ちゃんとアドベンチャートラベルを考える旅 阿寒に息づく知と感性自然と共生し旅をつくる人々を訪ねて

「アクティビティ」「自然」「文化体験」のうち2つを組み合わせて楽しむ旅のスタイル「アドベンチャートラベル(AT)」。阿寒湖を中心に、今も手つかずの自然が残る阿寒エリアでは、環境を生かしたアクティビティや、先住民族アイヌの文化と結びついた体験型観光が早くから展開されてきました。自然を歩き、アイヌの知恵に触れる。異なる要素を重ね合わせることで、阿寒ならではの新たな魅力を伝えています。今回は、そんな旅の最前線を支える3人のガイドを訪ねました。

北海道阿寒エリア

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阿寒湖へのアクセス

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火山活動によって生まれた阿寒湖には、太古から残る希少な魚も生息。高田さんがフィッシングガイドとして案内しています。
火山活動によって生まれた阿寒湖には、太古から残る希少な魚も生息。高田さんがフィッシングガイドとして案内しています。

五感を呼び覚まし、大自然と一体になれる体験を

鶴雅アドベンチャーベース[SIRI](シリ) 高田 茂さん

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トレッキングや登山など、四季折々のツアーを楽しめる「鶴雅アドベンチャーベース[SIRI](シリ)」。阿寒の地で30年以上にわたりガイドをしてきたのが、高田茂さんです。「阿寒湖は希少な生き物が多く暮らす自然の宝庫。金色に輝くアメマスや“幻の魚”と呼ばれるイトウなど、太古の姿を残す魚に出会えるんですよ」と高田さん。そのため阿寒湖は釣り人にとって憧れの聖地でもあり、国内外からフィッシングを目的に多くの人が訪れているそう。そんな高田さん自身も、阿寒湖に魅せられたフィッシングガイドの第一人者。安全で奥深いフィッシングの世界を案内してくれる頼もしい存在でもあります。

さらにSIRIには、植物や動物など、それぞれの専門分野を持つガイドが在籍。ガイドによって案内が異なるため、同じコースでも新しい発見があるのも魅力の一つです。「例えば、私の場合はアイマスクを着けて森の中を歩いてもらいます。目隠しを外した瞬間、音や匂いまで鮮やかに感じられるんですよ」。こうした工夫を通して、参加者の五感を呼び覚まし、大自然と一体になる体験へと導くのもSIRIならでは。阿寒の自然を全身で体感できる、忘れられない冒険ができます。

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activity

鶴雅アドベンチャーベース[SIRI](シリ)おすすめアクティビティ

フィッシング
●フィッシング
ボートでしか行けない湖の奥までアクセスし、ダイナミックなフィッシングが体験できます。初心者の方も道具の使い方から丁寧にサポートしてくれるので安心。
ノルディックウォーク
●ノルディックウォーク
ノルディックウォークとは、2本のポールを使って全身で楽しむウォーキング。インストラクターと共に、四季折々の風景を感じながら心も体もリフレッシュ。
モーニングカフェツアー
●モーニングカフェツアー
早起きして、阿寒湖と雄阿寒岳を望むスポットへ。澄み渡る空気、凍り付いた湖と、ダイナミックな冬景色に包まれながらモーニングコーヒーをいただきます。
ボッケの森スノーウォーク
●ボッケの森スノーウォーク
凍った阿寒湖の上をスノーシューで歩き、泥火山「ボッケ」を目指します。道中には天然の雪の滑り台など、冬ならではの楽しみも。

data

鶴雅アドベンチャーベース[SIRI](シリ)

鶴雅アドベンチャーベース[SIRI](シリ)

住所/北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目6-10
あかん遊久の里 鶴雅 ウイングス館1F
電話/0154-65-6276
時間/8:00~20:00
定休日/無休
料金/ツアーにより異なる

Person2

アイヌコタンにある「イチンゲの店」。瀧口さんが制作した木彫作品などがずらりと並びます。
アイヌコタンにある「イチンゲの店」。瀧口さんが制作した木彫作品などがずらりと並びます。

伝統を大切にしながら、未来のアイヌ文化を見据えて

イチンゲの店 木彫作家 瀧口健吾さん

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阿寒湖三大巨匠の1人で今は亡き木彫作家の父・政満さんと、アイヌ民族の母・百合子さんの間に生まれた瀧口健吾さん。高校時代、留学先のオーストラリアでウッドカービングに触れたことをきっかけに、木彫の世界へと興味を持ちました。現在は父の跡を継ぎ、アイヌコタンにある「イチンゲの店」を営みながら、語学力を生かして英語でのガイドにも取り組んでいます。「ガイドを始めてから森の見方が変わりました。オヒョウの木から繊維を取って布を織ったり、キハダの実を胃腸薬にしたり。自然と共に歩んできたアイヌの暮らしの知恵を、世界中の人に伝えられたらと思っています」。

ガイドの仕事がない日は、店頭でひたすら木を彫り続けている健吾さん。「アイヌ文化は今も進化を続けていているんですよ。木彫りの熊というと鮭をくわえた昔ながらの形が有名ですが、最近は可愛らしい形やさまざまな色づかいに挑戦しています。伝統を大切にしながら、『これは良いな』と思った新しい技法や表現を積極的に取り入れていきたいですね」と笑顔を見せます。何百年も前から、何世代にもわたって伝承されてきたアイヌ文化。先人たちの想いとともに、新たな表現も加わりながら、次の世代へと受け継がれ始めています。

