロな名建築

市民のオアシス 「靭(うつぼ)公園」のバラ園

おわりに

バラの開花時期や見頃はいつ?

バラの開花時期は、その年の気候やバラの品種によって異なりますが、おおむね5月〜6月頃とされています。関東から西日本では5月〜6月はじめ、北陸や甲信越、東北では6月に、北海道は6月中旬〜7月がバラの見頃です。

また、春に一度だけ開花する「一季咲きのバラ」、一度開花した後に剪定を行うことで約一か月後の夏頃に咲く「二番花」、春と秋に開花する「返り咲きのバラ」、気温15度以上あれば咲き続けることができる「四季咲きのバラ」などもあり、厳冬以外の季節でその姿を目にすることができます。

雨の「浜寺公園ばら園」でしっとりと

はじめに訪れたのは堺市にある浜寺公園です。明治6(1873)年につくられた府営公園で、園内のバラ庭園は、全国でも珍しい日本庭園になっています。回遊式庭園に見立てた「湖沼・水路の景」、「里の景」「山間の景」など5つのゾーンと遊歩道、ヨーロッパの庭園を思わせる「まちの景」など、敷地内には約 400 種、6,000 株のバラが咲いています。

田園風景が広がる「里の景」は、他の公園ではなかなか見ることのできない光景です

雨をしのぐことのできる東屋風の休憩所からの眺めも風情があります

水辺の景色が楽しめるゾーン「湖沼・水路の景」

バラをより近くで楽しめる、西欧の庭園をイメージした「まちの景」

イングリッシュガーデンを思わせるかわいいベンチもありました。晴れた日は記念撮影スポットに

訪れた日は、あいにく雨足の強い日でしたが、雨は写真好きにとって絶好の撮影のチャンス。カメラがなるべく濡れないように配慮が必要ですが、自然を対象としたとき、緑や花の美しさと鮮やかさを引き出してくれるのが雨です。滴をまとった姿も、雨の日にしか見ることのできない美しさ。雨に濡れたバラからは芳醇な香りが立ち込め、五感を通してバラを堪能できます。

撮影ポイント:傘の下の限られた状況で撮影するとき、GRIIIxの「クロップ」50㎜または70㎜に切替えながら撮影しています。70㎜は中望遠レンズのようになり、被写体を引き寄せた撮影ができるので、花に近づけない場合にも活躍します。「マクロモード」を合わせて使うことで背景のボケも柔らかく表現できます。

水滴を帯びた花びらは麗しいバラの雰囲気にぴったりです

遠景の木立の間から見える光が玉ボケになり、水滴とイメージが重なり合います

背景に違う花を配置すると彩りが加わります

撮影ポイント:スマホと同様に、カメラ背面モニターのタッチパネルでAFを使い、ピントを置く位置を自分自身で決めます。手前と奥、どちらも撮影すると伝える意味合いの異なる写真を撮影することができます。

画面奥にピント:バラ咲く園内の様子を伝える写真

手前のバラにピント:雨に濡れたバラが主役の写真

雨の日は園内に人影も少なく、集中して撮影できるのも魅力です。これからは、雨の日も撮影日和として楽しんでみてくださいね。

◆浜寺公園 ばら庭園 
住所:大阪府堺市西区浜寺公園町
開園期間:3月16日~12月15日(閉園中は「まちの景」のみ OPEN )
開園時間:10:00~17:00(入園は16:00まで)
入園料:無料
休園日:火曜日(祝日の場合は翌日)※休園日は「まちの景」中央口も閉門

国の登録有形文化財「浜寺公園旧駅舎」のカフェで一息

撮影に没頭し、気が付けば土砂降りの大雨になってしまった夕刻。この日の終わりに、浜寺公園旧駅舎内にある、「カフェ駅舎」に立ち寄りました。浜寺公園旧駅舎は、明治時代の代表的建築家である辰野金吾氏が、同じく建築家であり、都市計画家の片岡 安(やすし)氏と1905年に大阪で設立した、「辰野片岡事務所」が手掛けた木造建築物です。柱や梁が幾何学的デザインで美しく、学術的評価も高い建物は、国の登録有形文化財になっています。現在は、地域の歴史・文化の振興の発信の場としてギャラリー、カフェ・ライブラリー、イベントホールの営業がされています。

