JR甲府駅前に設置された武田信玄公之像。川中島の戦いの陣中の姿を模したもの
テーマのある旅 渋沢栄一を知る旅
生誕500年の“甲斐の虎”武田信玄にパワーをもらう旅

生誕500年の“甲斐の虎”武田信玄にパワーをもらう旅

2021年は、甲斐(現在の山梨県)の戦国大名・武田信玄公が生誕500年を迎えます。「甲斐の虎」という異名を持ち、戦国時代最強ともいわれた武田軍を率いて、生涯70回以上の合戦に参加したとされています。戦国の世を力強く突き進んだ信玄公を知ることができるゆかりの地をめぐって、パワーを感じる旅に出かけてみましょう。
文/松尾好江(ランズ)

武田信玄をおさらい

1521年、武田信虎の嫡男として甲府市の積翠寺(せきすいじ)に生まれ、21歳の時に家督を継ぎ甲斐国主となりました。「信玄」という名前は39歳で出家した際につけられた名前です。それ以前は「晴信」と名乗っていました。信玄公といえば、上杉謙信公との「川中島の戦い」が有名。33歳の天文22(1553)年から12年にわたり、北信濃(現在の長野県)の支配権をめぐり上杉軍と壮絶な戦を繰り広げ、信玄公は信濃を制圧していきます。晩年、遠江(現在の静岡県)の三方ヶ原で徳川軍に勝利しますが、野田城攻め後、病気の療養のため甲斐に戻る途中に信濃の伊那駒場において53歳で生涯を終えました。
武田神社
武田神社の創建は、大正8(1919)年。武田家の拠点である躑躅が崎館跡に建てられた
山梨県甲府市

Spot01 武田神社

「勝運」のご利益もあるスポット

大正8(1919)年創建の武田神社は、武田信玄公を御祭神として祀っています。神社が建つこの地には信玄公の父・信虎、信玄公、信玄公の息子・勝頼の三代が62年にわたって居住した「躑躅が崎館(つつじがさきやかた)」がありました。
信玄公は数多くの合戦で連戦連勝を収めていたことから、勝負事をはじめとした「勝運」のご利益をいただけると人気です。さらに甲斐国において治水工事、交通網の整備などにも力を入れ、人の行き交う都市に発展させたことで、産業や経済の面でも信仰を集めています。
武田神社の境内には、信玄公の娘が誕生した際、産湯に使用したといわれる「姫の井戸」や、名刀「吉岡一文字」などが展示されている宝物殿もあります。

武田神社 住所/山梨県甲府市古府中町2611
拝観時間/9:00~16:00
料金/300円(宝物殿)
休/無休、宝物殿は水曜日(祝日の場合は翌日)
アクセス/電車:JR中央本線甲府駅からタクシーで約10分 、車:中央自動車道甲府昭和ICから約30分
電話/055-252-2609

武田神社
躑躅が崎館跡は「武田氏館跡」として、昭和13(1938)年に国の史跡に指定された
武田神社
鳥居の左側にそびえる松は「三葉の松」と呼ばれ、落葉の際は黄金色になることから「金運」のご利益にあやかれるそう
武田神社
信玄公の娘の産湯に使われたとされる「姫の井戸」。茶をたてる際も使用していたため「茶の湯の井戸」とも呼ばれている。 ※現在、お水取りは中止している
高遠城跡
信玄公の家臣・山本勘助の名に由来する「勘助曲輪」の現在の様子
長野県伊那市
高遠城跡
「さくら名所100選」にも選ばれている高遠城址公園に咲くのは、「タカトオコヒガンザクラ」という品種。ソメイヨシノより小ぶりで赤みのある花弁が特徴
高遠城跡
昭和20年代、高遠城下の問屋役所の建物を取り壊す際、歴史ある門を残すため城跡に移築された。現在は高遠城跡のシンボルとなっている「問屋門」

Spot02 高遠城跡

南信濃支配の拠点となった城

武田信玄公は天文14(1545)年、信濃の伊那谷攻略のために当時の城主であった高遠氏から高遠城(たかとおじょう)を奪います。信玄公は高遠城に限らず、侵略した多くの城を修築・増改築してその後の領地拡大のための拠点として活用していました。天文16(1547)年、高遠城の改修を担ったのが、家臣の山本勘助だといわれています。城内は、堀によって複数の区画に分けられており、その区画を曲輪(くるわ)と呼びます。山本勘助に由来して「勘助曲輪(ぐるわ)」と名付けられた場は大きな堀がありましたが、現在は埋められ広い駐車場になっています。
明治5(1872)年に廃城となり、明治8(1875)年に公園となりました。現在は桜の名所としても知られています。

