浅田政志の宿旅

わざわざ泊まりに行きたい、そんな宿を訪ねる写真連載。第9回は、美術家で建築家の荒川修作+マドリン・ギンズによるアートな住宅に泊まります。
写真家 浅田政志の宿旅
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Vol.9 「三鷹天命反転住宅 イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」東京都三鷹市

“芸術作品”に暮らす、泊まる。
実はここ、実際に暮らしている方もいる集合住宅。そのうち2部屋はショートステイが可能で、
最低3泊4日から。暮らしてみないとわからないことがあります。
この空間を満喫するために、用意されているのが“使用法”。その内容は、宿泊者(もしくは入居者)だけが知る秘密です。
“使用法”をお守りください。
常識が揺らぐ住空間。
キッチンを中心に、小部屋がいくつかあるつくり。
球体の部屋、傾斜のある天井、デコボコの床。
普通の部屋じゃないかもしれません。でも普通ってなんですか?
「環境が身体を作りあげている」。
そんな考えをもとに、随所に工夫がある空間。
デコボコの床にも身体が適応していく不思議な感覚。
見るだけでなく、全身で空間を認識してください。
身体が家をつくり、家が身体をつくる。
ただの天井か。収納か。すべてはあなた次第
天井には多数のフックがあり、吊り下げ収納に使うことも。
利用者が使い方を見つける楽しみがあります。
街に贈った「カラフルな“花束”」
外観と内観で、使われているのは全14色。
花束のような鮮やかさですが、色の配置に意味を持たせないようにしているそう。

三鷹天命反転住宅 In Memory of Helen Keller

芸術家で建築家の荒川修作+マドリン・ギンズによる、全9戸の集合住宅。14色の鮮やかな色彩の外観もさることながら、室内はさらにインパクトがあります。「与えられた環境・条件を当たり前と思わずにちょっと過ごしてみるだけで、今まで不可能と思われていたことが可能になるかもしれない=天命反転が可能になる」という考えのもとにデザインされており、ただ過ごすだけでも刺激的。なにより、アート作品のなかで過ごせるのがユニークです。

住所/東京都三鷹市大沢2-2-8
料金 /69,200円~(最低利用日数3泊4日より)
URL/http://www.rdloftsmitaka.com/

浅田政志
Masashi Asada浅田政志
1979年三重県生まれ。2007年に写真家として独立。2008年、写真集『浅田家』(赤々舎刊)で第34回木村伊兵衛写真賞を受賞。『浅田家』をもとにした映画『浅田家!』が2020年10月2日(金)公開予定。著書に、『NEW LIFE』(赤々舎刊)、『家族新聞』(幻冬舎刊)、『家族写真は「」である』(亜紀書房)など。国内外で個展、グループ展を精力的に開催している。
Reversible Destiny Lofts Mitaka – In Memory of Helen Keller, created in 2005 by Arakawa and Madeline Gins, © 2005 Estate of Madeline Gins.