文/鈴木阿由美(ランズ)
幼少期から祖母の影響で文学に親しむようになり、16歳で処女作『花ざかりの森』を書き上げます。そして24歳の時に発表した『仮面の告白』で作家としての地位を確立しました。その後、『潮騒』『金閣寺』など多くの作品を執筆し、世界各国で翻訳・愛読されています。43歳で民間防衛組織「楯の会」を結成し、政治運動に傾倒。1970年11月25日に「三島事件」を起こし、45歳で最期を遂げました。
最後の晩餐に選んだ老舗料理店
三島由紀夫が自決前夜の11月24日、楯の会のメンバー4人と訪れ、最後の晩餐にと選んだ料亭です。三島は、詰襟姿の小学生の頃から家族と訪れ、「末げん」の味を大変気に入っていました。結婚してからは妻と通った、なじみの場所です。
末げんは、明治42(1909)年創業の老舗の料亭で、総理大臣の原敬や、歌舞伎俳優の六代目尾上菊五郎なども贔屓にしていました。あの夜、楯の会のメンバー4人と囲んだのはとり鍋料理「わ」のコース。コースに含まれる「わ」の鍋は、創業以来変わらない鶏ガラスープがベースで、鶏や合鴨、特製ひき肉、ネギなどを大根おろしでいただきます。
住所/東京都港区新橋2-15-7
アクセス/JR新橋駅から徒歩約3分、銀座線新橋駅から徒歩約3分
電話/03-3591-6214
営業時間/11:30~13:30、17:00~22:00
定休日/土曜日(不定休)・日曜日・祝日
常連客だったレトロな喫茶店
1977年まで営業していた一流ホテル「熱海ホテル」によく滞在していた三島と、「ボンネット」のご主人がプールで出会ったのがきっかけ。三島との親交が始まり、「ここのハンバーガーが1番おいしい」と通っていました。ボンネットは昭和27(1952)年創業で、熱海銀座商店街に佇み、三島の他にも谷崎潤一郎、越路吹雪などの文豪や歌手が足しげく通った喫茶店としても有名。今も当時と変わらないスタイルで提供しているので、レトロな雰囲気の店内でゆったりと流れる時間を味わえます。
住所/静岡県熱海市銀座町8-14
アクセス/電車:東海道本線熱海駅から徒歩約13分
車:伊豆縦貫自動車道大場函南ICから約30分
電話/0557-81-4960
営業時間/10:00〜15:00
定休日/日曜日・月1回月曜日
定宿としていた京都の御三家宿
三島が家族とともに最後に訪れたのは、1970年10月末。当時の仲居さんの案内で、子どもと一緒に終わりがけの松茸狩りを楽しんだそう。200年以上の歴史を持ち、京都の老舗旅館の御三家の「柊家」。全21室の旧館は、江戸末期から昭和までの風情が残る数寄屋造りが見事です。三島は京都旅行をする際、柊家を定宿としていました。三島がよく宿泊していたのは「33号室」。部屋の佇まいは当時とほとんど変わらず、現在でも33号室は宿泊可能です。朝食には、京の湯豆腐を、夕食には、風味豊かな京料理を清水焼などの器でいただきます。
住所/京都府京都市中京区麩屋町姉小路上ル中白山町
料金/1泊2食付1名 36,000円~90,000円(サービス料込・税別)※客室の要望は予約の際に要確認
チェックイン/15:00
チェックアウト/11:00
アクセス/電車:地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩約1分
電話/ 075-221-1136
三島家からの特別資料なども
展示している文学館
1999年にオープンし、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009」で2つ星を獲得した三島由紀夫文学館。三島は『恋と別離と』『蘭陵王』などの作品に山中湖の名前を何度も登場させています。また、所蔵されている『暁の寺』の創作・取材ノートに書かれた地図には、クジラの形をした山中湖が描かれています。直筆原稿、創作・取材ノート、書簡、絵画、写真資料、著書、研究書、翻訳書、雑誌、映画・演劇資料などを多数所蔵している文学館です。直筆原稿などは三島家からの特別資料で、三島が10代に書いたものも。貴重な初版本や年代別の展示などを通して、三島の劇的な生涯や文学に触れることができます。
住所/山梨県南都留郡山中湖村平野506-296
料金/大人500円
アクセス/電車:富士急行線富士山駅からタクシーで約25分、御殿場線御殿場駅からタクシーで約40分
車:東富士五湖道路山中湖ICから約10分
電話/0555-20-2655
開館時間/10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日/月曜日・火曜日(祝祭日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日、資料点検日(不定期)