お酢生活研究家が案内する、九州ご当地の“お酢”旅のススメ

こんにちは。「お酢生活研究家」の久保桂奈です。実家は長崎県の西の端、西海市の川添酢造。幼い頃から、お酢の世界に触れ、現在は兄や弟と共に4代目の父のもとでお酢、味噌、甘酒などを作りながら、お酢料理教室、お味噌作り教室を通して、食の大切さを伝えたいと活動中。「健康のために、お酢を毎日なんとか摂ろう!」と頑張るのではなく、生活の中に自然に取り入れて暮らす方法の提案をしています。
九州は、実は個性的なお酢の宝庫! 有名な「黒酢」以外にも、果物やハーブなど、地域特性を生かした素材や醸造法で、こだわりのお酢が造られています。今回は、おすすめの4種をご紹介します。お酢を通して旅してみましょう。
文・写真/久保桂奈
目次
米どころの老舗、庄分酢「有機りんご酢」(福岡県大川市)

福岡県大川市で300年続く老舗のお酢屋さんで、豊かな大地を持つ米どころ・筑後でこだわりのお酢造りをされています。米酢を中心に、食生活を彩るさまざまなお酢製品を手掛けています。
庄分酢さんの有機りんご酢は、りんご果汁を静置発酵という製法で手間暇をかけて作ったお酢。りんご特有の爽やかな酸味と後口の良さで、魚介類のマリネや、ドレッシングにおすすめです。庄分酢さんは、自社レストランも経営しているので、レストランでお酢を使った食事を満喫した後は、お買い物をしてご自宅でも気軽にお酢を楽しんでみてはいかがでしょうか。
■庄分酢「有機りんご酢」300ml 851円
黒酢の聖地、重久盛一酢醸造場の「ざくろ甕酢」(鹿児島県霧島市)

黒酢で有名な鹿児島県の福山町。錦江湾の奥に桜島を望む雄大な自然の中に並ぶお酢の甕(かめ)の風景は圧巻です。原料の米と土着の麹菌、良質な湧水、独特の気候風土の中で時間と手間をかけたお酢造りをしていることから、甕が並んでいるこの風景を「甕畑」と呼んでいるそうです。
ざくろ甕酢は、甕の中に希少なザクロの種とザクロ果汁、米麹と地下水を入れて発酵、熟成させたお酢です。甘味料を一切使わずとも、ほのかな甘味と風味豊かな旨味と酸味が口の中に広がります。鹿児島では、名物の芋焼酎を黒酢割りでよく飲まれていますが、このざくろ甕酢は芋焼酎だけでなく、ジュースやカクテルと合わせたり、カルパッチョにしたり、広い用途で使いやすいお酢です。美容、健康に良いので、女性の方におすすめです!
■重久本舗 「ザクロ甕酢」185ml 1,080円
泡盛がお酢に!? 請福酒造「しまの酢」(沖縄県石垣島)


家族旅行で訪れたときは、珍しく極寒だった川平湾です
沖縄の石垣島は、エメラルドの海と、マングローブ林など、憧れてやまない観光地です。私も家族旅行で訪れてすっかり魅了されました。
沖縄のお酢といえば、もろみ酢を思い浮かべる人が多いと思いますが、泡盛から作られたお酢があることはご存知ですか?石垣島産の泡盛と、泡盛の製造過程の副産物である蒸留残留液で醸造した、沖縄初の純米酢「しまの酢」は、旨味が多いのが特徴で、揚げ物やお肉料理などにとても合います。沖縄料理との相性が良く、お取り寄せした八重山そばに、唐辛子を刻んで入れたしまの酢をかけていただきました。泡盛のほのかな香りがくすぐり、沖縄の空気を一緒に吸い込んだような気持ちに。南の海に思いを馳せながら、沖縄料理と一緒に使っていただきたいです!
■請福酒造 「しまの酢」500ml 699円
玄米酢と和ハーブの出会い、川添酢造「クロモジ玄米酢」(長崎県西海市)

私が住む長崎県西海市の雪浦(ゆきのうら)は、海と山と川に囲まれた自然豊かな小さな町です。雪浦にある川添酢造は、「水良ければ必ずいい品ができる」という初代の教えのもと、原料と水にこだわり、麹作りから手間と時間をかけてお酢を造っています。お酢を寝かせている甕部屋では、お酢たちにクラシックを聴かせているというこだわりも。
クロモジ玄米酢は、静置発酵をさせた玄米酢に、和ハーブ「クロモジ」を漬け込み、エキスを抽出しました。クロモジは、抗菌や消炎作用、リラックス作用などで注目されており、柑橘系の爽やかな香りが特徴。玄米酢独特の香りが爽やかに変わり、料理にもドリンクにも使いやすい、毎日欠かせないお酢です。
■川添酢造 「クロモジ玄米酢」 200ml 800円
左から、私、兄、弟、父である4代目。麹作りに欠かせないもろぶたの前で
最後に
わたしは旅と食が大好きです。食べるために旅をすると言っても過言ではありません。旅先では、食べ物がどんな調味料で味がつけられているか聞いたり調べたりして、お土産に現地の調味料を買って帰り、帰ってからも再現料理で旅を楽しんでいます。
コロナ禍で、なかなか旅に気軽に出られませんが、訪れたい場所の食材や名物料理と一緒に、酢などの調味料を取り寄せて調理すると、まるで現地で食べているかのような気分になりますよ。コロナ禍で身も心もヘトヘトに疲れた時、お酢は体からも心からもふっと疲れをとってくれる、頼もしい調味料です。皆さんも、お酢をお供に心の旅に出かけませんか?
著者プロフィール
お酢生活研究家。実家は長崎県西海市の川添酢造。明治33年創業。幼い頃から酢屋で働く祖父母や両親を見て育ち、自然とお酢の世界に入る。兄と弟とともに、4代目の父のもとでお酢、味噌、甘酒などをつくりながら、お酢料理教室、お味噌作り教室を通して、食の大切さを伝える活動をしています。
https://kubokeina.net/
