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未来を創るまちづくり 益城町の復興物語

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甚大な被害をもたらした熊本地震から6年。「創造的復興」というコンセプトを掲げ、明るい未来を見据えたまちづくりを進める益城町。震災以前から長きにわたって益城町の舵取りをしてきた西村博則町長と、復興計画を進める益城町職員の後藤健介さんにお話をうかがいました。そして益城町で生まれ育ち、この町の未来を創っていく益城町の若者たちの“リアル”も。益城町の震災の記録と記憶、現在、そして未来は――。

写真/村上未知 文/田幸宏美

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未来を創るまちづくり 益城町の復興物語

震災の記憶

震災当時の記憶を教えてください

2016年4月14日、16日の2度にわたって震度7の地震が起こり、町内の住宅の約98%が被災するという甚大な被害に見舞われた益城町。1回目の地震では、あまりの揺れの大きさにただごとではないと10分後には家を飛び出しました。車で役場に向かったものの、道路に入った亀裂で走行が困難に。総合体育館の近くに車を停めて1キロほどを全力疾走。道路の亀裂、電柱や家屋の倒壊を目にして、愕然としながら走ったのを覚えています。庁舎は真っ暗でしたが、それでも300人ぐらいの町民の方が敷地内に避難されていました。

益城町長 西村博則さん
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震災の記憶

当日はどんな状況でしたか?

携帯電話の緊急地震速報がいっぺんに鳴り響き、余震が起こる度にあがる悲鳴。自衛隊やマスコミのヘリコプターのけたたましい音で人の声が聞こえない。言葉にならない想像を絶する光景でした。とにかくありったけの備蓄していたビニールシートと毛布を運んだのを覚えています。 庁舎から1キロほどの総合体育館に避難誘導する案も出ましたが、道路の亀裂など状況を踏まえ、自衛隊や消防、警察と相談した上で二次災害を引き起こしかねないと、避難している町民を動かさない判断をしました。2回目の地震では、総合体育館の1つ5キロある天井のパネルが数百枚落下。もしメインアリーナを避難所として使っていたら……。現場では分きざみのスケジュールの中、町民を危険から守るべくさまざまな判断に迫られていました。

震災で倒壊し再建不能になった旧庁舎
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益城町の今

あれから6年。現在の復興状況は?

現在は、復興事業も進み、町の姿も震災直後と比べると、新たな道路や施設ができるなど、大きく変わってきています。2023年春には、新庁舎も完成します。地震にビクともしない免震構造で、4階部分は誰でも訪れることができ、町の素晴らしい自然を見渡すことができる場所です。夜には、益城町の未来を照らす灯台のように灯りがともり、もし何かあった場合の目印にもなります。庁舎の周りには、震災時の様子を見ることができる「復興まちづくりセンターにじいろ」があり、また、「震災記念公園」や「交通広場」もできますので、明るくにぎわいあふれる場所になると今からわくわくしています。

全国の皆様も、町の復興の様子を見に、ぜひお越しになってください。ただ、今も小さな地震で当時を思い出すことがあります。そんな時、私は体を動かすことで気持ちを切り替えています。町民が気持ちを切り替えられるようなさまざまなイベント等も、これからは行っていけたらなと考えています。 閉じる

益城町職員 後藤健介さん
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未来に向けて

益城町が目指す「創造的復興」とは?

失ったものを単に元に戻すだけではなく、町全体が一丸となり新しく創りながら復興していく、それが「創造的復興」。新庁舎をはじめ、復興まちづくりセンター「にじいろ」、避難所としても活用できる身近な公園やコアスペースづくりなど、“わくわく”をテーマに、益城町の新しいまちづくりを進めています。2022年には、未来を担う若者を意識した商業施設などの、人が集う場所もオープン。路線バスやタクシーなど交通の結節点になる交通広場の建設、そして2023年は阿蘇くまもと空港のリニューアル、九州東海大学の臨空校舎の開校と、町にとっては転換期を迎えます。10年、20年先を見据え、町民や訪れた人の心に残る、益城町ならではのまちづくりを目指しています。

益城町の新しいまちづくり
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未来に向けて

若い世代にとってのまちづくりとは?

「創造的復興」の一環として生まれた、誰でも気軽に集えるコワーキングスペース「Connet」。ここを一言でいうならば「つながれる居場所」です。益城町には高校がなく、みんな近隣の市や町に通学します。卒業後は大学などで地元を離れる人もいるので、益城町に住む私たち学生にとってはみんなが集まれる貴重な場所なんです。世間話をしたり勉強したり、時には書籍紹介のポップ書きやスポーツ大会などのイベントも企画。まちづくりという意識もあるけど、自分たちが楽しむ場所として活用しています。たまにおもしろい人がひょっこり訪れることも。歩いて日本を旅する人がからあげを作ったり、先日も趣味で占いをしている人が来て占ってもらったり(笑)。こういう場所やイベントによって人とのつながりがどんどん広がって、益城町がにぎやかになったらと思います。中学生以上は誰でも入れますので気軽に来てください!

コワーキングスペース「connet」

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