俳優 高良健吾
“僕は旅がないと絶対にダメです
そのために頑張れています”
映画『カツベン!』で出合った活動弁士役を、
「最高だった」と振り返る高良健吾さん。
映画のお話から、人生に必要不可欠だという
“旅”のエピソードまで語ってくれました。
取材・文/小林未亜
撮影/宮川朋久
ヘアメイク/高桑里圭
スタイリング/渡辺慎也(Koa Hole inc.)

『カツベン!』で、日本映画の黎明を支えたしゃべりの天才“活動弁士”を演じている高良さん。完成した作品をご覧になっていかがでしたか?

楽しい映画でよかったなと思いました。サイレント映画の時代って、映画が無声だから常に人が動いているじゃないですか。だから活劇だと思うんですけど。それが、音が入っていても活劇になっていて、人の動きがちゃんと画で表現されているのが好きでした。

演じるにあたって活動弁士の特訓をされたそうですが、相当大変だったのでは?

楽しかったです! 一生に一度出合えるか出合えないかの役だと思うんですよ。日本映画の歴史の中にあった活動弁士を、自分が演じられるのが最高すぎて即決でしたし、その練習ができるなんてもう最高じゃないですか。(完成した作品を見た時も)活弁のシーンがやっぱり好きでしたね。自分が活動弁士をやって、それが映っているのが幸せだなと思いました。

高良さんが演じた活動弁士・茂木は、自信家で傲慢なところがあり、よからぬ行動にも出ますが、どこか憎みきれない人物ですよね。

一生懸命ですからね、活弁に対しては。活弁しかなくて、活弁に命を懸けている人ですから。嫉妬や暴力的なところ、女好きな面も出て来るけど、この人は自分がやっていることに対しての責任の持ち方、プライドの持ち方が徹底しているから、何をやっても許されるところはありますよね。

本作は各地でロケをされていて、例えば物語の中心となる映画館「靑木館」も実際の建物で撮影されていますが、ロケや実際の場所での撮影というのは演技に影響はありますか?

やっぱりロケの力はあると思いますよ。遠い場所でのロケは必ず泊まりじゃないですか。泊まりになると、家に帰って洗濯物をしたり掃除をしたりといった自分の私生活がなくなるから、その分楽だし、気持ちが入り込みやすい。だからロケは大好きですし、しかも実際にある建物だったら、そこのパワーってあるはずじゃないですか。それを分けてもらえる気がするので、そういう場所を使わせてもらえるのはすごく嬉しいですね。

ロケ先で観光的なことをされたりもします?

その街を歩いて回るのが大好きで、ロケに行ったら必ずします。レンタカーを借りたり、行きたい場所をリサーチして行くこともありますね。今回は福島だったんですけれど、泊まっていた宿の周りは歩き回りました。

少し話が変わりますが、映画や本を通して「ここに行きたい」「旅に行きたい」と思うことはありますか?

すごくあります。映画を見ていて「どこで撮っているのかな」と思いますし、本の舞台が気になって調べてみて「行ってみよう」と思ったり。旅に行きたくなるので言うと、『モーターサイクル・ダイアリーズ』や『イントゥ・ザ・ワイルド』、『LIFE!/ライフ』とかね。冒険から旅につながる感じが好きですね。『LIFE!/ライフ』はアイスランドの景色もきれいですし。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』は、何者でもない若者2人がバイクで国を渡っていくんですが、その国の現状を見て「何かしなきゃいけない」という思いが出て来て、(チェ・)ゲバラになっていくわけじゃないですか。旅ってそういう力がありますよね。本や携帯で知っていた情報が、現地に行くと変わる。旅の醍醐味ですよね。

最近ひとりでヨーロッパ4か国を列車で回られたそうですが、旅はよく行きますか?

僕は旅がないと絶対にダメです。年に一回は必ず行きたいですし、そのために頑張れているという感じです。

旅でリセットするような感覚ですか?

「取り戻す」という感じですね。自分のことを知らない人たちがたくさんいるし、自分の力で生きていかなきゃいけないし、言葉もわかんないし……みたいな状況のなかで、だんだん「あ、俺こんな感じだったよな」って。旅に行って「こういうのが好き」「あそこに行きたい」という風に、自分を取り戻す感覚です。

特に記憶に残る旅というと?

たくさんありますけど、キューバは自分が行ったタイミングが良すぎて、いろんなイベントを見られたから思い出深いですね。インドネシアをバイクで旅したのも楽しかったし。この前の4か国の列車の旅も面白かったです。(ドラマの)イン前だったから、安全で日焼けがない旅にしようと思ったんですよね。

自分で計画するんですか?

