テーマのある旅

三島由紀夫が定宿にしていた京都・柊家の「33号室」。
京都市街にありながら、自然が感じられる庭が見える

没後50年 三島由紀夫 ゆかりの地めぐり

没後50年 三島由紀夫 ゆかりの地めぐり
昭和を代表する作家であり、劇作家、評論家、政治活動家でもあった三島由紀夫。彼は、幼い頃から短歌や俳句を創作し、歌舞伎を観賞していたそう。生涯の多くを東京で過ごしていましたが、ゆかりの地は全国にあります。今回は節目の年を迎え、盛り上がりをみせている各地のゆかりあるスポットをご紹介。彼の文学・生涯に触れる旅へ出かけましょう。
文/鈴木阿由美(ランズ)

三島由紀夫をおさらい

幼少期から祖母の影響で文学に親しむようになり、16歳で処女作『花ざかりの森』を書き上げます。そして24歳の時に発表した『仮面の告白』で作家としての地位を確立しました。その後、『潮騒』『金閣寺』など多くの作品を執筆し、世界各国で翻訳・愛読されています。43歳で民間防衛組織「楯の会」を結成し、政治運動に傾倒。1970年11月25日に「三島事件」を起こし、45歳で最期を遂げました。

三島由紀夫『潮騒』(新潮文庫刊)
三島由紀夫『潮騒』(新潮文庫刊)
東京都港区
鳥割烹 新橋 末げん
最後の晩餐時の様子を知る中居さんもまだ在籍されているそう

Spot01 鳥割烹 新橋 末げん

最後の晩餐に選んだ老舗料理店

三島由紀夫が自決前夜の11月24日、楯の会のメンバー4人と訪れ、最後の晩餐にと選んだ料亭です。三島は、詰襟姿の小学生の頃から家族と訪れ、「末げん」の味を大変気に入っていました。結婚してからは妻と通った、なじみの場所です。
末げんは、明治42(1909)年創業の老舗の料亭で、総理大臣の原敬や、歌舞伎俳優の六代目尾上菊五郎なども贔屓にしていました。あの夜、楯の会のメンバー4人と囲んだのはとり鍋料理「わ」のコース。コースに含まれる「わ」の鍋は、創業以来変わらない鶏ガラスープがベースで、鶏や合鴨、特製ひき肉、ネギなどを大根おろしでいただきます。

住所/東京都港区新橋2-15-7
アクセス/JR新橋駅から徒歩約3分、銀座線新橋駅から徒歩約3分
電話/03-3591-6214
営業時間/11:30~13:30、17:00~22:00
定休日/土曜日(不定休)・日曜日・祝日

鳥割烹 新橋 末げん
床の間のある完全個室は落ち着いた雰囲気があり、会食などにも利用される
熱海 ふふ鳥割烹 新橋 末げん
三島は「末げん」の日本的な鳥料理を愛したそう
鳥割烹 新橋 末げん
親子丼「かま定食」は「わ」のコースでも使っている鶏のひき肉と卵を甘めのだし汁で合わせたランチ限定メニュー。夜営業のみの時代、料亭を訪れる客の運転手にふるまわれていたのが始まり
ボンネット
「ハンバーガー&コーヒーセット」(800円)。
まだハンバーガーを知る人も少ないオープン当時、
日本風にアレンジした、甘いてりやきソースが人気に
静岡県熱海市
ボンネット
店名の「ボンネット」は、ヨーロッパの代表的な帽子のことで、看板には深く帽子をかぶる女性が描かれている
ボンネット
レトロな照明に照らされた店内。モダンな雰囲気がそのまま残っている

