「あれ食べに行こう」からはじまる旅 タベサキ

世界に類のない観光船でここだけの 分かち合う漁業 を味わう
日本海全体にいる約800種のうち、なんと500種が生息しているほど富山湾は”天然のいけす”とまで呼ばれる海の幸の宝庫です。そこで伝統漁業の新しい価値を探っているのが、富山湾しろえび倶楽部。地元の若手漁師たちが提案する、サステナブルでグルメな新しい体験をご紹介!文、写真 : 佐藤 潮. (effect)
漁船に乗り込み、いざ実食!?宝石のように輝く“幻のえび”
見た目が白い、その名もずばり“白えび”は世界的に珍しい品種。
じつは本来、深海に住む無色透明の生き物です。
その美しい姿を拝めるのは水揚げ直後のほんのわずかな時間だけ。それを生で食べられます
山盛りの白えびが奏でる上質な旨みのハーモニー
富山湾の新湊漁港にある「きときと食堂」の名物、
白えび丼2,100円(みそ汁、つけもの付き)。
上品でありながら力強い旨みにあふれ、イクラと食べ合わせても個性が際立つ
タベサキ「サステナブルな富山のグルメ体験」
初代の茶道楽から始まった問屋としての輝かしい歴史
朝5時に出港した正㐂丸(ショウキマル)が、夜明け前の青白い光に照らされながら向かったのは、沖合3kmほどにある漁場。雲の切れ間からオレンジ色の光が差し込み、立山連峰の神々しい姿が浮かび上がるころ、投網作業がはじまりました
笑い声に包まれる船上から富山湾の雄大な景色を堪能

笑い声に包まれる船上から富山湾の雄大な景色を堪能

「漁師の仕事は完全歩合制です。ライバルより多く獲れば、その分だけ儲かります。稼ぎが少ないときは妻の機嫌も悪くなって……(笑)」と、軽妙な語り口で観光ガイドをするのは、漁師歴16年の滝和紀さん。「競い合ってばかりでは、いつか資源が枯渇するかもしれません。そこで新湊の白えび漁船は1日交代のチーム制で、利益を平等に分け合いながら漁をしているんです」と話します。かきいれどきに漁船を観光船として活用できるのも、そうした新湊に根付く文化があればこそ。

豊かな海の象徴的な存在 海上でしか味わえない贅沢
豊かな海の象徴的な存在 海上でしか味わえない贅沢
船内の電子レンジで火を通したものと食べ比べるなど、非常に貴重な体験も

豊かな海の象徴的な存在 海上でしか味わえない贅沢

豊かな海の象徴的な存在 海上でしか味わえない贅沢

「現在の海の深さは水深約320mで東京タワーが沈むくらい。岸から15分ほどの距離で、ここまで急激に深くなる湾は世界的にも稀なんです」と滝さん。白えびが生息しているのも水深200〜300mの深海と言われています。群れを狙うのが非常に難しく、漁として確立できている船は新湊漁港の8隻と、お隣にある岩瀬漁港の6隻だけ。全国に14隻しか存在していません。「群れがどう動くのか予測しながら、深海に沈めた網を約30分かけて船で引くのが船長の腕の見せどころ」なのだとか。今回の投網の結果は……見事に成功のようです! 空が透けてみえるほど透明で美しい白えび。“富山湾の宝石”と称されているのも納得でした。「ぜひ殻ごと生で、世界一の旨みを楽しんでください」と滝さんが豪語するだけあり、海水による塩気だけでもしっかりと濃い味が。

富山湾しろえび倶楽部が観光船で新しい価値を提案
鮮度保持のために、水揚げ後すぐに実施される白エビのセリの様子

富山湾しろえび倶楽部が観光船で新しい価値を提案

正㐂丸船長 野口和宏さん

観光船が新湊漁港に戻った直後にはじまったのが、仲買人による競り。「ほかの魚介類の競りは1日2回、決まった時間に行われますが、鮮度の保持が難しい白えびは違います。仲買人が港に待ち構えており、水揚げの度に競りが行われるのです」と教えてくれたのは、先ほどまで観光船を運転していた船長の野口和宏さん。富山湾しろえび倶楽部の発起人のひとりでもあります。「新湊の漁師が利益や知識を共有する文化は、父親たちの世代からはじまりました。でも漁師って口下手な人ばかりだから、上手に発信ができていなかったんです」と、プロジェクトをはじめたきっかけを話します。その目的は観光船の運行やイベントの出演などを通じて“持続可能な漁業”を世の中に発信し、白えびの価値を高めること。その狙い通り、発足から1年足らずで農林水産省、消費者庁、環境省が連携で主催する「サステナアワード 2020年」で大賞を受賞するなど、大きな注目を集める取り組みに発展しています。

