主演映画『大綱引の恋』について、オファーを受けた時の気持ちを教えてください。
佐々部監督の作品は、家族のことを描いているものや、静かな作品が多いので、僕はすごく好きなんです。だからお話をいただいた時は、佐々部監督の作品に出られることが非常にうれしくて。脚本自体も佐々部監督らしい温かいストーリーだったので、出演するのが楽しみでしたね。
佐々部監督の作品に初めて出演されて、監督から受けた演出やかけられた言葉で印象的だったものはありますか?
今回、佐々部監督に初めてお会いしていろんな話をしたんですが、佐々部監督の人柄や現場の作り方が、本当に一つの家族のようなんですよね。そういう監督だからこそ、こういう作品を今まで作っていらっしゃったんだなと思いました。
監督とお話ししている中で、「貴大、映画は準備なんだよ」とおっしゃっていて。「現場だけじゃなくて、それ以前にどれだけ準備をしたかでいい映画が撮れるか撮れないかが決まるんだよ」と。それは役者単体にも言えるし、その前の、脚本や撮影の前段階の話とか、いろんなことにつながってくるなと思って、すごく勉強になりましたね。
佐々部監督にとって最後の作品になってしまいましたが、どんな思いでいらっしゃいますか?
これが遺作という形になってしまって本当に残念ですけど、遺作ということは抜きにして、映画を映画として広めていければいいんじゃないかな、佐々部監督もきっとそう思っているんじゃないかな、と思います。今まで通りというか、一本の映画として、しっかり、いろんな人に見てもらえるように努力をしていきたいなと思っています。
映画を拝見して、“川内(せんだい)大綱引”のシーンの迫力に驚きました。撮影の雰囲気はいかがでしたか?
すごかったですね。その年の大綱引が終わって1週間後くらいに、大綱引をやっている方たちが改めて集まって、撮影に協力してくれたんです。撮影って、力が入ってそうに見えて力を入れないようにするとか、いろんなところにウソがあるんですけど、みなさん本気の方たちなので、実際に大綱引に参加しているような錯覚に陥るというか……。もうみんな汗だくで、鉄で作った足場とかも折れちゃって。人の力はすごいなと思いました。地元の方たちが愛しているお祭りなんだということもあらためて思いましたし。本番の大綱引は終わったのに、映画のためにもう一回やろうといって協力してくださったのが本当にうれしかったですね。
川内大綱引の中心的な役割を担う“一番太鼓”として、三浦さんが太鼓を叩く姿もかっこよかったです。体力作り、体作りのために何かされましたか?
とにかく太鼓の練習をしていましたね。映画ではそんなに長くないですが、本来一時間とか一時間半とかずっと腕を上げっぱなしなので、相当な体力がいるんです。過去に一番太鼓をやっていた方たちに教えていただいて、かなり練習しましたね。
太鼓だけでなく、劇中、鹿児島弁や韓国語も話されていたことも大変そうだなと思いました。
大変でしたね……。監督も「いやー、貴大ごめんなー」とか言っていましたけど(笑)。地方で撮影するにあたって、その土地の言葉を話すのが一番大変なんですけど、そこに韓国語まで入ってきて、これは一体どうしたらいいんだっていう。だから、監督が「映画は準備だ」と言っているのはそういうところなんでしょうね。
方言は、事前に録音を聞いてたくさん練習しましたけど、いくら聞いても体になじんでこないんですよね。地方に撮影に行くと、だいたい地元の方と飲むことが多いんですけど、現地でそういう方たちとしゃべっていると自然と言葉が体になじんでくる感じがします。韓国語に関しては知英さんに散々ご迷惑をかけつつ教えていただきました。
共演者の方々とはどんな雰囲気だったんですか?
本当にみんな家族みたいでした。佐々部組経験者が多かったので、最初から家族みたいな雰囲気になっているんですよね。(妹役の)比嘉(愛未)さんも、僕のことを前から「にいにい」って呼んでいるから、ずっとお兄ちゃんみたいな感じですし。もう丸ごと家族みたいな感じでしたね。
見ていても家族のような雰囲気が伝わってきました。できあがった作品をご覧になってどんな風に思いましたか?
鹿児島県の川内っていう小さな街で行われているお祭りが題材になっていて、このお祭りがいろんな人の縁をつないでいるっていう話で。僕はやっぱり、佐々部監督が大事にしているのって人の縁だと思うんですよ。それは映画だけじゃなくて、普段の人との接し方とかも監督はすごく素敵な方だったので。そういう監督の人柄が出ていて、いい映画だなと思いました。こういう静かな映画で……まあ大綱引自体は大変暑苦しいお祭りですけど(笑)、その中に人とのつながりが温かく描かれていて、こういう映画が日本は多くていいなと思いましたし、もっと増えてほしいなとも思いましたね。
地元の方は、川内大綱引を継承したいという気持ちも込め、映画を応援されていると思います。去年のように綱引が中止になってしまう状況の中、この映画は励みになりますね。
そうですね。地元の方がこの映画を見て、「祭りってこんな感じだよね」ってモチベーションを失わずに、コロナがおさまったらまた、思いっきりやってくれたらいいですね。子どもたちが本当に楽しみにしているんです。大人になったら絶対この祭りに出るんだとか、太鼓叩くんだとか。一つの文化として絶対に大事なものなので、一つの資料としても、地元にずっと根付いてくれる映画になるといいです。
この映画もあてはまりますが、ここからは三浦さんにとって「旅に行きたくなる映画」をお聞きしたいです。何かありますか?
旅に出たくなるというと、すごく難しいですね……家が大好きなので(笑)。旅の雑誌なのにすみません。でも『イントゥ・ザ・ワイルド』という映画は、旅に出たくなるというか、外に出たくなりますね。人と触れ合うというよりは、一人で自然の中に旅立って行きたいなっていう気持ちはどこかにあるんです。
逆に映画のいいところって、行った気になれるというか。例えば『ローマの休日』を観てローマに行った気になれる、みたいなところが、僕は映画のいいところだと思っています。
映画の楽しみの一つですよね。ちなみに、映画の中で印象的な風景などは思いつきますか?
いま頭に浮かんでくるのは森の中ですね。『ランボー』とか(笑)。ジャングルいいよなあ、ジャングルなかなか行けないもんな、とか思ったり。頭の中がいま、アクション映画ばっかりになっちゃってます。あと、ジャッキー・チェンの初期の作品を見ていると、行った気にはなりますよね。この街はいっぱい色があっていいな、とかは思ったりします。