明治建築では数少ない木造平屋建ての旧駅舎は、2016年まで実際に駅舎として利用されてきました

駅舎のそばにもバラが咲いていて、建物の雰囲気とお似合いです

「カフェ駅舎」は、市民交流の場として地域の方々によって運営されています。図書コーナーも併設

手づくりのチーズケーキは素朴で優しい味がしました。コーヒーとセットで500円と驚きのお値段

◆浜寺公園駅旧駅舎
住所:堺市西区浜寺公園町2-232
営業時間:10:00~17:00(カフェ営業は16:00まで)

川に挟まれた都会のオアシス「中之島公園」のバラ園

翌朝は雨も上がり、都心のオアシスとして市民に親しまれている「中之島公園」を訪れました。堂島川と土佐掘川に挟まれた水辺に位置する中之島公園は、明治24(1891)年に大阪市で初めて誕生した公園です。周囲には、中央公会堂や府立中之島図書館、レトロなビルが立ち並び、川には観光船が走るなど、大阪を代表する観光地としても有名です。年末にはイルミネーションのライトアップも開催され、多くの来園者でにぎわいます。

公園内に整備されたバラ園に咲く品種は、約310種類およそ3,700株。朝から多くの人でにぎわっていました

景観は「大阪みどりの百選」にも選ばれています

バラは、春と秋、5月中旬と10月中旬に見頃を迎え鑑賞を楽しめます

撮影ポイント:背景や近くにある建造物をあえて取り入れて撮影しましょう。園内の造形美や周囲の建物などがバラの美しさとコラボすることで、季節感あふれる思い出の写真になります。

園内の「ばら橋」との組み合わせは中之島公園らしい一枚に

高層マンションを隠しながらも、街灯のデザインを入れて

カフェのオープンテラス席との組み合わせで場所の雰囲気を取り入れて

高速道路のカーブと遊歩道のカーブで画面に流れをつくりました

花の美しさを引き出したいと思うとき、晴天時に気を付けておきたいのは、直射日光の当たっている花を避けることです。特に、赤やマゼンタなどの濃い色や黄色の花は、直接強い光が当たっていると、花びらに立体感がなくべったりとした色になってしまいます。できるだけ日陰に咲いている、痛んでいない花を探して撮影してくださいね。

撮影ポイント:ここでも、GRIIIxの「クロップ」70㎜に設定して前後にボケをつくり、奥行きを活かした撮影を行います。前ボケは、花びらなどをレンズにぴったりと付くほど近づいて撮影することで透けるように淡くボケます。背景のボケは、手前の花にしっかりとピントを合わせ、遠方の背景を取り入れることでぼかすことができます。

レンズの目の前に花びらを位置させて、大きな前ボケに

光の当たっている芝を背景に。落ちた花びらもアクセントになります

図鑑のように花ばかりをコレクションするのではなく、景観とともに花を楽しんでくださいね。

◆中之島公園 バラ園
住所:大阪府大阪市北区中之島1
開園時間:常時開園

ビジネス街にたたずむレトロな名建築

次の公園へ移動する間に、レトロ建築を散策しながら歩いてみませんか? 国指定重要文化財であり、大阪のシンボルともいえる中之島中央公会堂をはじめ、中之島公園の南側に位置する、淀屋橋〜北浜〜船場(せんば)界隈は、昔も今も商都大阪の中心地です。御堂筋沿いには、新たに建てられたオフィスビルが立ち並び、ビジネスマンが往来する姿が多く見られます。そうした街中に、時代の時を刻む美しいレトロ建築が点在しています。