します。今回宿を決めずに行ったんですけど、「Booking.com」って最高じゃないですか(笑)? 朝見て「お! 早朝セール」とか(笑)。すごくいいホテルがかなり安くなっていたりするので、パッと決めて、ボタンひとつでホテルが決まって、行けば入れるなんて最高。ホテル決めないのもいいなーと思いました。

思い出に残る宿はありますか?

キューバのカーサは面白かったです。日本でいうゲストハウスですかね。朝起きるといろんな人種の人たちが集まって会話して、「じゃあ俺は今日あそこ行くわ」って散って行く、ああいう感じいいなと思いました。すごく安かったですし。旅に行くと毎回、せっかくならと思ってその都市のいい宿に一泊だけでも泊まってみるんですけれど、泊まってみて「カーサがよかったな」と思いました。確かに便利で快適だけど、カーサでの経験にはかなわなかったですね。

旅に必ず持って行くものはありますか?

とりあえずガイドブックですね。その国の気温や、電車の乗り方、タクシーに乗る時に気を付けることなんかが書かれた、最初の10ページくらいの部分がマジで必要。あれに助けられることが多いです。その国で生きていくための基本は重要です。

リアルな旅のお話がとても楽しかったです。貴重なお話をありがとうございました!

高良健吾さんが旅に行きたくなる映画

『モーターサイクル・ ダイアリーズ』

『モーターサイクル・
ダイアリーズ』

伝説の革命家チェ・ゲバラの回想記をもとに、名優ロバート・レッドフォードの製作総指揮によって映画化された青春ロードムービー。アルゼンチン・ブエノスアイレスの医学生エルネスト(後のチェ・ゲバラ)が、友人と1台のバイクで南米大陸を縦断した旅の日々を描く。エルネストを演じたのは、メキシコの人気俳優ガエル・ガルシア・ベルナル。
『LIFE!/ライフ』

『LIFE!/ライフ』

Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray2,096円/DVD1,561円
20世紀フォックス
ホーム エンターテイメント

©2015 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

ベン・スティラーやシャーリー・マクレーン、ショーン・ペンなど豪華キャストの共演で描く、感動のヒューマン・アドベンチャー。空想世界に浸ることが唯一の趣味である平凡な主人公ウォルター(ベン・スティラー)が、とあるミッションのため、極寒の海に飛び込み、大地を駆け抜け、過酷な山を越える冒険を経験することで、勇気や生きる喜びを見出していく。
INFORMATION
『カツベン!』©2019 「カツベン!」製作委員会

『カツベン!』

『Shall we ダンス?』(1996年)や『舞妓はレディ』(2014年)で知られる映画監督・周防正行の5年ぶりの最新作は、活動弁士(通称“カツベン”)と“日本映画の始まり”を描く物語。舞台は、今からおよそ100年前。当時モノクロでサイレントだった映画(活動写真)に、楽士の奏でる音楽に合わせて、自らの語りや説明で彩ったのが活動弁士。そんな活動弁士を夢見る青年・染谷俊太郎(成田凌)が、泥棒一味から逃亡し、小さな町の映画館“靑木館”に流れ着いたところから、館主夫婦や活動弁士たち、泥棒、刑事、そして再会した初恋相手をも巻き込んだ大騒動へ展開していく。
監督:周防正行
出演:成田凌、黒島結菜、永瀬正敏、高良健吾、音尾琢真、竹中直人、渡辺えり、井上真央、小日向文世、竹野内豊ほか
12月13日(金)全国ロードショー
配給:東映

Profile
高良健吾
高良健吾Kengo Kora

1987年11月12日生まれ、熊本県出身。2006年に『ハリヨの夏』で映画デビューして以来、数多くの映画やドラマに出演。近年の出演映画に、『ふきげんな過去』(2016年)、『シン・ゴジラ』(2016年)、『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)、『月と雷』(2017年)、『万引き家族』(2018年)、『多十郎殉愛記』(2019年)、『アンダー・ユア・ベッド』(2019年)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(2019年)、『葬式の名人』(2019年)などがある。2019年10月期のドラマ『モトカレマニア』(フジテレビ)に主演。

あの人の旅カルチャー

今月のテーマ「クリスマス」 「クリスマス」をテーマに本と映画の“目利き”が作品をセレクト。
恋愛モノから修道院のお話まで、十人十色のクリスマスの世界へようこそ!

