浅田政志の宿旅

旅の目的は、あの宿に泊まること―。特別な宿泊体験を切り取る写真連載。第23回は、土や石、漆喰、鉄など素材それぞれをテーマにした、12棟のアートなヴィラがある宿へ。
写真家 浅田政志の宿旅
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石の横にも三年

Vol.23「湯の山 素粋居 SOSUIKYO」三重県菰野町

石をテーマにした石砬(せきろう)のリビングには、地元で産出される菰野石(こものいし)がどーんと配されています。存在感のある巨石が部屋のなかにある不思議さ。全体プロデュースを担当した、陶芸家で造形作家の内田鋼一さんの作品のなかにいるようです。
天の岩戸ではありません。扉前の宴会はお控えください
大きな石はアプローチにも。扉に寄り添うようにある巨石は、まるで天の岩戸のよう。つまり、閉じこもりたくなるほど心地よい時間が中にあります。
知る。
それぞれのヴィラには、各棟がテーマにしている素材にまつわる本が並びます。選書はブックディレクターの幅允孝さん。解説本のようなものだけでなく、アートや小説、絵本もあるそうで、実際に読まれる宿泊者も多いそう。
愛でる。
素材について知ったあとは、向き合う時間の始まりです。触ったり、手にとったり。
疲れたら、源泉掛け流しの露天風呂で気分転換を。素材の次は、自分に向き合う時間をどうぞ。
ごちそうも、もとは「素材」
食事は、敷地内に建つ3つのレストランへ。直火料理の「HINOMORI」は、20分ほどじっくり火を通した骨付きの熟成牛がおすすめ。出産を終えた雌牛を使っているため、深い旨味と肉らしい歯応えが魅力です。
先客?
素材との対話は、寝室でもどうぞ。先客かのように、でーんと横たわる石を横目に、袖を通すのは生地から特注で作ったという素粋居オリジナルのパジャマ。柔らかな肌触りが、深い対話、そして眠りへといざないます。
アリガトウゴザイマシタ。
車でヴィラに横付けすることもできますが、フロントとヴィラの間は無人の電動カートが送迎してくれます。
素材という原始的なものと、近未来的な無人カートの対比がユニーク。

ドゥリムトンヴィレッジ

小さなギャラリーのようでもある12棟のヴィラ。その全体プロデュースをしたのが骨董、工芸、現代美術への造詣も深い陶芸家・造形作家の内田鋼一さんです。美術館のような緊張感もありつつ、源泉掛け流しの温泉、居心地のよいお部屋も魅力。また各棟はインテリアも間取りもすべて異なるので、何度でも訪れたくなります。

住所 / 三重県三重郡菰野町菰野4842-1
電話 / 059-390-0068
料金 / 57,000円~(2名1室、1泊2食付き)

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。2020年、『浅田家!』として映画化された。著書に『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。最新作は『浅田撮影局 まんねん』(青幻舎)。また、国内外で個展やグループ展を精力的に開催している。
http://www.asadamasashi.com/