大正7(1918)年に完成 赤レンガとアーチが美しいネオ・ルネッサンス様式の中之島中央公会堂

大正7(1918)年に完成 赤レンガとアーチが美しいネオ・ルネッサンス様式の中之島中央公会堂

明治、大正、昭和初期に名をなした大阪商人たちが財を投じて建築した近代名建築の数々は、町の一角に異彩を放つように現れ、当時の大阪の歴史を伝える美術館のよう。ここに、あそこにと、見つけながら歩けばそれだけで楽しい散策ができます。

大阪証券取引所の建物前には、大阪経済の育ての親といわれる五代友厚の像もあります

唐物商(欧米品の輸入業)を営んでいた芝川又四郎によって建てられた芝川ビル

建築家 辰野金吾氏が設計したレンガづくりの旧大阪教育生命保険ビル

ゴシック様式の尖塔デザインの日本基督教団浪花教会

このほかにも淀屋橋〜北浜〜船場界隈を歩けば、たくさんの名建築に出合えます。レトロ建築が目的の散策もおすすめです。

市民のオアシス 「靭(うつぼ)公園」のバラ園

大阪のオフィス街に広がる靭(うつぼ)公園は、東西に細長い形をしており、公園の中央を南北になにわ筋が貫く形で「東園」と「西園」に分かれています。最も駅に近い、公園の東側から入ると、真っ直ぐに伸びる美しいケヤキ並木が迎えてくれます。木の下では、付近の住民やオフィスの休憩時間を過ごす人など、まさに市民のオアシスです。私自身が初めて大阪を訪れた際に一度立ち寄り、とても気に入っている場所の一つでもあります。

新緑の季節、爽やかな風が抜けていくケヤキ並木

新緑の季節、爽やかな風が抜けていくケヤキ並木

「東園」には、国際バラ会議優秀庭園賞を受賞しているバラ園があり、園内は水辺環境とともにバラが栽培され、色とりどりに咲いていました。子どもたちの目線でも鑑賞できる低木も多く、柵もありません。階段もないバリアフリー化された園内は視界を遮るものがないことから、地域の人々に愛されていることが一目でわかります。撮影していて聞こえてくるせせらぎの音も心地よく、爽やかな庭園です。

背の高い木立と、青空が抜ける気持ちのいい空間にバラ園があります

水辺では子どもたちも楽しそうに過ごしています

回遊しながら散策を楽しめる庭園です

撮影ポイント:広々とした靭公園のバラ園では、風景のように全景撮影や、スナップ撮影をするのがおすすめです。また、人物が写り込む場合には、カメラ背面モニターのタッチパネルでAF(ピント)を手前に位置させ、背景をぼかすテクニックを使い、顔を明確に写さないように工夫しましょう。

小高い丘からバラ園全景を眺めることができます

手前のバラにピントを合わせることで背景がボケるので、顔を写さずに撮影できます

靭公園の北側に位置する「京町堀」には、おしゃれなカフェや雑貨店も多いので一度訪れてみてはいかがでしょうか。

◆靭公園 バラ園
住所:大阪府大阪市西区靭本町2-1-4
開園時間:常時開園

おわりに

大阪は、「くいだおれ」のイメージと、「街の活気と勢いのよさ」という印象が強いですが、観光地ではない場所にしっかりと歴史が刻まれ、街の発展と市民の生活を垣間見ることができます。バラ園をめぐり、香りに包まれ、歴史とふれあう優雅なひとときを大阪散策の際に取り入れてみてくださいね。

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#写真 #カメラ #撮影テク #RICOHGR #大阪府 #GRIIIx #公園散歩 #旅写真 #大阪観光 #バラ園

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写真家 こばやしかをる

写真家

こばやしかをる

1996年フォトスクールで写真の基礎を習得後、デジタルデータ制作を写真関連企業の現場で習得。主にプリントの現場から写真を学ぶ。現在はフォトアドバイザー、展示・イベント企画、執筆、プロデュースなど、写真に関する幅広い活躍の場を持つ。「GR3 PERFECT BOOK」(インプレス)そのほか、「写ルンです」のワークショップ・テキスト、スマホ写真センスアップ術などもの監修を手掛けている。

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