信州ジビエ旅01

網罠で獲った天然真鴨ロースと手羽、もも肉のパナッシェ 7,480円

Auberge Des espoirオーベルジュ・エスポワール
茅野
都会の喧騒を忘れさせる大自然の恵み
大自然の中、シェフがその土地の食材を使って腕を振るう宿泊施設を備えたレストラン、オーベルジュ。八ヶ岳山頂へ向かう途中にも、蓼科の自然に囲まれたオーベルジュがある。日本のジビエ料理の第一人者である藤木シェフが営むエスポワールだ。信州のジビエや、無農薬野菜の美味しさに感動したシェフが生産者をまわり、直接買い付けを行う「地産地消」のフレンチレストラン。国産のジビエを提供しており、県外からもファンが集まる人気店だ。おすすめメニューのひとつが、「網罠で獲った天然真鴨ロースと手羽、もも肉のパナッシェ」7,480円。鴨は通常散弾銃で猟をすることが多いが、エスポワール自慢の鴨料理は網縄猟で収穫したものを使用している。鴨の体内に銃弾が入らないため血の臭みがなく、さっぱりとした味わいに。また米を撒いて餌付けをするため甘みが強く脂が乗ったおいしい鴨を堪能できる。

Auberge Des espoir

熊肉のスライスをぶどうの枝に巻きつけ豚の網脂で包んだ、月の輪熊のブロシェット 島こしょうの香り 蓼科産セップ茸のポワレとアンズ茸の赤ワインソース7,480円。炭火でゆっくりと焼くことで網脂が熊の赤身にしっかりと浸透し柔らかな食感を生み出している。

Auberge Des espoir

信州産自家製ジビエ生ハム3種の盛り合わせ(大)3,520円は、鹿、猪、熊の肉を燻製室でゆっくりと干しながら熟成する。エスポワールの冬は非常に寒く、湿度が低いため生ハム作りには最適な環境。塩と砂糖だけのシンプルな味付けながら、肉の鉄分や旨味が凝縮されている。

Auberge Des espoir

広々とした窓の外には蓼科の自然が広がり、野生の鹿が遊びにくることも。食後にはガーデンを一望できる別室で食後酒ともにシガーを楽しむことができる。非日常を味わえる極上の空間だ。

The chef’s VOICE

オーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフ藤木徳彦氏

オーベルジュ・エスポワールのオーナーシェフ藤木徳彦氏は、料理人のかたわら、日本ジビエ振興協会の代表理事も務める。ジビエ料理を始めたきっかけやその想いを伺った。

子供の頃から料理人になるのが夢で、高校卒業後に長野のフランス料理のオーベルジュで修行を行っていました。その修行中に行ったブルゴーニュ地方のオーベルジュがジビエとの出会いの場です。それまでは野生の肉ということで、ジビエに対してあまり良い印象を持っていなかったんです。しかし、そこで食べた鹿肉と鴨肉がとてもおいしくて、脂の少ない赤身の旨味と、なめらかな食感に感動しました。私が今でもそのジビエの味を忘れられないように、料理って最初に口にしたときの印象がずっと残ることがあると思うんです。ジビエに限らず、本当においしいものを提供しなければ正しい食は伝わらないんだとその時実感しましたね。今でもその体験が料理人としての軸になっています。

独立を決めてお店を作る際は、そのフランスのオーベルジュを参考にしました。オーベルジュの定義は徹底した地産地消。自然に囲まれた田舎にあって、そんな不便な場所でも美味しいものを求めてわざわざ来てくださるお客様に満足いただくその地域の魅力を伝えることが使命なんです。そのため、エスポワール周辺の農家に何度も足を運び、新鮮な野菜を仕入れさせていただくよう交渉をしました。地元の新鮮な野菜や山菜の魅力を伝えることを目標にしていたので、オープン当初は特にジビエの提供は行っていませんでしたね。

農家に通っている時に耳にしたのが野生動物による畑の被害。鹿や猪が出荷前の上質な野菜などを食べてしまうとのことでした。中には荒らされないように狩猟をしている方もいたのですが、獲った鹿肉を家で料理してもあまり美味しくなく、ほとんど捨ててしまう現状がわかったんです。ジビエはきちんと調理をすれば、野生の肉ならではの旨味をもった、おいしい食材だと知っていたので、その話を伺った時、エスポワールでジビエ料理を提供することを決めました。当時の日本ではまだジビエ料理が普及していなかったので、全国にあるジビエ専門店に足を運び、そこのシェフに話しかけてジビエ料理について学んでいきましたね。狩猟することで畑も荒らされず、おいしい野菜が収穫できる、猟師はレストランに提供することで収入となる、レストランは新鮮で貴重な地元のジビエが手に入る、とてもいい循環ができていると思います。

ジビエを提供するようになってから、野生動物の被害に遭っている地域は長野だけでなく日本全国にあることがわかりました。獲られては捨てられていく命が惜しくて、ジビエ料理をもっと普及させたいと考えるようになったんです。駆除と食との境界線が曖昧だったジビエの世界をきちんと整備して、日本の食文化にすべく立ち上げたのが「日本ジビエ振興協会」です。今では全国に会員の方がいて、情報や悩みを出し合い、時には国へガイドラインの作成を求めるなど、安心・安全により多くの方がジビエに触れる機会を増やす活動を行なっています。

長野県は八ヶ岳とアルプスの山々に囲まれた自然豊かな場所。獲物が多く、種類も豊富で新鮮な肉が仕入れられるのが魅力ですね。秋から冬にかけては諏訪湖に水鳥が飛来するので鴨などの鳥料理がおすすめですよ。ぜひ、おいしいジビエを食べに足を運んでみてください。

  • 〒391-0301 長野県茅野市北山蓼科中央高原
  • 0266-67-4250
  • 12:00〜13:30LO、17:45〜19:00LO
  • 木曜日、8月は無休、2月中旬〜3月中旬は休業
  • 40席
  • 8,000円~15,000円
  • JR中央本線 茅野駅からタクシーで30分
    メルヘン街道バス緑山から徒歩2分
  • 12台

オーベルジュ・エスポワール 外観

Text:Midori Shimokoshi(effect)
Photo:Kotaro Kikuta

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