【川瀬良子の農業旅】鹿児島で魅了されたいちご・レタス・カンパチをつくる生産者のみなさんとの出会い
こんにちは! 農業旅アンバサダーの川瀬良子です。前回に引き続き、鹿児島農業旅をお届けします。今回は、いちき串木野市“唯一”のいちご農園や畑を移しながらつくるレタス農家、さらに近隣の垂水市(たるみずし)のカンパチ漁協の方たちに話を伺いました。
目次
お客さまを大事にするいちき串木野市唯一のいちご農園
鹿児島県いちき串木野市(くしきのし)唯一のいちご農園「いちごハウス木場」へやってきました。
いちご色の帽子と服を着た農家の木場俊介さんが出迎えてくれました。さっそくハウスに入ると、真っ赤ないちごがたくさんなっています。そして、いちごの甘酸っぱいいい香り!
育てている品種は、酸味がなく甘みが強い“さがほのか”と赤の色が強く、ジャスミン系の花の様な香りが強い“紅ほっぺ”。どちらもシーズンを通して楽しめます。完熟の状態で食べ比べができるのは、観光農園ならではの楽しみです。お客さんもSNSを見て品種に詳しくなっているので、「○○はないんですか? 」と聞かれることも多く、来シーズもう一つ品種を増やす予定だそう。いちごは品種によって栽培法はぜんぜん違います。それでも「お客さんに喜んでいただきたいので、それぞれの栽培法をしっかり勉強して育てています」と、笑顔で話す木場さん。日々お客さんと接し、意見を大事にする観光農園だからこその対応です。
お父さまの代の頃は、地域一帯でキュウリ栽培をしていました。約40年前オイルショックで、暖房に使う重油の値段が高騰。そんな中、寒さに強い作物を作ろう、といちご栽培に転換したそうです。数年後、お父様が体調を崩し、人手が減りいちごの収穫が間に合わないことがありました。友人に「好きなだけ採っていいよ」と伝えたところ、知り合いから知り合いに話が広まり「ここはいちご売ってくれるんですか? 」とお客さんがたくさん来るように。「あれ? これは卸さなくても、いちご狩りとして商売になるんじゃないか」と方向転換し、鹿児島県のいちご狩り発祥の地となりました。
いちき串木野市唯一のいちご農家さんってすごいですね! と木場さんに声をかけると「ライバルがいないさみしさはありますよ」。なんと素晴らしいお人柄なのでしょうか! 私だったら、いちごの時期はお客さん独占だ~、なんて思ってしまうのに(笑)。
やっていてよかったことは、の問いには「お客様から味の評価を直接もらえることです。“おいしい”と言う言葉だけで十分ですね。みなさんに、来てよかったって思ってもらいたいです。また、農園の前に大きな国道があるので、いちき串木野市をただ通り過ぎるのではなくて、うちでなくても、どこかに寄って行ってほしいですね」ともお話ししていました。独占するのではなく、地域全体が盛り上がってほしい、という思いに胸を打たれました。
最新の情報は公式Instagram(@shunaberry1583)で見ることができます。人を楽しませたい木場さんらしい凝った動画がアップされています。ぜひ動画も見て笑顔になっていただきたいです。またいちごハウスのオープンは、毎年12月のいちごの日(15日)から5月上旬まで。気になった方はInstagramのDMで問い合わせてみてください。またハウス内にいくつか笑いの仕掛けがあるので、楽しんでみて下さいね
◆いちごハウス木場
住所:鹿児島県いちき串木野市大里648
電話:0996-36-5115
営業時間:12月~5月初旬 9:00~17:00
畑を移していく!? 農地を230か所もつレタス農家
いちごハウス木場から車で約2分。田んぼに挟まれた広~いレタス畑に到着しました。
私が車から降りると挨拶も早々に、すぐに畑になっているレタスをザクっと包丁で収穫し、バキっと手で半分に割って「ぜひこのまま食べてみて下さい」と渡してくれた農家の松田健さん。なんという豪快さ! レタスをハンバーガーのように食べてみると、瑞々しくて1枚1枚がシャッキシャキ、なのに驚くほどふわっと柔らかい。新鮮なあおい香りもします。早速、採って10秒も経っていないレタスのおいしさを知ることがでました。
松田さんは、東京都八王子市の出身で住宅が密集している風景が当たり前の中で育ちました。中学生の頃、自然豊かな地域に旅行へ行った際、ずーっと広がっている畑や田んぼの景色が珍しく、こんな所に住めたらな、と思ったそうです。その頃から農家を志し、18歳で山梨の農業法人に入り、約3年間トマト・ナス・キュウリなどさまざまな野菜作りを学びました。なかでも、レタス栽培に魅了されレタス農家になることを決意。「レタスは次々に畑が移っていくのがおもしろかったんですよ」ん~!? 畑が移る? 長年農家さんを取材させていただいている私でも、初めて聞く表現でした。
そもそもレタスは、比較的病気に弱く難しいといわれています。松田さんの栽培法は、同じ畑で繰り返し栽培はせず、いろんな場所で、時期をずらして植え付けていくそうです。「畑によって傾斜があったり、土の質が違ったり、クセが違う。そのクセに合わせて肥料を変えたり、植え付け時期を考えたり。それが楽しくて」。と話していました。
その後、レタスの大産地・長野県へ移住。ところが移住先での仕事は「作物を作れる人を育てる」ことだったそうです。どんどん農家として後輩を育て、送り出していくなかで「やっぱり、俺も農家になりたい」と思い転職を決意。仲間のほとんどが長野に住むなか、同じエリアでレタスを作っても売りにくい、と考え、農地を探していたときに、いちき串木野市のカット野菜を扱う会社の人と出会います。そこからご縁が重なり、運命を感じて2013年に移住。畑を移しながらレタスを栽培し続け、現在松田さんの畑は230か所もあるそうです!