栄勢丸船長 縄井 恒さん

「観光船を楽しんだ後は、漁港内にある食堂で朝食を食べてはいかがでしょう?」と提案してくれたのは、先ほどまで漁をしていた富山湾しろえび倶楽部の発起人のひとり、栄勢丸(エイセイマル)船長の縄井恒さんです。オススメの「きときと食堂」は、漁港内で85年以上も魚介類を卸してきた鮮魚店が運営しており、美味しい魚を仕入れる目利きは折り紙付き。ちなみに「きときと」とは富山弁で「新鮮な」という意味です。まずは富山湾の特産品ベニズワイガニと白えびの夢の共演が堪能できる、紅白丼1,700円(みそ汁、つけもの付き)をいただきました。むき身の白えびは、とろけるような食感。肉厚で食べごたえのあるカニとの対比がたまりません。9時以降の限定メニューとしては、白エビクリームコロッケ定食850円(ごはん、みそ汁、つけもの、おかず2品つき)も魅力的。頭から尻尾まで白えびを使っており、香ばしくて食感豊か。市内各地の飲食店でも、それぞれ独自の白エビクリームコロッケ料理が楽しめるそうなので、ぜひ食べ歩いてみてください。

漁港で白えびを食べるならきときと=新鮮な食堂へ

きときと食堂
紅白丼1,700円
きときと食堂
きときと食堂
白エビクリームコロッケ定食850円

[DATA]
しろえび倶楽部 事務局

住所/〒934-0025 富山県射水市八幡町1-1100 新湊漁業協同組合内
電話/0766-82-7707(完全予約制、受付は月、火、木、金の9:00〜15:00)
定休日/水曜、日曜(土曜は不定休)
※2021年の白えび漁観光船運航実施期間は10月29日(金)までを予定
観光船の乗船時間/4:30〜7:30頃
料金/大人5,000円、小・中学生3,000円
観光船乗船口までのアクセス/万葉線新湊港線 東新湊駅から徒歩9分
駐車場/約150台

しろえび倶楽部 事務局
きときと食堂

[DATA]
きときと食堂

住所/〒934-0025 富山県射水市八幡町1-1100
電話/0766-54-0310
定休日/水曜
営業時間/5:30~14:30(LO14:00)
アクセス/万葉線新湊港線 東新湊駅から徒歩5分
駐車場/約150台

白えびの土産物ならご当地グルメも盛りだくさん 新湊の漁師が誇る道の駅

「白えびを使ったお土産の数なら県内ナンバーワン!」と新湊の漁師さんたちが教えてくれた道の駅。
富山県で1番ということは、つまり世界一ということ。
今回は所狭しと並ぶ大量の白えび商品から美味しそうなものを厳選してみました!

希少価値の高い白えびが驚くほど身近に感じられる場所

道の駅カモンパーク新湊
富山県でしか漁が確立されておらず、本来は高級品である白えび。しかし「道の駅カモンパーク新湊」には、その前提を覆すほど白えび商品があふれています。バックアップをしているのは、新湊の漁師さんたち。近畿大学水産研究所と共同で深海の環境を人工的に作り出し、世界ではじめて生きた白えびの展示にも成功しています。富山湾を代表する魚たちが優雅に泳ぐ巨大水槽もあり、白えびグルメの数だけでなく、雄大な海中に思いを馳せることができる観光スポットとしても評判です。
越中高岡 伝承蒲鉾 はべん 白えび194円。主役である白えびの味を引き立てる“はべん”とは、富山の方言でかまぼこを意味するそう
越中富山 幸のこわけ しろえび姿干し702円。独自の乾燥技術で白えびの旨みを凝縮。ごはんのおかずにも酒のつまみにも良し
白えび素麺432円。白えびを練り込んだ麺は香り豊か。別売りの白えびつゆを絡めていただけば、さらに白えび感パワーアップ
特選 新湊名産 しろえび 200g1,270円。冷凍のため長期保存可。かき揚げやお好み焼きの具材に最適。見た目もインパクトあり
黒部名水 しろえびカレー572円。北アルプスの伏流水を使用。揚げ白えびが具材です。丸2日煮込んでおり深いコクも楽しめます

旨みと香りが口いっぱいに広がる定番グルメも白えびで大変身

白エビバーガー
白エビバーガー420円。白えびのかき揚げはサクサク食感。自家製タルタルソースの程よい酸味が味の決め手になっています
富山県でしか漁が確立されておらず、本来は高級品である白えび。しかし「道の駅カモンパーク新湊」には、その前提を覆すほど白えび商品があふれています。バックアップをしているのは、新湊の漁師さんたち。近畿大学水産研究所と共同で深海の環境を人工的に作り出し、世界ではじめて生きた白えびの展示にも成功しています。富山湾を代表する魚たちが優雅に泳ぐ巨大水槽もあり、白えびグルメの数だけでなく、雄大な海中に思いを馳せることができる観光スポットとしても評判です。
白エビしょうゆラーメン
白エビしょうゆラーメン550円。白えびが練り込まれたオリジナル麺の風味が面白い。あっさり系のスープとも相性抜群です

道の駅 カモンパーク新湊
住所/〒934-0049 富山県射水市鏡宮296
電話/0766-83-0111
定休日/無休
営業時間/物産コーナー・新湊食堂 8:00〜21:00、レストラン 11:00〜17:00(LO16:00)、ファストフードコーナー 11:00〜16:00(木曜定休)
アクセス/万葉線新湊港線 東新湊駅から徒歩40分
駐車場/161台(普通車)

道の駅カモンパーク新湊
白エビ天むす
白エビ天むす(2個入り)220円。少食な方でも食べやすい。可愛らしい一口サイズでも白えびの風味がしっかりと広がります