【今月の旅写真】門司港レトロ散策&東京九州フェリーで「0泊」の船旅体験
「フェリーに乗って船旅を体験したい!」そんな願いを叶えるべく、福岡県北九州市の門司港(もじこう)を訪れました。帰路は東京九州フェリーに乗船し、約21時間の船旅です。門司港レトロの見どころと、乗船しないとわからないフェリーで過ごす1日。二つの旅を一度に楽しむ「0泊旅」の魅力をお伝えします。
Text&Photo:こばやしかをる
撮影機材: Panasonic LUMIX G100
目次
門司港ってどんなところ?
本州と九州の間、福岡県北部に位置する関門海峡に面した港町・門司港は、明治初期に開港して約130年の歴史ある港です。明治時代後半から国際貿易港として栄え、当時は日本三大港(神戸、横浜、門司)の一つとして貿易の重要な拠点となっていました。貿易船や客船でにぎわっていた面影を残す、趣のある建物が数多く残っています。
門司港は行政と民間の協力によって、1995年に門司港レトロとして生まれ変わり、今では年間200万人以上が訪れる九州の人気観光地となっています。山陽新幹線・小倉駅 よりJR鹿児島本線に乗り換え約15分と、アクセスのよさも抜群。街中を半日歩くだけで見どころを網羅できる気軽さも魅力の一つです。門司港駅自体も歴史的な建物で、国の重要文化財に指定されています。
駅自体が撮影スポットの「門司港駅」
門司港駅は、2012年から老朽化による耐震補強・保存修理・改修工事を行い、約6年もの歳月を経て、大正3(1914)年創建時の姿に復元され、2019年3月にグランドオープンしました。
駅に降り立つと、一直線に抜けたホームに「もじこう」の駅名表示。柱や屋根の内側は木製で、屋根を支える梁には線路のレール材が使われています。駅員さんの制服も当時のデザインに再現され、戦時中の貴金属提供をまぬがれた「幸運の手水鉢」、大正時代のトイレなど、駅舎自体に興味深い見どころがたくさんあります。
改札口を出た構内には「スターバックス コーヒー 門司港駅店」があります。こちらは旧三等待合室の雰囲気を取り入れた珍しい造りの店内です。
天井や壁面には鉄道レールが使用され、列車のヘッドマークデザインを用いた歴代のスターバックスコーヒーのロゴマークが飾られるなど、門司港駅ならではの旅情感ある店づくり。大正レトロな店内でコーヒーを味わえば、ロマンチックなひと時を過ごすことができます。
◆スターバックス門司港駅店
住所:福岡県北九州市門司区西海岸1-5-31
営業時間:8:00~21:00
鉄道好きなら訪れたい「九州鉄道記念館」
門司港駅改札を出て右へ向かうとバスロータリーがあり、ロータリーを回るように道なりに進むと、「九州鉄道記念館」があります。明治24(1891)年に旧九州鉄道本社の赤レンガビルを修復して造られた「九州鉄道記念館」はレンガ造りの本館、実物の車両展示場、子ども向けのミニ鉄道公園、前頭部車両で構成されています。
中央ゲートを入ると、九州で活躍した歴代の9車両が並ぶ車両展示場が出現。実物の車両の大きさや迫力、造形美に圧倒されます。さらに、場内BGMで流れている当時の汽笛の音や、構内アナウンスが妙にリアルに感じられ、列車に乗りたくなること必至です。
また、展示されている世界初の寝台特急「月光」に乗車することができました。シートのクッション、寝台ベッドになる構造、吊革や網棚といった昭和のデザインに懐かしさを覚えます。
本館では、リアル版運転シミュレーターや、現在JR九州で運行している代表的な車両模型を操作することもできるジオラマが子どもたちに人気。ミニ鉄道公園もあるので、家族で訪れても楽しい施設です。
◆九州鉄道記念館
住所:福岡県北九州市門司区清滝2-3-29
営業時間:9:00〜17:00 ※入館は16:30まで
定休日:第2水曜日(但し、8月は除く) ※祝日の場合翌日休み ※7月は第2水曜日・木曜日
カメラ片手に門司港レトロを散策
どこを歩いても美しい街並みの門司港レトロには、歴史的背景を持つ建物が立ち並び、写真映えスポットもたくさん。半日あれば網羅できる距離感が散策するのにちょうどいいので、カメラ片手に出かけてみましょう。
高層マンションがランドマーク 「門司港レトロ展望室」
門司港を俯瞰して見ることができる「門司港レトロ展望室」にも立ち寄りました。日本を代表する建築家・黒川紀章氏が設計した高層マンション「ハイマート」の最上部が展望室になっています。
ガラス張りの展望室からは、門司港レトロはもちろん、関門橋や対岸の山口県下関市、遠く日本海まで見渡せます。訪れたタイミングでは、夕陽が水面を照らし、美しい輝きを見せていました。
撮影ポイント:今回使用したカメラLUMIX G100には「フィルター設定」という、カメラ内で加工できる機能が搭載されています。ミニチュア(ジオラマ)撮影は、特定の一部分にだけピントを合わせ、それ以外を大きくぼかす効果があり、実際の景色が擬似的にミニチュアのように見える撮影方法です。高いところから見下ろして撮影できる場所が適しています。
夜になれば、ライトアップしたロマンチックな景色に変わり、11月下旬からはイルミネーションで門司港の街並みがロマンチックに輝きます。22時まで営業しているので、時間帯や季節を変えて訪れてみたい場所です。
◆門司港レトロ展望室
住所:北九州市門司区東港町1-32
営業時間:10:00〜22:00(最終入館 21:30)
新門司港から「東京九州フェリー」で船旅のスタート
日没時間を過ぎた19:30。美しい景観の門司港に別れを告げて小倉駅まで戻ります。
撮影ポイント:日没時間から約20分間は空の様子が大きく変化していきます。この時間帯を狙って滞在しましょう。カメラの色設定は「Vivid」や「風景」など彩度の高い色に設定して、空の色を引き出します。
ここからは、今回の旅のお目当てである「東京九州フェリー」での船旅の始まり。出港時間が23:55と深夜のため、小倉に戻ったタイミングで夕食をとります。22:10、 小倉駅新幹線北口にある「東京九州フェリー行きバス乗り場」から乗車し、新門司港へ。乗車時間50分ほどでフェリーターミナルに到着し、乗船予約の確認を済ませたら、いよいよ21時間の船旅のスタートです。
フェリーってどんな船?
