
会長 徳弘さん
国内和牛に占める土佐あかうしの割合は0.1%。これが幻の和牛と呼ばれる理由のひとつです。さらに、都市部への流通が少ないことも幻といわれる一因です。県内の山間部を中心に約70軒の生産農家がそれぞれにこだわりをもち大切に育てていて、年間の出荷数は470〜500頭ほどに限られています。
いくら食べても重たさを感じさせないさっぱりとした脂と、芳醇な香りに加えて噛むほどに広がる赤身肉本来の旨味が土佐あかうしの魅力。高知市内では、定番のステーキのほか見栄えも美しいローストビーフ、高知ならではの藁焼きや手間暇かけて作られたフランス家庭料理など、バラエティ豊かなアレンジで味わうことができます。それぞれの店ごとに工夫を凝らした逸品をどうぞ。



「おぉっ!」。お笑い芸人でもある店長のおだちさんが繰り広げる豪快な藁焼きの演出に、声が漏れるゆめまるさん。カツオの藁焼きは全国各地でいただくことができますが、土佐あかうしの藁焼きは珍しいのでは? しかも、牛1頭から1kgほどしか取れない希少部位・カイノミを使用していて売り切れ御免の逸品です。燻製のような芳醇な香りをまとい、表面をカリッと仕上げたタタキをたっぷりの薬味と共に味わいます。
合わせるドリンクは、高知のクラフトジンで作る「高知県ジン ゆずソーダ割り」です。高知県の特産品のゆずを使ったジンは、爽やかな香りと口当たりで肉料理と好相性。次のひと口を誘います。「先に塩を口に入れてから、お肉を召し上がってみてください」というアドバイスで、再びパクリ。「肉の旨味をより感じる気がします。感動の味……」と、ゆめまるさん大絶賛です。
ここでは、ウエットエイジングという熟成法で水分を残しつつ、旨味をアップさせます。科学的なデータもあり、旨味成分のアミノ酸は平均的な黒毛和牛と比較して28日間熟成すると約3~4倍に。グルタミン酸やペプチドも多く、オレイン酸を豊富に含んでいるため口溶けがよく、悪玉コレステロールを抑える働きも。肉の状態を見極めながら長期熟成させた土佐あかうしをご賞味あれ。


ここで味わいたいのは、ビールの注ぎ方を教える講師もしていたという店主が注ぐ「キリンブラウマイスター」。長く消えないきめ細かな泡はおいしい生ビールの証です。「Back to the basic! 結局ビールに戻ってきちゃう。で、ビールを飲むとリセットされて、またイチから飲めちゃう。不思議ですね~(笑)」と、いつも以上のペースのゆめまるさん。料理はフランスの家庭料理「アッシ・パルマンティエ」を。じっくり煮込んだ土佐あかうしと野菜の上にマッシュポテトを重ね、その上にチーズとパン粉を広げ、香ばしく焼き上げた料理です。熱々を召し上がれ。


高知の“のんべえ”が集まる場所といえば「ひろめ市場」。飲食店のほか鮮魚店や精肉店、土産物店など50以上の店がひしめく一大グルメスポットです。場内にはテーブルと椅子が並ぶスペースがあり、好きな店で好きなものを買い、好きな場所で楽しむスタイルです。そんな賑やかなひろめ市場のなかで、異色ともいえる存在が「土佐あかうしとワイン プティ・ヴェール」。店内にはテーブル席があり、ゆったり、のんびり過ごすことができます。

土佐あかうしの味をダイレクトに味わいたいときは王道のステーキをチョイスして。しっとりと柔らかくジューシーなフィレ、きめ細かな赤身のモモ肉、表面をクリスピーに仕上げ、肉本来の旨さが詰まったウデ肉と異なる部位が用意されています。フランスを中心にしたワインも充実の品揃え。

「高知では珍しいタイプの店作り」、「希少なグラスフェッドビーフが味わえる」、そんな“稀有な体験”ができる店にしたいと名付けられたダイニングバー。雑居ビルの中にあり、しかも少し奥まった場所にあるため隠れ家のような佇まいですが、店内に入るとイメージが一転。天井が高く開放的で、インテリアショップのような洗練された空間が広がります。ゆったりとしたテーブル席と居心地のいいカウンター席があり、おひとりさまからグループまで、どんなシチュエーションにも対応してくれる器の大きな店と言えます。

こちらでいただけるのは、食生活やライフスタイルにこだわりのある人の間で注目が高まっているグラスフェッドビーフです。グラスフェッドビーフとは、自然の中でしっかりと運動し、牧草だけを食べて育った牛のこと。赤身肉のよさが際立ち、雑味がなく、脂がすっきりしているのが特徴です。
バター、醤油、ニンニクをベースにしたソースは日本人好みの味で、口にする前から期待感が膨らみます。美しいロゼ色に焼けたヒレ肉がサーブされると、自然と笑みがこぼれるゆめまるさん。「俺の好きなタイプの赤身肉です、これ」と、おすすめのワインと共に手が止まらない様子です。塩と刻みワサビで味変しながらいただけば、まさに至福の時間。
念願叶い、はじめて高知の地に足を踏み入れたゆめまるさん。どの店でも気持ちのいい飲みっぷり、食べっぷりで高知を楽しみました。

――「高知に行きたい!」とずっとおっしゃっていたそうですね。
そうなんですよ。この仕事が決まったとき「よっしゃ~!」って思いましたもん。少し前に(東海オンエアの)メンバーも旅行に行っていて、ちょうど高知の話題になっていたところだったから、うれしかったですわ~。ドラマや映画に出てくる四万十川のきれいさに驚いて、見てみたいと思ったのが高知に興味を持ったきっかけ。それに僕、高知から定期的にカツオをお取り寄せするくらいカツオ好きで。薄く切ったり厚切りにしたり、たくさんの薬味を用意したり、家でよりおいしく食べる方法を研究しています(笑)。だから本場で食べる味、最高でした。




―― まちの雰囲気はいかがでしたか?
元気なまちだなって思いました。今回、飲み旅をしたのが週末だったこともあってか、若い人から年配の方まで、全世代が楽しく飲んでいる様子が印象的でした。こういうまちは、安心して飲めますよね。それに、知っているまちで飲むときは「絶対に失敗したくない」という思いが強くなっちゃうから、結局いつも同じ店で飲むことに。でも、地方へ行くと遊べるというか、もともと知らないお店ばかりだからチャレンジできる。そんな旅先ならではの楽しみ方があることを高知に来て思い出しました。今回伺ったお店は全部グーグルマップにチェックしたから……プライベートでも絶対にまた来ます!
![[月刊旅色]2025年1月号](https://tabiiro.brimgs.com/book/monthly/202501/images/common/cover.jpg)












