コスパ最高! 朝食ブッフェがすごいリゾートホテル3選 /ホテル評論家・瀧澤信秋さん連載vol.1
ホテル朝食が注目されていることは多くのメディアの情報拡散でも知られていますが、日々進化しているカテゴリーだけに目が離せないホテルグルメといえます。
ホテル朝食が進化してきた理由としては、進化コロナ禍前のインバウンド活況でホテル数は激増、ほかのホテルと比較して特色を出すという意味合いにおいても、朝食の内容で差別化を図るホテルは増えてきた点が挙げられます。さらにコロナ禍を経て新規開業したホテルなども、注目すべき朝食を提供するケースが増えています。「シティ」「ビジネス」などそれぞれのホテルスタイルによっても特徴が見られますが、今回は“お得感”という点からブッフェスタイルに着目し、地域性を感じる、非日常感の高い“リゾートホテル朝食”を紹介します。
目次
【沖縄県】 約170種の料理・素材が並ぶ「ヒューイットリゾート那覇」
2021年3月に開業した「ヒューイットリゾート那覇」は、客室はもとよりレストラン、プールといったパブリックエリアにも、一貫してリゾートの品と躍動感を併せ持たせているホテルです。
個人的な話で恐縮ですが、とにかく立地が素晴らしい。安里十字路交差点に面しており、ゆいレールを挟んだ向かいは(徒歩30秒で)栄町市場。ディープな沖縄グルメ時間も存分に楽しめます。そんなヒューイットリゾート那覇の朝食ブッフェ会場も、天井が高く開放的に空間で印象的です。
そんなスペースでいだたく朝食は、約170種の料理・素材が並ぶ圧巻の内容。目の前で仕上げる温かいグリル料理をはじめ、特に豪勢に並んだ具材を自由に組み合わせて作る「ハンバーガーステーション」はビジュアルも含め驚愕です。
さらにハンバーガーステーションに隣接して、サラダとデザート、沖縄料理や定番のメニューが並びます。沖縄料理としては、ミミガー、もずく、ジーマミ―豆腐、沖縄おでん、ラフテー、タコライス、沖縄そば、テビチ汁、ポーク、あぐー豚のメンチカツ……数えきれません。朝から沖縄の食文化を深く体感できる時間になりそうです。赤いランプと花レンガをモチーフにした装飾も素敵な会場で、まさに沖縄の文化とグルメをミックスしたリゾートホテル朝食が満喫できます。
◆ヒューイットリゾート那覇(沖縄)
住所/沖縄県那覇市安里2丁目5-16
電話/098-943-8325
【長野県】 地産の野菜を薪でグリル「ホテルインディゴ軽井沢」
2022年2月に開業したホテルインディゴ軽井沢は、木の温もりを感じる空間と軽井沢の別荘時間を楽しめる外資系ホテルです。「ホテルインディゴ (HOTEL INDIGO) 」は、IHGホテルズ&リゾーツのライフスタイル・ブティックホテルブランドで、ホテルインディゴ軽井沢は国内2軒目となります。
軽井沢駅から約2.5kmのエリアに位置し、 モダンな魅力とローカルデザインを備えています。ロビーフロアには暖炉が備えられ、フォレストガーデンにあるファイヤーピットの炎のゆらめきと共に、薪のはぜる音もリゾート時間を演出します。
朝食会場はオールデイダイニングの薪火イタリアン「KAGARIBI」で提供されます。地元の素材を取り入れた料理をストレートに味わう印象のダイニングであり、その真骨頂はオープンキッチンにも表れています。ブッフェボードには地産の軽井沢野菜が数多く並び、見るからに新鮮な野菜は、実際に味わうとそのおいしさに感動することでしょう。
さらにこの野菜を丸ごと薪でグリルするのは、“五感で味わうホテルグルメ”というレストランコンセプトを体現しています。地元の素材を取り入れた料理の提供を基本に、食材の持つ力をストレートに表現する本気のグリル料理。シェフの熱き魂も感動的。さすが外資系ホテルといった朝食の価格設定ですが、“コスパ”というよりも“バリュー”という点においてお得感の高い内容です。朝食付き宿泊プランでの利用もおすすめです。
◆ホテルインディゴ軽井沢(長野)
住所/長野県北佐久郡軽井沢町長倉 屋敷添18−39
電話/0267-42-1100
【北海道】海鮮朝食もついにここまできた!「函館湯の川温泉 海と灯 /ヒューイットリゾート」
こうした記事においては、それぞれ異なるブランド・運営会社の例を紹介するのを常としますが、3軒目はイレギュラーに“朝食もホテルブランドによりけり”という例を紹介したいと思います。
1軒目で紹介したヒューイットリゾート那覇と同一の運営会社とはいうものの、こちらは北海道の温泉エリアで、旅館をコンセプトにした施設「函館湯の川温泉 海と灯 /ヒューイットリゾート」です。ヒューイットリゾートとしては那覇に続く開業。函館空港至近の湯の川温泉は、古い施設が多い印象の温泉街ですが、海と灯は湯の川温泉で16年ぶりの完全新築施設となりました。
周囲からもひときわ輝いて見えます。もちろん海眺望や温泉が魅力で、最上階の「大浴場天海」からも津軽海峡が一望できます。ホテル名「海と灯」のとおり、夜になれば津軽海峡に浮かぶ月と漁火の灯が函館旅に浸らせてくれることでしょう。
北海道といえば競争激化が続く海鮮朝食ブッフェが知られていますが、函館湯の川温泉 海と灯 /ヒューイットリゾートでは夕食にブッフェも提供。ディナーとはいえ海鮮ブッフェとしてもまず見られないウニやボタンエビまで並ぶのは驚愕です。もちろんカニやイカといった定番メニューに加え、ツブ貝やカンパチなど海鮮だけでも数え切れないほど。
ここまで来ると朝食もしかり。さすがにディナーで見たウニやボタンエビはありませんが、北海道朝食ブッフェ定番のいくらをはじめ、蟹汁もうれしいメニュー。海鮮とはいえホテルでクオリティーの差が出るマグロもなかなかのものです。既存の競合ホテルのこともよく研究されていると感じます。朝食にフィーチャーするブランド、という観点からホテル朝食を捉えることは、新しいホテル旅の見方・体験のチャンスかもしれせん。
◆函館湯の川温泉 海と灯 /ヒューイットリゾート
住所/北海道函館市湯川町3丁目9−20
電話/0138-57-5390
おわりに
ホテルに大打撃を与え続けたコロナ禍。ホテルが休業に追い込まれた際には、朝食も含めたサービスの見直しが行われてきましたが、ここにきて朝食のクオリティーを追求するホテルが際立ってきたのも事実です。そもそもホテル朝食は、ホテルステイの流れにおいて最後に体験する一種のイベント的要素が高く、人は最後に体験したことでその印象が変わるという「ピーク・エンドの法則」という点でもホテルが朝食に注力するというのはよく理解できます。
ホテルにも多様な形態がありますが、ホテル朝食も非日常体験と捉えれば、リゾートホテル朝食の持つポテンシャルを注視してホテルを選ぶのもまた新たなホテル体験の端緒になるかもしれません。次回も朝食にフォーカスしてホテル評論家が唸ったホテル朝食を紹介したいと思います。