雑貨ショップとのコラボレーションで生まれたTシャツ。プリントの木彫りの熊は瀧口さんによるデザイン。
雑貨ショップとのコラボレーションで生まれたTシャツ。プリントの木彫りの熊は瀧口さんによるデザイン。
瀧口さんが制作した木彫りの熊。デフォルメされたデザインが特徴的。
瀧口さんが制作した木彫りの熊。デフォルメされたデザインが特徴的。

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イチンゲの店

イチンゲの店

住所/北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-10
電話/0154-67-2816
時間/9:00~18:00
定休日/不定休

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experience

アイヌコタンで体験できるおすすめ文化体験

「Anytime, Ainutime!」は、「森」、「湖」、「ものづくり」の3つの要素で構成されたアイヌ文化を、阿寒湖で暮らしている住民たち自らが伝えていくことをテーマとした体験型ツアー。アイヌの考え方を知り、自らの生き方や精神に気づきを得るような、心豊かになる時間をお過ごしください。

創る時間 刺繍体験
創る時間 刺繍体験
●創る時間 刺繍体験
アイヌが現代にまで伝えてきた美しいデザイン、「アイヌ文様」。プログラムでは講師の指導のもと、コースターに刺繍を施していきます。ひと針一針思いを込めたコースターは、お土産や贈り物にも。
創る時間 刺繍体験
創る時間 刺繍体験
●創る時間 木彫体験
アイヌの伝統楽器「トンコリ」をかたどったチャームに、好みのアイヌ文様を施すプログラム。レクチャーのもと木を彫り進めながら、次第にアイヌの世界へ。アイヌの精神や、木彫との関係性に触れていきます。
創る時間 木彫体験
創る時間 木彫体験
●湖の時間
アイヌ伝統の口琴楽器「ムックリ」を制作した後、外に出て森の中へ。辿り着くのは雄阿寒岳を一望できる、アイヌが愛する絶景ポイント。穏やかな景色を眺めながら、作ったムックリを演奏します。

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阿寒アイヌ工芸協同組合

阿寒アイヌ工芸協同組合

住所/北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-81
電話/0154-67-2727
時間/9:00~17:00
定休日/年中無休

Person3

ビジターセンターでは阿寒湖周辺の植物や動物などの解説コーナーや、マリモの水槽展示などを行っています。森歩きイベントなども積極的に開催。
ビジターセンターでは阿寒湖周辺の植物や動物などの解説コーナーや、マリモの水槽展示などを行っています。森歩きイベントなども積極的に開催。

“手つかずの自然”だからこその魅力がここにはあるんです

阿寒湖畔ビジターセンター野竿陽平さん

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大阪府出身の野竿陽平さん。植物好きが高じて阿寒湖畔ビジターセンターに就職して以来、約12年間阿寒湖の魅力を発信し続けています。阿寒に来て驚いたのは、アイヌと自然の深い関わり。「自然の利用の仕方がとても上手なんです。ガイドではそれらをただ話すだけではなく、実際に体験してもらうことも大切にしています」。また、阿寒湖周辺には原始的な森が多く、希少な生き物が暮らしていることも魅力の一つ。森に入ればクマゲラやアカゲラなど、普段簡単に出会うことができない鳥も観察できます。野竿さん曰く、それは人間の介入が少ない阿寒湖ならではのこと。先人たちの働きがもたらしてくれた恩恵が大きいのだと言います。「現在、阿寒湖周辺の土地のほとんどは前田一歩園財団が管理しています。明治時代、初代の前田正名さんが阿寒湖を『切る森』から『見る森』にしようと提言したことで、現在まで美しい自然が守られているんです」。

毎朝、森を歩くのが好きだと話す野竿さん。「こんな植物あったかな?と新しい発見が毎日のようにあり、12年間居ても飽きることがありません!」と笑顔を見せます。自分のガイドが、少しでも自然に興味を持つきっかけになれば。そんな思いを胸に歩く野竿さんのガイドに参加すれば、きっと阿寒湖の自然をより面白く、より身近に感じられることでしょう。

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nature

阿寒湖周辺のおすすめの自然

ボッケの森
●ボッケの森
阿寒湖畔ビジターセンター裏から、北に10分ほど歩くとボッケ(泥火山)に続く遊歩道があります。エゾマツやトドマツなどの北海道らしい針葉樹をはじめ、クマゲラやエゾリスなどの野生動物が見られることも。
イベシベツ川
●イベシベツ川
阿寒湖の北側に位置する湖「パンケトー」から、阿寒湖に注ぎ込むイベシベツ川。秋には産卵期のアメマスが大量に遡上するほか、清流のみに生息する希少なカワシンジュガイも。原始の姿が残る自然豊かなスポット。
エゾマツ
●エゾマツ
北海道を代表する針葉樹。葉からはほんのりスパイシーな香りが漂い、アイヌの人々はエゾマツの煮汁を布に浸し、匂いをかぐことで風邪の治療に利用していたといいます。
エゾリス
●エゾリス
北海道に生息するエゾリスは、冬眠をすることなく真冬でも活動しています。冬の間は雪の下に食糧を保存しておくため、朝になると雪に潜る姿が見られるそう。

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阿寒湖畔ビジターセンター

阿寒湖畔ビジターセンター

住所/北海道釧路市阿寒町阿寒湖温泉1-1-1
電話/0154-67-4100
時間/9:00~17:00
定休日/毎週火曜日(祝日の場合翌日)

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取材協力 北海道観光機構