浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。鮮烈な宿泊体験を切り取る写真連載。第24回は、アート作品のような宿。なにかを生み出さずにはいられません。
写真家 浅田政志の宿旅
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「思索」の庭

Vol.24「アートビオトープ」栃木県那須町

「アートビオトープ」は長期滞在にも適したカルチャーリゾート。敷地内の至るところにアート作品が並びます。なかでも目を引くのは、建築家の石上純也さんが手がけた「水庭」。ゆったり散策すれば、自分の内面に向き合う「内省」の時間が始まります。
表札
入口近くに流れる小川には、頑強な石橋がかかっています。この石はホテル建設中に掘り出されたもの。そんな石橋に掲げられたホテルのロゴには、アートなサビが施されています。
文化系も体育会系も。
ギャラリーカフェのエントランスには、トルストイ、向田邦子、谷川俊太郎など
ジャンルも時代もさまざまな本が並びます。
その一角には、スポーツサイクルも。自分好みの時間を過ごして感性を研ぎ澄ませます。
アートな壁
長期滞在にも適した客室、レジデンスのロビーの壁面には、アートビオトープの文化顧問であり、
武蔵野美術大学の教授でもある新見隆先生の作品があります。
アーティストデビュー、できます。
「アートビオトープ」には本格的なガラス・陶芸スタジオがあります。ガラス体験は、自分好みの色や形のグラスや一輪挿しが作れます(吹きガラス体験4,000円~)。指導してくれる、ガラス作家の工藤さん曰く「創作はつくりたいものをイメージするところから始まる」。作ったものはゆっくりと冷ます時間が必要で、翌日の10:00以降に受け取れます。
自分だけのアトリエ、点在
2020年にできた、完全独立型のヴィラは、同じつくりの部屋ながら飾られているアート作品がそれぞれ異なります。
つまり客室はギャラリーであり、アトリエでもあります。創作意欲が刺激されれば誰もがアーティストに。
話し相手、自分。
スイートヴィラは壁一面が外れるように窓を開くことができます。BGMは木々のさざめきと、鳥のさえずり。さあ、己に向き合う時間の始まりです。内省が終わったら、テラスの格子戸の奥にあるバスルームへ。こちらも窓と壁面を完全に開放することができ、半露天風呂になります。ここで飲むお酒がおいしいことはわかっています。

ドゥリムトンヴィレッジ

本格的なガラス・陶芸スタジオのあるレジデンス棟、水庭、全14棟15室のスイートヴィラ、レストランμ(ミュー)からなるアートビオトープは、滞在を通して人間性を磨く文化リゾートとして独特の存在感を放っています。レストランμは、宿の40km圏内で生産された食材を活用する「25マイルフード」の考えを基にしたアートフードを提供し、権威あるレストランガイドブックにも掲載されるなど注目を集めています。滞在することで、よりよい自分を作れる。ここでは誰もがアーティストになれるんです。

住所 / 栃木県那須郡那須町高久乙道上2294-3
電話 / 0287-74-3200(VILLA)
料金 / 60,000円~(2名1室、1泊2食付き)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2020年、『浅田家!』として映画化された。著書に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。最新作は『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)。また、国内外で個展やグループ展を精力的に開催している。
http://www.asadamasashi.com/