Book

  • 『X'mas Stories
    一年でいちばん奇跡が起きる日』

    『X'mas Stories 一年でいちばん奇跡が起きる日』
    伊坂幸太郎さん、恩田陸さんほか人気作家によるクリスマスをテーマにした短編集。おすすめは朝井リョウさんの、26歳のOLがイヴにどうしても男性とディズニーランドに来たかった理由を描いた「逆算」と、地下鉄明治神宮前駅に、隠れキリシタンで有名な天草から武士と村人がタイムスリップしてくる三浦しをんさんの「荒野の果てに」。“メリー・クリスマス!”と声を上げたくなる6編です。
    朝井リョウ、あさのあつこ、伊坂幸太郎、恩田陸、白川三兎、三浦しをん/著
    572円/新潮社
  • 『修道院のお菓子と手仕事』

    『修道院のお菓子と手仕事』
    聖なる季節に訪れたい修道院。本書はそこで作られるお菓子や小物のガイドブックです。クッキーやハーブソルト、刺繍雑貨など、丁寧な仕事ぶりがうかがえます。外観やマリア像、荘厳な廊下の写真のほか、「お年寄りの修道女たち」「バター飴工房」のイラストも楽しい。修道院の一日、お昼ごはんなどを紹介したコラムや売店でのお作法もあり、ページをめくるたび、穏やかな気分になれます。
    柊こずえ、早川茉莉/著
    1,650円/大和書房
  • 『夜景のプロが絶対オススメする
    日本のイルミネーションBest』

    『夜景のプロが絶対オススメする 日本のイルミネーションBest』
    イルミネーションは今や冬の風物詩。日本の技術とアート感覚は世界でも類を見ないと言われています。本書は夜景評論家と夜景フォトグラファーによる写真集で、圧巻の神戸ルミナリエ、東京タワーを前方にした六本木ヒルズのけやき坂、田んぼに2万個のLEDを配した静かで幻想的な石川県の「白米千枚田」など37の絶景。ネットなどで今年の開催期間を調べて、年末年始の旅行先にもどうぞ!
    丸々もとお/著 丸田あつし/撮影
    1,650円/廣済堂出版
間室道子さん 代官山 蔦屋書店

代官山 蔦屋書店に勤める文学担当のコンシェルジュ。雑誌「婦人画報」の連載を持つなど、さまざまなメディアでオススメの本を紹介するカリスマ書店員。文庫解説も手掛け、書評家としても活躍中。

Movie

  • 『ホリデイ』

    『ホリデイ』
    バリキャリ女性社長と新聞社勤務のコラムニスト。失恋で傷ついたアラフォー2人がクリスマス休暇に家を交換する、アメリカで一大ブームとなった旅行者がお互いの家を交換する“ホーム・エクスチェンジ”を題材にしたラブコメディ。これ、やってみたいことリストに即座に追加! まるでおとぎ話に登場するようなメルヘンなイギリスの田舎町、インテリアや間取などすべてがハイセンスなハリウッドの大豪邸。長閑ライフと華やかライフ、一粒で二度美味しい映画です。
    Blu-ray&DVD発売中 Blu-ray2,075円/DVD1,572円 発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
  • 『ラブ・アクチュアリー』

    『ラブ・アクチュアリー』
    旅のはじまりといえば、空港。この物語は、クリスマスの5週間前のヒースロー空港から始まり、徐々にイブに近づいていく群像劇。夫の浮気に悩む妻、三角関係の恋をした画家、義理の息子との関係に悩む父、再起をかけるスターなど19人9組の色とりどりの人生に触れます。実るもの、実らないもの。胸キュンと、ほろ苦さ。この映画に愛のカタチすべて描かれてます! どのエピソードが心に残るか、自分の現在の状況によっても変化する鏡のような1本。
    Blu-ray&DVD発売中 Blu-ray1,650円/DVD1,100円 発売元・販売元:株式会社KADOKAWA
  • 『ポーラー・エクスプレス』

    『ポーラー・エクスプレス』
    旅に大事なのは行き先ではなくて、旅立とうと思う意思なのかもしれません。イブの夜、サンタを信じられなくなった少年のもとに大きな蒸気機関車が現れ、北極点に向かう旅に出発します。美しい原作の絵本をフルCGで映画化したのは、『BTTF』や『フォレスト・ガンプ』のロバート・ゼメキス。うん、やっぱり天才……! キラメキが溢れ出しそうな映像。こんなに瞳が満たされるクリスマス映画は他にないです! 癒やしを求める大人だからこそ、時には存分に夢の世界に浸ってください。
    DVD発売中 1,980円 発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
東 紗友美さん 映画ソムリエ

映画ソムリエとして、テレビ・ラジオ番組での映画解説や、映画コラムの執筆、映画イベントのMCなど幅広く活躍。映画ロケ地巡りも好き。日経電子版で「映画ソムリエ 東紗友美の学び舎映画館」を連載中。

※価格はすべて税込みです