「いつも畑の場所が違うので、お客さんに説明できなくて直売はやめちゃったんですよ~」。現在は、南九州の大手コンビニで販売しているお惣菜に使用されているそうです。コンビニやスーパーで買えるお総菜はすでに加工されていて、生産者さんを思い浮かべる機会は少ないかもしれません。しかし、松田さんのように心をこめて育てている生産者が必ずいます。ちょっと思い浮かべながら商品を手に取ってみてくださいね。また南九州に行ったときには、コンビニのレタスが使われている商品に注目してみたいと思います。楽しみ~。
垂水市の極上のカンパチ「海の桜勘(おうかん)」
移住した松田さんに、鹿児島の魅力を聞くと「魚もおいしいですよ~! 」とのこと。最後は垂水市(たるみずし)のカンパチをご紹介します。垂水市漁業協同組合の加工部部長・秋峯さん(写真左)と加工部工場長・篠原さん(写真右)。
垂水市は、鹿児島県の中部、大隅半島の北西部に位置します。鹿児島県はブリやカンパチの養殖が盛んで、なかでも垂水市漁業協同組合は単一漁協として、養殖カンパチの生産量が日本一。ブランドカンパチ「海の桜勘(おうかん)」の名前は、一般公募により決定しました。桜は「桜島」と、カンパチの身の色が「桜色(薄いピンク色)」であること、勘は「勘八(かんぱち)」からきています。特産の鹿児島茶や焼酎かすをエサに配合するなどの工夫を施し、身質の透明感が増して、ほどよく脂がのって魚臭みが少ないのが特徴です。
錦江湾(きんこうわん)が目の前に広がる「味処 海の桜勘」で定食「西郷どん」をいただくことに。カンパチの身は本当にうっすら桜色で、キラっと透き通っています。それにしても1切れの厚みがすごい! 東京ではなかなか見られないボリューム感です。食べてみると、歯ごたえがしっかりあるのにとろける食感。脂がほど良くなめらかに溶けていきます。おいし~!と、海に叫びたくなりました。つけるタレが、醤油、塩、カルパッチョ風などいろいろあるので、味変をしながら楽しめます。その場にいる全員が夢中で食べていたため、定食の写真を撮り忘れてしまい、この写真はお店の方にお借りしました(笑)。
◆味処 海の桜勘
住所:垂水市海潟643-14 2F
電話:0994-32-0321
営業時間:11:00~14:00
定休日:火曜日、年末年始
垂水市で育ったカンパチは主にフェリーで東京・豊洲市場に運ばれ、そこからさらに東北などへ出荷されます。何気なく食べている魚が、どこから来ているのかと言うことを、あまり気にしたこともがなかったのですが、お話を聞くと、魚も、肉・野菜・米・水なども、いろんなところから運ばれてきている、と再認識しますね。鹿児島のカンパチが当たり前に東京で買えて食べられることに感謝です。
おわりに
サワーポメロをきっかけに旅した鹿児島県には、山、畑、海のもの、魅力がいっぱいでした。お会いしたすべての方が「まだまだ紹介したいものがあるのでまた来てください」と言ってくださり、地元愛が深いみなさんこそが魅力だな~と感じました。またすぐにでも行きたい! と企んでいるところです。お世話になったみなさん、ありがとうございました!