Spot02 ボンネット

常連客だったレトロな喫茶店

1977年まで営業していた一流ホテル「熱海ホテル」によく滞在していた三島と、「ボンネット」のご主人がプールで出会ったのがきっかけ。三島との親交が始まり、「ここのハンバーガーが1番おいしい」と通っていました。ボンネットは昭和27(1952)年創業で、熱海銀座商店街に佇み、三島の他にも谷崎潤一郎、越路吹雪などの文豪や歌手が足しげく通った喫茶店としても有名。今も当時と変わらないスタイルで提供しているので、レトロな雰囲気の店内でゆったりと流れる時間を味わえます。

住所/静岡県熱海市銀座町8-14
アクセス/電車:東海道本線熱海駅から徒歩約13分
車:伊豆縦貫自動車道大場函南ICから約30分
電話/0557-81-4960
営業時間/10:00〜15:00
定休日/日曜日・月1回月曜日

ボンネット
ご主人のコレクションが飾られ、歴史を感じさせるショーケース
柊家
三島と師弟関係にあった川端康成やチャップリン、政財界の要人なども愛してきた老舗旅館

Spot03 柊家

京都府京都市

定宿としていた京都の御三家宿

三島が家族とともに最後に訪れたのは、1970年10月末。当時の仲居さんの案内で、子どもと一緒に終わりがけの松茸狩りを楽しんだそう。200年以上の歴史を持ち、京都の老舗旅館の御三家の「柊家」。全21室の旧館は、江戸末期から昭和までの風情が残る数寄屋造りが見事です。三島は京都旅行をする際、柊家を定宿としていました。三島がよく宿泊していたのは「33号室」。部屋の佇まいは当時とほとんど変わらず、現在でも33号室は宿泊可能です。朝食には、京の湯豆腐を、夕食には、風味豊かな京料理を清水焼などの器でいただきます。

住所/京都府京都市中京区麩屋町姉小路上ル中白山町
料金/1泊2食付1名 36,000円~90,000円(サービス料込・税別)※客室の要望は予約の際に要確認
チェックイン/15:00
チェックアウト/11:00
アクセス/電車:地下鉄東西線京都市役所前駅から徒歩約1分
電話/ 075-221-1136

柊家
「33号室」は明治時代に作られた12畳の本間と7畳の控え間の客室
柊家
絢爛豪華な襖絵
柊家
柊家
懐石料理のイメージ。9月初旬からは松茸の料理、11月初旬からは蟹の料理が食べられる
山梨県山中湖村
山中湖文学の森・三島由紀夫文学館
「山中湖文学の森公園」の石畳の道を登り切ったところに、小さな二階建ての洋館がある

Spot04 山中湖文学の森・三島由紀夫文学館

山中湖文学の森・三島由紀夫文学館
館内には貴重な初版本99冊を展示
山中湖文学の森・三島由紀夫文学館
三島が使用していた書斎を忠実に再現した展示がファンに人気

三島家からの特別資料なども
展示している文学館

1999年にオープンし、「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン2009」で2つ星を獲得した三島由紀夫文学館。三島は『恋と別離と』『蘭陵王』などの作品に山中湖の名前を何度も登場させています。また、所蔵されている『暁の寺』の創作・取材ノートに書かれた地図には、クジラの形をした山中湖が描かれています。直筆原稿、創作・取材ノート、書簡、絵画、写真資料、著書、研究書、翻訳書、雑誌、映画・演劇資料などを多数所蔵している文学館です。直筆原稿などは三島家からの特別資料で、三島が10代に書いたものも。貴重な初版本や年代別の展示などを通して、三島の劇的な生涯や文学に触れることができます。

住所/山梨県南都留郡山中湖村平野506-296
料金/大人500円
アクセス/電車:富士急行線富士山駅からタクシーで約25分、御殿場線御殿場駅からタクシーで約40分
車:東富士五湖道路山中湖ICから約10分
電話/0555-20-2655
開館時間/10:00~16:30(入館は16:00まで)
休館日/月曜日・火曜日(祝祭日の場合はその翌日)、12月29日~1月3日、資料点検日(不定期)

山中湖文学の森・三島由紀夫文学館
アポロ像は、三島由紀夫邸の庭を模したもの