「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ

季節を感じる甘い誘惑。フルーツの秋は産直パフェで旬めぐり

扉写真、文:佐藤 潮.(effect)

秋のパフェは究極のエンターテインメント!

多くのフルーツが旬をむかえる秋。より季節を感じたいなら、見た目も楽しいパフェとして満喫するのがおすすめ。そこで今回はパフェ評論家の斧屋さんに、いまが食べごろのフルーツパフェについて教えてもらいました。氏が提唱する「パフェは究極のエンタメ」の真意とは? 産地直送の果実を扱う名店とともにご紹介します!

パフェ評論家 斧屋さん

1年間で食べるパフェは平均400本! 日本唯一のパフェ評論家です。その魅力を多くの人に伝えるために雑誌、ラジオ、イベントなどで活躍中。『東京パフェ学』(文化出版局)、『パフェ本』(小学館)『パフェが一番エラい。』(ホーム社)など書籍も多数手がけています。

お話を聞いた人 パフェ評論家 斧屋さん
※新型コロナウィルスの影響により、施設の営業日・営業時間が変更になっている場合があります。最新の公式情報をご確認ください。

秋のフルーツパフェは“葡萄の食べ比べ”がおすすめ!

葡萄

「パフェは『五感』を刺激するもの。華やかなビジュアルにはじまり、香り、味、食感、咀嚼音まで多彩な変化を楽しめます。秋の果実として代表的な葡萄なら、色、形、固さ、甘さ、種の有無、皮が薄くて食べやすいなど、品種による個性もさまざま。それを1本で同時に味わえるメニューが『食べ比べ系パフェ』としてお店に登場することも多いです。なかでも、その日の仕入れに合わせて品種の構成図と一緒に提供し、食べ比べの楽しみ方を高めているお店が『フルーツパーラーゴトー』。多いときで13種類もの葡萄が使われているとか。珍しい品種も含まれており、新しい葡萄との出会いの場にもなっています」

こんな品種に出会えます!

山梨県

・黄玉(おうぎょく)
・マニキュアフィンガー
・クイーンニーナ
・翠峰(すいほう)
・ピオーネ

長野県

・クイーンセブン
・巨峰
・クイーンニーナ
・ナガノパープル
・藤稔(ふじみのり)

山形県

・シャインマスカット

1粒丸ごとパフェに組み込みやすいサイズ感。
毎年のように新品種が登場する葡萄は
最も食べ比べ系パフェに適した果物です!

パフェ評論家 斧屋さん
パフェ
10種のぶどうのパフェ1,800円。構成図を見れば食べ比べがより有意義になるはず

元デザイナーが組み立てた魅惑の葡萄ストーリー

FRUIT PARLOR GOTO

本日、パフェの頂点に配された、長野県産クイーンセブンの糖度は25度以上。一般的な葡萄の糖度は20度くらいですから、食べ比べずとも甘さは歴然です。シャインマスカットとマニキュアフィンガーの交配種であり、その両親との違いや類似点も、この1本を食べれば見つけることができるはず。果実の甘さをより引き立てるのは、乳脂肪分が高く糖度は低い自家ブレンドの生クリーム。2種の葡萄入り自家製アイス、ピオーネの赤ワインコンポートに至るまで絶妙なバランスで組まれています。斧屋さんの熱烈な支持を受けるのも納得のクオリティ。仕入れは天候にも左右されますが、9月後半から10月前半は例年葡萄の品種が最も揃う時期、いまが来訪のチャンスです!

FRUIT PARLOR GOTO
創業は1946年。70年以上愛され続けている老舗です。親子3世代で切り盛りしています
FRUIT PARLOR GOTO
3代目の後藤浩一さんは元グラフィックデザイナーだけあり、果実の組み合わせにもセンスが光る
FRUIT PARLOR GOTO
店内にはお店の常連である画家、樋上公実子さんが描いたフルーツパフェの絵画が並ぶ
FRUIT PARLOR GOTO
場所は浅草ひさご通り商店街。リストに名前を書けば待ち時間に付近の散策もできます
[DATA]
フルーツパーラーゴトー
住所/〒111-0032 東京都台東区浅草2-15-4
電話/03-3844-6988
定休日/水曜日(不定休あり)
営業時間/11:00~19:00(L.O.18:30)
アクセス/つくばエクスプレス浅草駅から徒歩約4分
駐車場/無
パフェ評論家 斧屋さん

比べて楽しいゴトーさんのパフェ
これまで100本近くは食べました(笑)
通い続けたいお店です!

まだまだあります!秋が旬のフルーツパフェ

柿

「ここ数年、取り扱うお店が急激に増えたのが、柿を使用したパフェ。その魅力は不均一な食べ心地です。皮から種にかけて、果肉の味や食感が変化します。1つの品種だけでも食べていて飽きません。個人的には中がトロッと熟していると格別」

こんな品種に出会えます!

福岡県

・秋王

奈良県

・富有柿

トゥルトゥルの舌滑りだったり
しっかりと歯ごたえがあったり
品種ごとの個性も豊かです!