高遠城跡 住所/長野県伊那市高遠町東高遠
開園時間/24時間入園可(さくらまつり期間中のみ8:00~17:00)
料金/無料(さくら開花期間のみ大人500円)
休/無休
アクセス/電車:JR飯田線伊那市駅からタクシーで約20分、車:中央自動車道伊那ICから約30分
電話/0265-78-4111(伊那市観光協会)※桜の開花状況により開園時間、有料期間の変動あり。最新情報は要問合せ。

高遠城跡
江戸中期の高遠城の様子(『高藩探勝』絵巻より「郭上鶴」)
提供:伊那市教育委員会
平湯温泉
四季折々の風景を楽しめる公共温泉「平湯の湯」
岐阜県高山市

Spot03 平湯温泉

伝説が残る武田信玄の隠し湯

飛騨山脈南部の乗鞍岳のふもとにある平湯温泉。奥飛騨のなかでも歴史ある温泉とされ、武田信玄公の隠し湯だという伝説も残っています。信濃の国で、上杉謙信公と壮絶な戦いを続けていた武田軍は、越中を手に入れようと飛騨に攻め入ることに。武田軍の大将・山県昌景は多数の軍勢を率いていましたが、峠を越えるころには兵は疲れ切っていました。平湯の地域に辿りついたとき、老いた白猿が武田軍の前を歩いて道端の湯に導き、その湯で疲れを癒したという逸話が残ります。
平湯温泉には、活火山の焼岳と乗鞍岳を熱源とした40以上の源泉があります。透明、茶褐色、緑褐色、白濁と、20数軒ある旅館・ホテルでそれぞれ泉質が異なるので、お湯の違いを楽しむことができます。

平湯温泉 住所/岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯763-191(平湯温泉観光案内所)
アクセス/電車:JR高山本線高山駅、高山濃飛バスセンターから平湯温泉バスターミナルまで約50分、車:長野自動車道松本ICから約60分
電話/0578-89-3030(平湯温泉観光案内所)

平湯温泉
平湯温泉街の周辺にある、落差64mの「平湯大滝」
平湯温泉
平湯温泉街の中心にある足湯公園には、誰でも利用できる足湯が設置されている
平湯温泉
温泉リゾート「ひらゆの森」は、露天風呂で源泉かけ流しの湯が16あり、無色透明やにごり湯など、それぞれ違った湯あみを楽しめる
信玄公生誕の地・甲府展
信玄公にまつわる名言の数々が紹介されている

Spot04 信玄公生誕の地・甲府展

山梨県甲府市
信玄公生誕の地・甲府展
甲府市東光寺の「山八幡神社」に保管されている信玄公像
信玄公生誕の地・甲府展
武田家を支えた有能な家臣たちは「武田二十四将」と呼ばれていた

武田信玄公生誕500年を記念した
特別企画展

武田信玄公の本拠地であった甲斐(山梨県)。2022年1月31日まで、甲府駅北口の特設スペースにおいて武田の旗印である「風・林・火・山」をコンセプトに、信玄公について学べる特別展示を開催しています。たとえば「ZONE 風」では、信玄公の年表や数々の功績、「ZONE 火」では「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」といった信玄公の名言も解説を交えて紹介しています。それ以外にも、信玄公と父、息子の三代が住んでいた躑躅が崎館のジオラマや、信玄公の銅像のモデルといわれる像も見ることができます。
生誕500年という記念すべきこの1年、スタンプラリーや第49回信玄公祭りなど、県内各地では信玄公にまつわるさまざまなイベントが開催される予定です。

信玄公生誕の地・甲府展
~THE SHINGEN 500 PARK~
住所/山梨県甲府市丸の内1丁目 甲府駅北口ペデストリアンデッキ
時間/9:00~18:00
休/無休
アクセス/電車:JR中央本線甲府駅徒歩すぐ、車:中央自動車道甲府昭和ICから約15分
電話/055-237-5327(甲府市役所 記念事業課)

信玄公生誕の地・甲府展
信玄公が居住していた「躑躅が崎館」のジオラマ