帝国ホテルの朝食について考えてみる/ホテル評論家・瀧澤信秋 連載vol.5
近年、進化著しいホテル朝食にフォーカスし、全国のビジネスホテルやシティーホテルの朝食を紹介してきた本連載。最終回は日本を代表するホテルといっても過言ではない「帝国ホテル 東京」の朝食を取り上げたいと思います。
写真/瀧澤信秋
目次
はじめに:サービスアパートメントを利用して感じたこと
連載スタート当初は予定のなかったテーマでしたが、今回、帝国ホテル 東京の朝食に着目したのは個人的な事情によるものです。
というのも、コロナ禍のホテルトピックとして大きな話題を呼んだ「帝国ホテル 東京のサービスアパートメント」、いわゆるホテル暮らしを体験したことでした。サービスアパートメントは帝国ホテル 東京のタワー館となりますが、多彩な客室が用意されており、なかでも、最上階31Fペントハウスフロアの2ベッドルームスイートは天井高3m超えで開放感抜群、贅沢この上ない空間となっています。
サービスアパートメントの朝食として、ルームサービスではサブスク方式も採用されており、一人5泊31,500円/30泊63,000円でオーダーし放題(1度の注文で1品目1つまで)となっています。メニューはカレー/サラダ/スープ/サンドイッチ(パン類)/パスタ類/デザートなど一定のカテゴリーにしてバリエーション豊富。
オーダー可能な時間帯は11時~22時までと遅めの朝食(ブランチ)に遅めのランチ、夕食で利用すれば食事は、(理屈としては)全て賄えることになります。客室の小型タブレットでオーダーできるのも気楽でイイ。帝国ホテルでタブレットオーダーなんて時代の進化を感じますが、こうした取り組みなどを見ると、決して伝統と格式に甘んじない先取性を感じます。
客室に届けられるルームサービスワゴンの雰囲気はさすがの“帝国クオリティー”です。生花を欠かさないのも流石としか言い様がありません。サービスアパートメントの食事として別途料金の発生するサブスクについて解説しましたが、朝食という点では、サービスアパートメント誕生に伴い各フロアにコミュニティルームが新設、7時~10時の間にはパンが提供されます。
そのほか、コーヒーベンダー、電子レンジ、トースター、アイスベンダー、洗濯機、アイロンなど長期滞在に助かる設備も揃っています。とはいえ折角の帝国暮らし、普段なかなか体験できない朝食もしっかりと体験してきました。3つの朝食を紹介したいと思います。
朝食1:日本料理 東京なだ万
まずは、本館地下1階の「日本料理 東京なだ万」へ。なだ万といえば190年という歴史と伝統に培われた格調高い日本料理で知られます。まさに帝国ホテル 東京にふさわしい和食の名店といえますが、店内は数奇屋風で雰囲気も抜群、実際に出向くとその質感の高さを改めて感じることでしょう。四季を感じつつ旬の素材が味わえる懐石料理はまさにイメージのなだ万ですが、そんな本格的な和のエッセンスは朝食にも体現されています。
本格的な和定食であることは当然として、何よりまず感動するのがふっくらと炊き上げられているご飯。これを見て味わっただけで朝食クオリティーがわかるような気がします。お味噌汁、料理一つひとつも味付けが秀逸。和食でありがちな甘ったるさはなく、繊細なダシを感じるのはさすがとしか言いようがありません。
料金/4,400円
営業時間/7:00~10:00(ラストオーダー)
朝食2:オールデイダイニング パークサイドダイナー
こちらは本館1階にあるオールデイダイニングで早朝から深夜まで利用可能。みゆき通りに面しており、朝は窓から光が差し込む明るく開放的な空間を感じられる時間です。店内はカウンター席、広々としたベンチシート、窓側のラウンドシートなど多彩。利用形態に応じてフレキシブルに座席もセレクトできそうです。パンケーキ、アメリカンクラブハウスサンドイッチ、シーザーサラダや野菜カレーといった帝国ホテル伝統の人気メニューをはじめ、ボリュームのあるハンバーガーやグリル料理など楽しめるダイナーですが、朝食も充実。
ジュース(オレンジ、グレープフルーツなど5種類から)のおいしさで体が目覚め、卵料理(オムレツ、目玉焼き、スクランブル、ポーチ、ボイルの5種類から)にもホテルらしさを味わいつつ、付け合わせ(ベーコン、ハム、ソーセージ)も含めてパンと共に楽しめます。まさに“帝国クオリティー”なスタンダードアメリカンブレックファスト。コーヒーまたは紅茶付き、卵料理はパンケーキにも変更できます。
料金/4,400円~
営業時間/7:00~11:00(ラストオーダー)
朝食3:ルームサービス
せっかくの長期“帝国暮らし”ということで各種朝食を試してきましたが、やはり外せないルームサービス朝食も紹介します。和と洋を1セットずつなどオーダーできるのはルームサービスの醍醐味といえますが、届いてみるとなだ万とパークサイドダイナーの合わせ技であることが判明。部屋でゆったりとなだ万、そしてパークサイドダイナーの朝食が堪能できるなんて贅沢この上ない時間です。ルームサービスワゴンには帝国ホテルのアイデンティティーとも言えそうな生花が。
●アメリカンブレックファスト
各項目より一つずつ選べる
・オレンジジュース/グレープフルーツジュース/アップルジュース/トマトジュース/ベジタブルジュース
・目玉焼き/スクランブル/プレーンオムレツ/ゆで卵/ポーチ
・ハム/ソーセージ/ベーコン
・ブレックファストロール/トースト
・コーヒー/紅茶
料金/4,620円~
提供時間/6:00~11:30
●和朝食
・ご飯またはお粥
・小鉢盛/焼魚/煮物/焼海苔
・味噌汁
料金/4,620円
提供時間/7:15~10:00
上記のようなセットメニューのほかにも、トーストや卵料理、スープなど、多彩なアラカルトメニューも用意されているので、自分流アレンジで好みの組み合わせができるのも嬉しいところ。いずれにしても、部屋で時間を気にせずゆっくりと朝食を楽しめるのは何よりです。
番外編 クリーニングもサブスク!?
帝国ホテルサービスアパートメントのサブスクとして、ルームサービスに加えクリーニングもあります。ライトプラン(30泊34,500円)でも個人的に日常着衣する上半身範囲はほぼカバーできました。
おわりに
帝国ホテル 東京のサービスアパートメントの朝食をはじめとした朝食ラインナップはいかがだったでしょうか? 今回はサブスクリプションのルームサービスと朝食のラインナップを紹介しましたが、もちろん多彩なレストランを擁するホテルだけに魅力的なグルメが揃っています。出向けば伝統と格式を実感できることでしょう。
なお、記載の料金は消費税込、サービス料別、紹介したメニューが変更になる場合などありますので、実際の利用に際しては公式サイトなどでチェックいだたければと思います。