「“ひつじの町”が愛した、幻の羊肉」にまつわるストーリー
長野県信州新町。冬には、雪がしんしんと積もるこの地域、実は北海道よりも歴史が古いとも言われるジンギスカンの聖地であり、昭和5年から羊を育て続ける“ひつじの町”です。今もヒツジを愛し続けるこの町でしか味わえない、幻と言われる羊”サフォーク”の羊肉のブランドがあると聞き、噂の「信州不動温泉 さぎり荘」へ向かいました。
目次
ジンギスカンの聖地は、めん羊で栄えた羊愛から始まった
今回ご紹介するお宿「信州不動温泉 さぎり荘」がある信州新町は、昭和5年からめん羊の飼育を開始。当時は、コリデール種とメリノー種と言われる、羊毛の生産を目的としたヒツジの種で、一般的な白いヒツジを飼育していたそうです。
信州新町の乾燥した気候もぴったりだったヒツジは、盛んだった養蚕の廃棄物と豆殻などを食べてすくすくと育ち、昭和20年には約4000頭ものヒツジがこの地域で飼育されるようになったそうです。
さらに、刈り取った毛だけでなく、お肉もおいしいということで、昭和11年の料理講習会でジンギスカン料理が定着。その後、信州新町への来客をもてなしたのが評判になり、広がっていったといわれています。
化学繊維の普及が進むと、めん羊飼育は激減。信州新町でもほとんど飼育されなくなっていきます。ヒツジを愛するこの地の人々が、なんとかヒツジを残し、ジンギスカンを残そうと育て始めたのが、今回ご紹介する“サフォーク”と言われるヒツジの品種です。
黒い顔に、白いモコモコの毛がとってもキュートなサフォーク種は、イギリスのイースト・オブ・イングランド地方に位置するサフォークという地域から名付けられた、羊唯一の肉専用種です。臭みやクセが少なく、脂の甘味が味わえる最高級品と言われています。
国産の羊肉は、わずか1%! 希少なサフォークをおいしくいただくためのこだわりとは
お話を聞いたのは、信州不動温泉 さぎり荘の小山さん。この地域で羊肉を愛するひとりです。
国産の羊肉は非常に貴重で、流通しているのは全体の1%未満。ほとんどが海外からの輸入に頼っています。信州不動温泉 さぎり荘では、信州新町で育った「信州プレミアムサフォーク」の他に、厳選したオーストラリア産も提供。
どうしても感じてしまうクセの強さを抑えるために、下処理はしっかり行っているそうです。例えば、ショルダーと言われる肩の部分、足の部分のレッグは、臭みの原因を極限まで落とすため、半分ほどは削ってしまうんだとか。
一方で信州新町産のサフォーク種は、与えられるエサやこだわりの肥育方法によってクセや臭みが少ないのですが、羊肉本来の味わいや香りを楽しんでほしいという想いから、あえて“ラム”は使わないそうです。
「羊肉は、ヒツジの年齢によって名称が変わります。食べやすくクセが少ないのは、生後1年未満のラム。2年以上になると味や香りは濃厚ですが、ちょっとクセが強いマトンになります。さぎり荘で扱っているサフォークは、あえてその間ぐらい。ホゲットと言われるものをお出ししています。食べやすいラムと味の濃いマトンの間だから味わえる、羊肉のうま味を楽しんでほしいんです」と小山さんは言います。
受け継がれたタレと、さっぱりとした塩で味わう
「約50年ほどの歴史があるさぎり荘では、タレも受け継がれていて、信州産のりんごをはじめ、しょうが、たまねぎなど約14種類を特別配合したものです。羊肉に合わせて作っているんですよ」とのこと。
受け継がれてきたタレは、優しい甘みが特徴的で、お肉にもぴったり。塩分濃度が2%ほどに抑えていて、塩分が気になる方にもおすすめです。
柔らかなショルダーをタレでいただいていると、「下処理をしっかりしているので、塩やレモンでさっぱりと食べられるんですよ! チャックロールやラムチョップは、こっちでぜひ試してみてください」と小山さん。
レモンでいただくと、噛めば噛むほどお肉本来のうま味がじわりと広がります。牛肉とも豚肉とも違うお肉の弾力と風味に、編集部はもう虜! ご自宅にあるレモン汁や岩塩で、脂の甘味をダイレクトに感じてみてください。
羊愛で街へ貢献していく
信州新町でも、地元のサフォーク種を食べられるのは、信州不動温泉 さぎり荘しかないそうです。
「信州プレミアムサフォークを目当てに泊まりに来てくださる方もいます。こんなタイミングだからこそ、みなさんに羊肉を楽しんで欲しいなって思っていて。そして、生産者さんや街へ貢献出来たらと思って通販を始めたんですよ」と小山さんは言います。
希少な部位をスライサーなどは使わず、部位の形に合わせて職人が包丁で丁寧に削いで生み出すこのクオリティ。地域の人々への想い、泊りに来てくれる方への想いが形になったからこそできるものでした。