かつて津山城主が独り占めするほど惚れ込み
文人墨客も心を和ませた名湯を体験する
奥津温泉は岡山県北部の鳥取県との境に位置し、吉井川沿いにある温泉です。静かな山間の町には、風情のある老舗旅館や素朴な民宿などが立ち並びます。開湯の歴史を辿れば神話時代にまで遡り、大国主命の命を受けた少彦名命が地方を巡視された際、発見されたと伝えられています。江戸時代には津山城主・森忠政公が入浴した際、泉質のよさに感銘を受け、自身専用の湯治場をつくり、一般の入浴を禁じたため「鍵湯」と呼ばれていました。その鍵湯は奥津温泉の旅館のひとつ「名泉鍵湯 奥津荘」の浴場として今も入浴することができます。奥津ののどかな雰囲気に浸って心和ませた文人墨客も多く、与謝野鉄幹・晶子夫妻や、版画家・棟方志功も奥津を訪れ、作品を残しました。奥津温泉は湯郷温泉、湯原温泉とともに岡山県北の名湯として「美作三湯(みまさかさんとう)」と呼ばれ、漂白成分を含んだ絹のようにやわらかな湯は、お肌がスベスベになるという評判から「美人の湯」として人気があります。
文/鈴木阿由美
- 泉質/
- アルカリ性単純泉
- 効能/
- 疲労回復、健康増進、冷え性など
昭和の香りが残る老舗旅館で
奥津の滋味と足元から湧き出す湯を味わう
奥津の滋味と足元から湧き出す湯を味わう
名泉鍵湯 奥津荘
昭和2(1927)年築の当時の趣をそのままに、2004年にリニューアルを施した木造建築の宿。客室は全8部屋で、和室、洋室、露天風呂付客室があります。食事は奥津産や岡山県産の食材をたっぷりと。おすすめは郷土料理コースで、牛の骨の周りについた肉を削いで食べる「そずり鍋」など、津山地方に残る伝統的な料理がいただけます。温泉は、源泉掛け流しの4つの浴場が24時間利用可能。とくに「鍵湯」と「立湯」は、吉井川によって長年削られて自然とできた花崗岩の造形を生かしているのが特徴的で、絹のように柔らかな湯が毎分247Lもの豊富な湯量で湧き出ています。浸かればたちまち、時の流れも忘れさせてくれるような癒しのひと時に。
住所/〒708-0503 岡山県苫田郡鏡野町奥津48
電話/0868-52-0021
奥津の自然を一望できる宿で
やわらかな肌ざわりの湯に癒される
やわらかな肌ざわりの湯に癒される
奥津温泉リゾート 米屋倶楽部
温泉街で一番の高台にあり、奥津温泉街や奥津渓谷を一望できる宿です。“湯”や“食”など、宿で体験できる「五美五感」をコンセプトとし、2014年にリニューアルしました。奥津渓谷や吉井川などを散策しやすく、高清水トレイルや岩井の滝を訪れるにも便利な立地です。客室は、和室10畳タイプ、見晴らしのいいスイート和洋室、大きなベッドがついた機能的な和洋室など。温泉は大浴場と露天風呂が愉しめます。宿には自家源泉があり、源泉温度は41.5℃。加水や加温を一切していない湯は、まるで優しい化粧水に入っているようなやわらかさです。料理は四季で旬の食材を楽しめる会席料理を提供。岡山の和牛「千屋牛」や「なぎ和牛」も味わえます。
住所/〒708-0503 岡山県苫田郡鏡野町奥津196-5
電話/0868-52-0016