浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。奔放な宿泊体験を切り取る写真連載。第25回は、町全体が館内のような宿。スリッパでのご移動はご遠慮ください。
写真家 浅田政志の宿旅
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宿、まちック天国

Vol.25「NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町」三重県伊賀市

フロントやレストランのあるKANMURI棟(フロント棟)には客室が3室、そして歩いて5分ほど離れたところには、客室だけのKOURAI棟があります。KOURAI棟に泊まる場合は、KANMURI棟でチェックインしてから移動。つまり、この町並みも宿といえます。
花言葉は「楽天家」
通りに面したKANMURI棟は、江戸時代には生薬問屋、その後、
料亭旅館、伊賀市管轄の学習施設となった建物。
趣はそのままで、庭にはザボンの木が1本。ザボンの花言葉は「楽天家」。
確かに、泊まるだけで気分が晴れやかになります。
のれんに足だけ
KOURAI棟は入口ののれんをくぐればすぐ街道ですが、フロント棟への廊下でもあります。公道なのに外に出た実感がないことを、ここでは「のれんに足だけ」と言うそうな(うそです)。
見どころは自分次第
伊賀市の名物は、伊賀城、忍者、伊賀酒、その他いろいろ。
とはいえ、必ず行くべき場所、しなくてはいけないことはありません。
ただゆったり過ごせばいいだけ。町を歩くと伊賀の暮らしに心が動きます。
寄り道し放題
のんびり過ごせる分、寄り道もし放題。支配人・林さんのおすすめは和菓子の「いせや」さんのみたらし団子。また、水ようかんのようにさっぱり、けれどむっちりとした弾力ある名物「でっち羊羹」は宿のウェルカムスイーツにもなっています。
選抜メンバー揃い踏み
伊賀は良質の伊賀米と特有の気候により、銘酒の多い酒どころ。
レストラン「LE UN(ルアン)」では、伊賀市にある7つの酒造などから、
季節にあわせて常時7種類ほどのお酒を選抜しています。お酒で四季を感じられます。
忍び寄るうまさ
できるだけ伊賀の食材を使った、地産地消のお料理。ベースはフレンチながら、伊賀の味噌やお醤油を使っています。「伊賀のお酒にも合います」と伊賀愛あふれる、シェフの高橋さんの料理は季節ごとに変わります。食べ逃がさないで!
からくりはございません
客室は古民家などを利用しつつ、リノベされた趣あるつくり。
KOURAI棟には蔵をベースにした客室も。忍者が出てきそうな雰囲気もありますが、
ここには忍びもからくりもありませんので、ごゆるりと。
旅人と我名よばれん初時雨
伊賀市は、俳聖・松尾芭蕉の生誕の地です。芭蕉が「道中で“旅のお人よ”と呼ばれる身に早くなりたいものだ」と詠んだように、何者になるでもなく、何気ない旅ができます。芭蕉にだってなれます。

NIPPONIA HOTEL 伊賀上野 城下町

城下町の歴史的なまちなみを未来に遺していく試みとして、「まち=ホテル」をコンセプトにした宿。伊賀市と協力し、フロント棟と宿泊棟を分けるなど、滞在を通してまちを楽しめる工夫がたくさん。とくに何をするでもなく、ゆっくりまちに溶け込んでいく時間にリラックスできます。散歩を楽しんだら、伊賀の恵みを堪能できるディナーと伊賀酒を。日常の続きのようでいて、移住したかのような不思議な宿泊体験ができるはずです。

住所 / 三重県伊賀市上野相生町2842
電話 / 0120-210-289(VMG HOTELS & UNIQUE VENUES 総合窓口)
料金 / 29,040円~(2名1室、1泊2食付き)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2020年、『浅田家!』として映画化された。著書に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。最新作は『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)。また、国内外で個展やグループ展を精力的に開催している。
http://www.asadamasashi.com/