フェリーは、自動車や貨物、旅客を同時に運ぶ大型船です。乗用車と共に移動することができるので、旅先では慣れた車で移動することも可能です。「東京九州フェリー」は、神奈川県横須賀港と福岡県新門司港を約21時間で結びます。今回乗船した船体は、2022年11月〜2023年5月まで期間限定で就航している新日本海フェリー「すいせん」。本来は北海道苫小牧と福井県敦賀市を結ぶ航路を航行していますが、東京九州フェリーの船体がドック入りということで新門司港〜横須賀港を運航していました。
乗船したらまずは展望大浴場へ
すでに深夜時間ということもあり、乗船したら出港時間を迎える前に早々と大浴場で入浴です。快適な湯温のジェットバスと、外気を感じることができる露天風呂があり、その環境だけでも旅気分が高まります。暗闇の中、船が静かに出港したのも分からず、ゆっくりと湯に浸かっていました。
充実の船内サービス施設・設備
東京九州フェリーは“動くホテル”そのもの。何も不自由を感じないくらい、十分すぎるほどの環境が整っています。手ぶらで乗船しても困らないよう、アメニティグッズもそろっていますよ。
このほか、船内では専用Wifiがつながりますが、本州から離れた洋上では安定した環境になりにくいことも。旅を楽しむ上でも、約21時間の船旅はデジタルデトックスをする時間として非常に有効です。読書や映画などを楽しんで日常から解放されて過ごしましょう。
客室は「ツーリストA室」でも快適!
一番リーズナブルな「ツーリストA」ルームを利用しました。2段ベッドの大部屋ですが、上下段が互い違いになっているので同じ入口を利用することがなく、カーテンやロールブラインドで仕切ることもできるのでプライベートな空間が保たれています。小物入れや、室内照明、コンセントが1口ついており、寝具もそろっています。客室をランクアップしなくてもかなり快適でした。
館内では24:30に就寝時間を迎え、起床時間も自由で、朝9:00頃まで皆さんしっかりとお休みされている様子でした。
お楽しみは船上で味わう「特別グリルメニュー」
遅めに起きて、まったりと午前中を過ごしているとあっという間にランチタイム。初めての乗船ということもあり、「横須賀行ランチ(3,500円)」を予約しました。旅の楽しみは「食」という方も多いはず。その場でしか味わえない限定感も旅の魅力です。思い切って予約することをおすすめします。
重箱に彩られたメニューは、一品ずつ食べ応えがありながらもちょうどいい量。また、すべて料理長が船内で一つずつ調理をしているこだわりのメニューなのだとか。「グリルメニューは、季節ごとにメニューが入れ替わり、期間限定就航船『すずらん/すいせん』でしか食べることができないんですよ」と伺い、なんともラッキーなタイミングでした。
何よりも、大海原を眺めながらゆったりとした空間で味わうお料理は格別です。
乗船した日は波も穏やかで、じっくりと時間をかけていただくことができました。予約なしでも利用できる、カフェやレストランの飲食スペースもゆったりとしていて開放的です。営業時間以外はフリースペースとして使用できるので、好きな場所で食事や作業をしながら過ごすこともできます。
20:45 横須賀港帰着
快適な空間で誰にも邪魔されないお昼寝に読書、海を眺めながら入浴したり、原稿の下書きをしたりと、自由な時間を過ごしていると、あっという間に時間が過ぎていきます。伊豆大島が右手に見えて来たら間もなく東京湾。身支度を整えたら横須賀港に到着です。
◆東京九州フェリー
運航区間:横須賀港~新門司港
運航日:月~土(日曜・祝日運休)
乗船料:ツーリストA/12,000円~ 客室・運行期間により異なります
予約方法:フェリーターミナルまたは予約センター、WEBサイトにて。乗船の2ヶ月前の同日 午前9時より受付
おわりに
往路と復路の交通機関を変えてみるだけで、「0泊旅」を体験することができました。21時間ってとても長いのでは!? と思っていたのですが、船上で休日を過ごす感覚でいると時間が足りないほどです。波も穏やかで常に眠気に誘われてお昼寝もしばしば。プライベートな空間も保たれているので、船旅もワーケーションとして一つの選択肢になりそうです。皆さんも単なる移動手段だけではない、船旅を満喫してみませんか。