パフェ評論家 斧屋さん
FRUITS SUGI
秋王柿のパフェ1,650円。秋王を丸ごと花びらカット。自家製プリンは奈良県産富有柿入り
[DATA]
フルーツすぎ
住所/〒170-0004 東京都豊島区北大塚2-11-4 グランダエクラディーカス1F
電話/03-3940-1805
定休日/日曜日(水曜不定休)
営業時間/12:00~19:30(L.O.19:00)、土曜日・祝日11:00~19:30(L.O.19:00)
アクセス/JR山手線大塚駅から徒歩約2分
駐車場/無

果物のプロが厳選 素材が持つ長所をシンプルに活かす

FRUITS SUGI

店主は果物屋の息子として育ち、大田市場の仲買人のもとで修業を積んだ杉勝也さん。その磨き抜かれた目利きで大田市場から毎朝仕入れる果物に加え、ここ最近は生産者からの直送品も増えてきました。もともとは果物屋なのですが、2018年からはフルーツパフェの提供もスタート。一躍SNSなどで大きな話題になり、開店前から行列ができるほどの人気店に成長。2021年9月には足立区梅島にファン待望の新店舗もオープンしています。

FRUITS SUGI
秋王は福岡県オリジナル品種。柿の王様と言われる富有柿より糖度が高く食感はサックリ

無花果

「初夏と秋に旬をむかえます。昔はパフェの主役になるような果実ではありませんでした。それが果物農家さんの努力によって食味が高まり、次々と新しい品種も登場しています。そのまま食べても面白いですが、とくにワインと相性抜群です!」

こんな品種に出会えます!

佐賀県

・ビオレソリエス

福岡県

・とよみつひめ

決して派手ではない大人の味わい
つぶつぶとした食感にも
コアなファンが多いです

パフェ評論家 斧屋さん

全国にアンテナを広げ素材を巧みに変身させるフルーツの魔法使い

Fruit Chef

プレミアムフルーツが主役のデザート屋。店のSNSには日本各地の契約農家の様子がずらり。収穫予定日や天候までレポートされており、仕入れへの情熱が伝わります。秋に人気の食材は、流通量の少なさから幻とも言われるビオレソリエス。自然な甘さを活かしたフレッシュなものだけでなく、キャラメルでコーティングするグラッサージュなど多彩な調理法を駆使。とよみつひめのフィグ・オ・ヴァンと組み合わせ、ポテンシャルを存分に引き出しています。

Fruit Chef
とみつひめは美味しさのピークを迎える夏の間に赤ワインやスパイスで煮込みます
Fruit Chef
秋果黒いちじくビオレソリエスのパフェは時価。果物本来の渋味や酸味も魅力です
[DATA]
住所/〒103-0005 東京都中央区日本橋久松町6-12
電話/03-6206-2626
定休日/日曜日、水曜日 ※緊急事態宣言中につき休業中。最新の情報は店舗のSNSでご確認いただくか直接お問い合わせください
営業時間/11:30〜14:30(L.O.13:30)、16:00〜18:30(L.O.17:30)、土曜日・祝日11:30〜17:00(L.O.16:00 ※完売次第閉店)
アクセス/都営浅草線東日本橋駅から徒歩約5分
駐車場/無

栗

「生のまま食べることができない食材。どのように加工するのかが重要です。モンブランや甘露煮など、さまざまな選択肢があるなか、本来の味わいをどう生かすのか……パティシエの腕の見せ所でしょう。毎年のように面白い使い方をしているパフェが見つかりますよ」

こんな品種に出会えます!

茨城県

・いわまの栗

甘さの段階をどう調整しているのか
アイスでくるか、ペーストでくるか
作り手の技を楽しんでください!

パフェ評論家 斧屋さん
パフェ
和栗づくしパフェ&厳選茎ほうじ茶セット2,000円~。2021年の秋、満を持して初登場の限定メニューです

唯一無二の専門店が打ち出す期間限定、和栗づくしの1杯

和栗や
収穫したばかりのいわまの栗。毎朝丁寧に炊き上げて新栗甘露として仕上げています
[DATA]
和栗や
住所/〒110-0001 東京都台東区谷中3-9-14
電話/03-5834-2243
定休日/月曜日(秋期、繁忙期は休まず営業)
営業時間/11:00〜18:00(店内飲食 L.O.17:30)※原料が無くなり次第終了
アクセス/東京メトロ千代田線千駄木駅から徒歩約5分
駐車場/無

和栗や

栗収穫量日本一の茨城県、トップブランドを育む岩間地方に自社農園を持つ和栗専門店。オーナーの竿代信也さんは元クリエイターであり、現在は栗・モンブラン職人、栗農家としての顔も持ちます。農場管理、レシピ開発、店舗設計、HPデザインまで担い、栗を中心とした独自の世界を構築。和栗づくしパフェでは、自家製モンブランアイス、新栗甘露、栗みつ寒天に加え、渋皮有りと無し、2種のモンブランで、究極の栗パフェを表現します。

パフェ評論家 斧屋さん

パフェの入れものは一般的に縦長なので、上から下へ食べ進めていくわけですが、そこには作り手の意図や思いが込められています。そんな意識を持つことで、ひとつのパフェが“物語”のように感じられるはずです。また、いくら見た目が美しくとも、視覚や情報だけで満足できるものではありません。実際に食べるという“ライブ感”があってこそのパフェ。季節による違いはもちろん、提供されてから時間が経てば溶けてしまったり、食感が変わったりと、わずかな時間でも変化します。パフェの「旬」はとても短いです。だからこそ“ライブ感”を“五感”で楽しみ、その“物語”を読み解く。そうすれば、パフェを単なる食べものではなく、「究極のエンターテインメント」に感じられるはずです!