分からないことが面白い。深海生物のワクワクを伝えたい
世界でもめずらしい深海生物をテーマにした沼津港深海水族館。沼津港で100余年の歴史を持つ水産会社「佐政水産」の佐藤社長の「地域活性化のための施設を造りたい」という強い思いが実を結び、2011年12月にオープンした。
世界でも類を見ない深海生物の水族館が成り立つのは日本一深い駿河湾に隣接する沼津の立地はもちろん、地域の協力があるからこそ。地元の漁師さんと提携し、底引き網漁の船をチャーターして、水族館スタッフ自らが深海生物を捕獲に行くのも深海水族館の特徴の一つだ。駿河湾は急深のため、漁場までが近く、捕獲してすぐに戻って来られるため、輸送時間が短くて済む。沼津だからこそできる水族館だといえる。
日本では水深200mより下を「深海」と呼んでいる。そこを起点に光合成ができなくなり、生態も変わるそうだ。「深海は見えないから面白い」と同館が掲げるように、なぜこのような形状なのかなど、分からないことが多いのも深海生物研究の醍醐味。水族館では駿河湾や世界各地の深海生物が多数展示されているが、深海生物と並ぶもうひとつの見どころが冷凍2体と、はく製3体の “シーラカンス”だ。「シーラカンスはすでに絶滅していると思われていましたが、1938年に南アフリカで発見されたことにより、“生きる化石”と呼ばれています。シーラカンスはかつて淡水性など多様な種類がいました。しかし、生き残っていたのは深海に留まったもの。3億5000万年もの長い間、姿形を変えずに深海で生き続けていたのです。現在ではワシントン条約第Ⅰ類となっているため、日本では当館でしか見ることができません。なかでも冷凍個体は世界中でもここにある2体だけという貴重なもの。絶対に見ていただきたいです」。
また、深海水族館がある「港八十三番地」の飲食店では沼津港で水揚げされた新鮮な深海魚を使った料理も楽しむことができる。「以前は価値が低いといわれていましたが、深海水族館や「港八十三番地」で沼津が“深海の街”としての認知度が上がり、今では沼津港のさまざまなお店で食べることができるようになりました。そのためセリの価格も上がり、漁師さんや魚市場にもプラスになり、地域の活性化につながってきています」。深海生物の面白さだけでなく、地域への思いも詰まった魅力的なスポットだ。