俳優 金子大地
Special Interview
“日本でも、海外でも、
自分の知らない世界に
どんどん踏み込んでみたい”
主演映画『猿楽町で会いましょう』で
東京に生きる若者を演じる金子大地さん。
映画のモチーフにしたいあの街や
冒険心をかき立てられた映画とは?
取材・文/小林未亜(エンターバンク)
撮影/山下陽子
ヘアメイク/Taro Yoshida(W)
スタイリング/千葉潤也
衣装協力:シャツ¥17,600 パンツ¥13,200
(共にMAISON SPECIAL/
MAISON SPECIAL AOYAMA TEL 03-6451-1660)

映画『猿楽町で会いましょう』は、都会に生きる男女の性愛や葛藤がリアルで、見た後にざわっとした感情が残りました。金子さんは、この作品をどんな風に感じましたか?

見る人によって感じ方が違う映画なのではないかと思いました。人によっては「二度と見たくない」という意見もあったり、そういうのも含めて全部うれしいです。それほど何か強く印象に残ったということだと思うので。

映画初主演ということに対して、特別な思いなどはありましたか?

まだまだ未完成の僕で決断して下さった(監督の)児山さんに感謝ですね。

児山監督が金子さんに出演をお願いした理由はお聞きになりましたか?

小山田という役が決まる前に面談があったんですが、会って30秒ぐらいで「お願いします」と言われたんです。セリフを読む気満々で準備していったのに、まったく読まず。何が決定的な理由だったのかはわからないんですが、今まで僕が出演させていただいた作品の印象とは全然違う僕がそこにいたらしくて。それが決め手になったと聞きました。

今回演じられた小山田という役について、どんな印象を持ちましたか?

本当にまっすぐで純粋で、まだ途中というか、駆け出し中の男というか。未完成で余裕がなくて、20代前半の東京で戦っている若者という感じがして、好きです。

演じるにあたって、気持ち的な面やカメラの技術など、準備されたことはありますか?

カメラマンの役なんですが、カメラの知識や扱い方をまったく知らなかったので、クランクインする前に監督からカメラを借りて、扱い方を教えていただいて、時間がある時に散歩しながら撮ったりしました。あと役作りに関しては、「とにかく格好悪くいてくれ」と言われたので、格好悪い部分だったりダサい部分だったり、自分の恥ずかしい姿を全部さらけだしました。

自分との共通点や共感できる部分はありましたか?

この役をいただいた時も、仕事が立て続けにあるわけではなかったですし、ついこの間まで、まったく仕事がない時期もありました。ホームシックもありましたし、すごく未完成で未熟で余裕がなかったので、その時の孤独感とかそういう感情を自分の中から出してきたような覚えはあります。

小山田が惹かれるユカについてですが、見た直後はあまりいい印象を持てませんでした。でもだんだん、こういう子がいてもいいのかなという気持ちになってきて。

不思議ですよね。小山田の方がかわいそうなんです、絶対! だけど、不思議とユカがかわいそうに見えてくるような映画なんです。さみしい人、かなしい人に見えるというか。それはユカの魅力というか、この作品の魅力なのかなと思います。

小山田はユカのどこに惹かれたんだと思いますか?

たぶん、小山田はあの時、誰に言い寄られても好きになっていたと思うんです。出会ったのがたまたまユカだっただけで、別にそこまで好きでもなかったと思うんです。暇、孤独、そういう部分の穴埋めをしたかったのではないかなと。でも、ふたを開けてみたらあんな女の子だったから、余計にはまって。仕事も順調ではないから依存してしまって、とにかく余裕がなかったからこそ、ユカが魅力的に見えたのではないかなと思います。

『猿楽町で会いましょう』というタイトルも印象的ですが、なぜ猿楽町だったのか、監督などに聞きましたか?

響きがいいからと聞きました。「なになにで会いましょう」がいいと思っていたらしくて、一番よかったのが『猿楽町で会いましょう』。それで決めたみたいです。

意外な理由でした。今回の猿楽町のように、ある街をモチーフにした作品に出るとして、どこだったらいいなと思いますか?

地元ですかね。「○○(ある地名)で会いましょう」とか。地元すぎるのも嫌ですね(笑)。北海道! 「北海道で会いましょう」。でも、(両手で北海道の地形をかたどって)「どこよ!?」ってなりそうなので「新千歳空港で会いましょう」にします。

会えそうですね。地元である北海道の魅力はどこだと感じますか?

自然が多くて空気がきれいですが、特に何というのはないんです。育った場所だから好きなんだと思います。

ここからは旅の話をお聞きしたいと思います。旅に行きたくなるような映画というと、何か思いつきますか?

いっぱいありますが、『魔女の宅急便』はサントラを聞いただけで、電車に乗って海が見える街に行きたくなります。バイクの免許は持ってないですが『イージー・ライダー』を見て「バイクでアメリカを走りたい!」と思いますし。『スタンド・バイ・ミー』もいいですね。そういえば、小学生の時『ロード・オブ・ザ・リング』にものすごく影響されて、本気で家出したことがあります。実家から見える山があるんですが、「あれを目指して行こう」と。カバンにいろんな食べ物を入れて『帰らないから』と言って。でも冬だったので、すぐ帰ってきました。とてつもなく意志が弱かったですね(笑)。

かわいいです。山に行って何をしようと思ったんですか?

