『和菓子のアン』
時代はすっかり変わったけれど、江戸から今も身近に残るもの――それが和菓子です。本書はデパートの名店街が舞台で主人公は18歳の売り子・杏。お菓子が体現する季節行事が気軽に学べるし、なんといっても店先に持ち込まれる「日常の小さな謎」が読みどころ。どれも底になんらかの「願い」や「祈り」があり、和菓子の存在と相まって、ユーモアミステリーながら奥深いです。今日はデパ地下に寄って帰ろう!
734円/光文社文庫
『作家のお菓子』
作家とお菓子の甘い関係を紹介するビジュアル本。「ガリガリ君」にハマっていた水木しげる先生、アンパンをリスペクトしていたやなせたかし先生(さすがです!)、とにかくあんこが大好きで夏は氷あずきが定番だった江戸川乱歩らのエピソードを、編集者やお弟子さん、ご家族のエッセイが裏打ちしてゆきます。ラストに掲載店舗付きなので、お気に入りの作家が愛した味を、作品とともに召し上がれ。
1,760円/平凡社
『古典がおいしい!
平安時代のスイーツ』
本書は国語と社会と家庭科をジャンルオーバーして学べるユニークな絵本です。女性作家やヒロインたちは平安時代から甘い物が大好き!「枕草子」「源氏物語」などのレシピ再現を皮切りに並ぶ、「椿餅」「麦縄」「唐果物」など興味深い10品。現代でも入手できる材料で作れて、京菓子のルーツがうかがえるのが興味深いです。お気に入りの古典の雅なあの人はこんな味を、と思いを馳せたくなります。
2,750円/かもがわ出版
『ドーナツキング』
アメリカでドーナツのお店をオープンし“ドーナツキング"へと駆け上がったカンボジア人、テッド・ノイのスイートでビターなアメリカンドリーム的ドキュメンタリーです。カンボジアの内戦、移民難民問題、大手チェーン店VS個人経営店の最新ドーナツ裏事情なんかも紐解けて勉強になりますし、成功だけじゃないところがリアル。酸いも甘いも描かれたテッド・ノイの人生から学ぶことはたくさん。あらためて映画は世界を知るための窓ですね。誰かの人生をドーナツの穴からのぞく、注意深く観ることで気づきもたくさん。カラフルなドーナツもたくさん登場します。
配給:ツイン
『あん』
日本を代表する大女優である樹木希林さんが「あんこ」を題材に、悲しいながらも語り継がれるべき歴史を丁寧に演じます。映画全体に漂う静けさ。その空気感に心が凛と研ぎ澄まされて、どこか魂の浄化のような時間を過ごせます。あん作りの過程で驚きなのは、樹木希林さんが演じる徳江の小豆に対する姿勢。優しく丁寧に小豆と会話をしながらあんを作るんです。そうして出来上がったあんの艶。画面越しにもその甘味と香りがふわっと伝わってくるよう! 経験年数で単純にあん作りがうまいという話でなく、仕事に対する向き合い方に胸打たれます。落涙必至。
販売・発売元:ポニーキャニオン
『ゴッドファーザー』
世界的な名作ゴッドファーザー! 男たちのロマンだけでなく裏で支える女の強さが伝わり、いつみても揺るぎない感動をくれる色褪せない傑作です。アンバーの色調には大作の風格が漂い、大人の映画タイムをより素敵に彩ってくれます。マフィアもたったひとりでは生きていく意味を見出す事が出来ない……。私たちと同様に普通の人間であることを伝えきった圧巻の最終章でした。そしてシリーズを通して度々登場した、シチリアのお菓子カンノーリ。特に印象的なのは、まさかの暗殺のアイテムとしてカンノーリが使われたシーン。マフィアの愛したスイーツをきっと食べてみたくなるはず。
販売・発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント