「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ

実は日本一!?“餃子のまち”の新勢力・宮崎!人気をけん引するのは市場の従業員
食材の宝庫 宮崎で育まれてきた独自の餃子カルチャー
南国のように温暖な気候によりマンゴー、地鶏、黒毛和牛など魅力的な食材がよりどりみどり。名産品が豊富な宮崎県でもここ最近の注目株といえば餃子。2020年の購入頻度が日本一という宮崎餃子の魅力に迫ります!文、写真 : 佐藤 潮. (effect)
お肉も野菜も県内産だから美味しい栄養のバランスも理想的ですよ!
餃子を焼き上げるのは
「宮崎市ぎょうざ協議会」の
会長である渡辺愛香さん。
2020年9月に発足したばかりの
まだ新しい組織の代表者です
父の思いが込められた宮崎餃子を素材から見つめ直す一大決心
宮崎ブランドポークまるみ豚、西都産ブランドのニラなど、
味の秘訣は徹底した素材選びにあり!
タベサキ「宮崎の新名物!?  餃子」
宮崎餃子はおすそ分けの定番!愛されるからこそ種類も豊富
屋台骨がある宮崎市卸売市場。宮崎とんこつラーメンで有名な本店以外にも、宮崎餃子中心の店舗、生餃子を製造する直売所、製麺所など屋台骨の施設が点在

宮崎餃子はおすそ分けの定番!愛されるからこそ種類も豊富

「え? 宮崎餃子の定義ですか? 実は厳密なものはまだありません(笑)」と赤裸々に語るのは、宮崎市ぎょうざ協議会の会長であり、宮崎の人気ラーメン店「屋台骨」で働く渡辺愛香さん。「お店によって皮の厚さはさまざま、野菜などを練り込んだカラフルな餃子も評判です。辛いスープに入れた水餃子があったり、チーズフォンデュのような焼き餃子があったり。どのスーパーに行っても県内産の生餃子が5種類は並んでいるほど、本当にバラエティ豊かだと思います」。そんな多様に進化し続ける宮崎餃子の背景にあると言うのが“おすそ分け”の文化。自分が餃子を食べる際には、親兄弟やご近所さんといった親しい相手にも手土産として渡す習慣が根付いているそうです。自然と餃子激戦区となった宮崎市は、総務省の統計により2020年上半期の支出金額と購入頻度で日本一だったことが判明。宇都宮市や浜松市などに並ぶ、新しい“餃子のまち”として、大きな注目を集めることになりました。

気づけば家業になっていた!?ゼロから築いた餃子屋さん
気づけば家業になっていた!?ゼロから築いた餃子屋さん
気づけば家業になっていた!?ゼロから築いた餃子屋さん
自社だけでなく他社ブランドの宮崎餃子も数多く手掛ける屋台骨。1日2万個以上の餃子を作る製造所にて早朝からパック詰め作業を行う渡辺さん。忙しい合間を縫って県内各地にある生産者の元へも足を運んでいます

豊かな海の象徴的な存在 海上でしか味わえない贅沢

「一昔前まで、市内で餃子を生産するお店はほとんどありませんでした。そんななか父がいきなり餃子屋をはじめると言い出したんです。今から25年ほど前、まだ私は中学生だったこともあり、非常に複雑な心境でした(笑)」。手探りながら「アピールの生ギョウザ」として創業。元々、精肉卸をしてたお父さまの手腕もあり、ラーメン店などに生餃子を卸す会社として経営は軌道に乗ったと言います。やがて娘の渡辺さんも経理として働きはじめますが……「7年前、父が体調を崩して廃業することになりました。従業員の行き先確保に四苦八苦していたとき『ラーメンと餃子で宮崎を盛り上げたい』と事業を引き継いでくれたのが屋台骨の代表です」。幼い2人の子育てで多忙だった渡辺さんですが、パートタイムで「1年ぐらい恩返しをしてから辞めよう」と屋台骨を手伝うことに。赤字続きの餃子事業を盛り上げようと奮闘するうち、統括マネージャーに抜擢。そこから餃子に情熱を注ぐ多くの料理人、そして地元の生産者たちと絆を深めていくことになります。

厳選食材が織りなすハーモニーと味を求めた結果の栄養バランス!

厳選食材が織りなすハーモニーと味を求めた結果の栄養バランス!

皮はカリッと香ばしく、餡はふっくら、肉汁もたっぷり。キャベツの優しい甘さが広がるうえに、ニンニクやニラも力強く香ります。「以前までの餃子は、県内産以外の食材が混じることもあって、断腸の思いで仕入先を一新しました。質の高い地元の新鮮素材だからこそ、シンプルな調味料だけで美味しく焼き上がるんです」。県内各所をめぐって契約農家中心の安定した仕入れルートを築き、現在の味にまで仕上げたという渡辺さん。お客さんからの意見を参考に肉と野菜の配分にも改良を加えた結果、自然と栄養のバランスも整ったと言います。「後になって調べてみると、PFCバランスも厚生労働省が推奨する理想的な数値になっていました」。三大栄養素であるタンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)が黄金比という屋台骨の餃子。味わい深いうえにヘルシー、さらには3個100円という価格にも驚かされます。

厳選食材が織りなすハーモニーと味を求めた結果の栄養バランス!
揚げるように焼き上げる絶妙な火加減を誰でも再現できるように専用の調理器具も導入。製造所で作られた餃子は県内100店舗以上のスーパーにも並ぶそう
経営者じゃなくても問題なし!宮崎と餃子を盛り上げる新しい活動
はじめは渡辺さんも不安で一杯だったという餃子イベントの開催。初回3日で2万5000人という来客数に地域の関心の高さがうかがえます

経営者じゃなくても問題なし!宮崎と餃子を盛り上げる新しい活動

「忙しくも楽しく働いていますよ」と微笑む渡辺さんですが、聞けば聞くほど本当に多忙。餃子の仕込みからはじまり、スーパー関連のバイヤーと交渉をしたり、各支店をめぐり事務作業をしたり。毎月3日に制定した「餃子の日」のイベント準備、餃子マップの作成など、宮崎市ぎょうざ協議会の会長としての役目も山積みです。「暗い話題が多かった昨年『2020年上半期、宮崎市が餃子で日本一』という明るいニュースに、いても立っていられなくなりました。私は経営者ではありませんが、それでもポジティブに、できることを続けてきたんです」。渡辺さんが発起人となり11社からスタートした協議会。正式な発足時には18社となり、現在は35社にまで広がりました。「新しい観光資源としてだけでなく、宮崎の食材をいっぱい使って、より美味しく、生産者の皆さまにも喜んでいただけるように活動の輪を広げていきたいです」。大きな盛り上がりを見せつつある “餃子のまち”宮崎。地域が一丸となることで、これまで以上に多種多様な餃子も誕生しそうです。

「忙しくも楽しく働いていますよ」と微笑む渡辺さん
周りは経験も知識も豊富な方々ばかり。皆さまの助けがあって何とか協議会の形にすることができました
屋台骨 本店

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屋台骨 本店(元祖 屋台骨、製麺所、生餃子製造直売所)

住所/〒880-0834 宮崎県宮崎市新別府町雀田1185中央卸売市場内
電話/0985-28-2945
定休日/日曜日、祝日
営業時間/10:30~14:00(L.O.13:50)、生餃子製造直売所8:00〜15:00
アクセス/JR各線 宮崎駅から徒歩約30分
駐車場/30台

時代の先を行く高鍋町の餃子

時代の先を行く高鍋町の餃子

宮崎県全域の餃子カルチャーに多大なる影響を与えている高鍋町。
九州でも有数のキャベツの産地で、その素材を活かした餃子づくりの歴史は40年以上。
人口2万人ほどの町ながら、オリジナルの餃子を作るお店は20店舗近くあり、
そこでは数々の斬新なメニューも誕生しています!

ベーカリーCafe風々々
焼き餃子ぱん294円(焼き立ては土日限定の商品です。※冷凍商品は常時販売中)

驚くほどの軽やかさカフェならではの洗練された餃子パン

北海道産小麦を4 品種ほどブレンドすることで、無添加ながらモチモチに仕上げたパンが評判。「この町では皆が餃子を食べて育ちました。カフェにも餃子があって当たり前なんです」と店主の石田卓也さんが話す通り、名物は餃子の形をしたパンです。こちらは石田さんが「兄のように慕っている」という地元の老舗「餃子の馬渡」の3代目と共同開発したもの。ふっくら柔らかなパン生地と、その境目が分からないほど一体感のある餃子の餡には驚かされるばかり。見た目の印象とは異なり、非常に軽やかな味わいで朝食やティータイムにも最適。餃子らしさをアップさせるなら、特製のタレをつけて楽しみましょう。

[DATA]
ベーカリーCafe風々々

住所/〒884-0002宮崎県児湯郡高鍋町北高鍋998-1
電話/0983-32-0141
定休日/水曜
営業時間/8:00~15:00
アクセス/JR日豊本線 高鍋駅から徒歩約30分
駐車場/15台

ベーカリーCafe風々々
サンドイッチやクロワッサンなど定番メニューも豊富
ベーカリーCafe風々々
おとぎ話に登場するような可愛らしい外観
たかなべギョーザ
大えび揚げギョーザ540円
たかなべギョーザ
ゆでギョーザのおろしポン酢420円

卓越したアイディアが光る!餃子のまちの人気を二分する老舗

1971年の創業以来、目新しい餃子の開発に余念がない老舗。たとえば初代が考案した大えび揚げギョーザは、カリっと揚がった皮、とろけるような餡により、大えびの存在感が見事に引き立てられています。そうした豊かな発想力を受け継いでいるのが、2代目である武末哲治さん。約10年前に考案したという大根おろしたっぷりの水餃子は、夏にぴったりの爽やかな食べ心地です。高鍋町産ひまわりキャベツを使用した柔らかな餡が、0.6mmという薄さながらコシの強い皮を強調するのも魅力。より刺激がほしいときには八角、花椒、陳皮などを効かせた特製の自家製ラー油をどうぞ!

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たかなべギョーザ

住所/〒884-0001 宮崎県児湯郡高鍋町657
電話/0983-22-2531
定休日/月曜
営業時間/16:30~22:00
アクセス/JR日豊本線 高鍋駅から徒歩約30分
駐車場/20台

たかなべギョーザ
武末さんが腕を振るう中華料理も人気
たかなべギョーザ
餃子メニューだけで10種以上、お持ち帰りも可
餃子の馬渡
手羽餃子(1本)240円

もっちりパリッと旨みを凝縮する親子3代続く伝統の味

創業1967年、高鍋町を代表する人気店で「幼い頃から大好きでした」と主任の藤元義之さんも伝統の餃子について熱く語ってくれました。「この町では家族や友だちの間で“どの店の餃子が好みか”派閥みたいなものがありました。もちろん私は馬渡派です(笑)」。少し厚めのもっちりとした皮に使用しているのは、九州産と北海道産をブレンドした国産小麦粉。南九州産の豚腹脂を自社精製したラードを使って揚げ焼きにした餃子は、定番にして画期的な味わいです。鶏肉、豚肉、牛肉の旨みを180℃の高温で一気に閉じ込めた手羽餃子なども人気。長きに渡り、子どもから大人まで愛され続けるのも納得の美味しさ。

餃子の馬渡
焼餃子(8個)450円

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餃子の馬渡

住所/〒884-0002 宮崎県児湯郡高鍋町北高鍋洗井5180
電話/0983-22-3251
定休日/火曜
営業時間/16:00~21:00
アクセス/JR日豊本線 高鍋駅から徒歩約30分
駐車場/15台

餃子の馬渡
創業者から受け継がれる製法を間近で楽しめるカウンター
餃子の馬渡
店頭パネルは3代目社長の娘さん、文字通り看板娘