わからないです。何も目的はないんですが、とにかくあのゴールに到達したい、というような気持ちだったのではないかと思います。

無事でよかったです。大人になってから旅行はよくされますか?

あまりしないですね。行きたいとは思うんですが、なかなか行けなくて。でも今、ものすごく行きたいです。特に海外は行ったことがないので、行ってみたいです。18年間ずっと北海道で育って、事務所のオーディションで初めて東京に来たんですが、その時のカルチャーショックがすごかったんです。東京に来てすごく視野が広がったので、海外に行ったらまた自分が成長できるんじゃないかと思って。なので自分の知らない世界にどんどん踏み込んでみたい、という気持ちはありますね。北海道から東京に来ただけでこんなに変われるのであれば、海外に行ったら、もっと変われるんじゃないかなと(笑)。一応パスポートは持っているので、いつでも行く準備は出来ています。

特に行きたい国はどこでしょう。

フランスに行ってみたいですね。ロシアは舞台がすごいらしいので観てみたいです。あとロンドン、アメリカ、ハワイ……どこでもいいので知らない世界に行ってみたいです。本当はこの映画でイタリアの映画祭に行けることが決まっていたので、「やっと海外に行ける!」と思ったのですが、コロナで行けなくなってしまって残念でした。

お仕事などで国内はいろいろな場所に行っていると思いますが、印象的だった場所はありましたか?

京都はやっぱり最高だなと思いました。また、この映画のおかげでいろんなところに行けました。去年のくまもと復興映画祭で行った熊本は楽しかったです。馬刺しやお刺身、食べたものが全部おいしかったです。

これから旅をするなら、どんな旅がいいですか? ひとり旅とか友達と一緒にとか。

ひとり旅はしたことがないですが、いろんなことが整理できる気がするので、いつかしてみたいです。一人で好きな音楽を聴きながらぼーっとしたりするのも、いいですね。

初めての海外、初めてのひとり旅のお話、いつかお聞きしたいです。ありがとうございました。

金子大地さんが旅に行きたくなる映画

『魔女の宅急便』

『魔女の宅急便』

Blu-ray7,480円/DVD2枚組5,170円 発売中
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン

宮崎駿がプロデューサー・脚本・監督を務めた、1989年公開のスタジオジブリ作品。一人前の魔女になる修業のため、黒猫ジジとともに海辺の街コリコにやって来た13歳の魔女の子キキが、人々とのふれあいの中で成長していく姿を描く。
『ロード・オブ・ザ・リング』

『ロード・オブ・ザ・リング』

デジタル配信中 Blu-ray2,619円/DVD1,572円 発売中
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

世界を滅ぼす魔力を秘めた指輪を手にしたホビット族の青年・フロドが、仲間とともに指輪を滅びの山へと運ぶ旅に出るファンタジー大作。『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』へと続く全三部作。
THE LORD OF THE RINGS: THE FELLOWSHIP OF THE RING and the Names of the Characters, Events and Places Therein Are Trademarks of the Saul Zaentz Company d/b/a Middle-earth Enterprises (“SZC”) Under License to New Line Productions, Inc. The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring © 2001, 2012 New Line Productions, Inc. Package Design & Supplementary Material Compilation © 2014 New Line Productions, Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.
INFORMATION
『猿楽町で会いましょう』

『猿楽町で会いましょう』

2021年6月4日(金)より渋谷ホワイトシネクイント、
シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

金子大地と石川瑠華のW主演で、都会に生きる男女の性愛を描いたラブストーリー。駆け出しのカメラマン・小山田修司(金子大地)は、撮影がきっかけで読者モデルの田中ユカ(石川瑠華)に出会い、その写真が評価されたことで、彼女をかけがえのない存在に感じていく。次第に2人は関係を深めるが、ユカの言葉には、小山田の知らない数々の嘘が隠されていた。

監督:児山隆
出演:金子大地、石川瑠華、栁俊太郎、小西桜子、長友郁真、大窪人衛、呉城久美、岩瀬亮、前野健太ほか
配給:ラビットハウス

Profile
金子大地
金子大地Daichi Kaneko

1996年9月26日生まれ、北海道出身。「アミューズオーディションフェス2014」にて俳優・モデル部門を受賞しデビュー。2018年のドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日)、初主演ドラマ『腐女子、うっかりゲイに告る。』(2019年/NHK)で注目を集める。近年の出演作品は、映画『殺さない彼と死なない彼女』(2019年)、『君が世界のはじまり』(2020年)、舞台『ザ・空気ver.3そして彼は去った…』、『パンドラの鐘』(2021年)など。映画『サマーフィルムにのって』(8月6日公開予定)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(9月10日公開予定)が待機中。2022年はNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』が控える。

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