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山岳信仰の聖地・出羽三山(でわさんざん)や、“出羽富士”こと鳥海山(ちょうかいさん)を抱き、日本海に面した自然豊かな山形県庄内エリア。古くは出羽国として栄えたこの土地の文化や教えを、今に伝えるスポットが点在しています。見て、感じて、庄内の歴史と自然を学ぶ旅に出かけてみませんか?
提供:山形県 文:旅色編集部
山形県のほぼ中央にそびえる羽黒山(はぐろさん)、月山(がっさん)、湯殿山(ゆどのさん)で構成される出羽三山。開山は1400年以上前とされ、神聖な地として古くから信仰を集めている日本屈指の霊山です。江戸時代、この三山巡りが「西の伊勢参り、東の奥参り(=出羽三山参り)」と謳われるほど人気を博しました。
山岳信仰のひとつ、羽黒修験道の考えによると、羽黒山は現世の幸せを祈る山(現在)、月山は死後の安楽と往生を祈る山(過去)、湯殿山は生まれ変わりを祈る山(未来)とされ、現在・過去・未来を辿る出羽三山参りは「生まれかわりの旅」とも呼ばれています。これら出羽三山にまつわるストーリーは、地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語る日本遺産として認定されています。
まずは、出羽三山の玄関口・羽黒山。スタート地点の「随神門(ずいしんもん)」から山頂まではおよそ1.7kmの道のりで、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで三ツ星に選ばれた荘厳な杉並木の間を進んでいきます。
朱塗りの「神橋」を過ぎると、その先に見えてくるのは、樹齢1000年といわれる「爺杉(じじすぎ)」と、巨大な杉並木の中にそびえる「五重塔」。特別天然記念物にも指定された巨杉と国宝の五重塔を一緒に撮影することができる、おすすめのフォトスポットです。夏期はライトアップが行われ、幻想的な姿を見せてくれます(2021年は6月26日[土])〜10月3日[日]予定)。
五重塔のあとは、2446段の石段にチャレンジ。一の坂、二の坂、三の坂と続く階段には、あちこちに盃やひょうたんなどの絵が彫られており、33個すべて見つけると願いが叶うといわれています。二の坂を過ぎたところにある「二の坂茶屋」で名物の力餅をいただき、英気を養いましょう。もうひとがんばりして鳥居をくぐれば、山頂に到着! 出羽三山の神々を祀る「羽黒山三神合祭殿」への参拝がゴールです。
標高1,984m、出羽三山の主峰としてそびえるのが月山です。日本海からの季節風を受ける影響で県内でも有数の豪雪地帯である月山は、高山植物の宝庫。夏には100種類以上の高山植物に出会うことができます。
月山8合目にある弥陀ヶ原(みだがはら)湿原には、広大な草原と珍しい高山植物、そして約3,000もの小さな池が点在する独特の景観が広がり、その美しさは「天空の楽園」と称されるほど。1周約2kmのトレッキングコースでは、なだらかな木歩道を歩きながら、色とりどりの花や紅葉など四季折々の自然を楽しむことができます。途中、オコジョに出会うことも。会うと幸せになれる、幸運が訪れるといわれているのでぜひ探してみて。弥陀ヶ原の花々や自然について詳しく知りたい方は、観光ガイドによる案内に参加するのもおすすめです。
最後の湯殿山は、出羽三山の奥宮とされる修験道の霊地。湯殿神社本宮については「語るなかれ」「聞くなかれ」と古くから伝えられ、参拝時のことを口外することさえ固く禁じられてきたミステリアスな神社です。もちろん写真撮影も禁止。また境内は俗世とは切り離された神域につき、土足も厳禁です。土と石が混ざる参道を裸足で歩くことで、山と大地のパワーを直に感じられます。敬意をもって参拝しましょう。
さらに、湯殿山は「恋の山」とも呼ばれています。ご神体の「おあか」を瓶詰めした「恋の山守り」は、湯殿山でしか手に入れることができない、縁結びに効くお守りです。
江戸時代、交易の拠点として繁栄した港町、酒田。当時から続く料亭「相馬屋」を改装してつくられたのが、相馬樓です。石畳が敷かれた舞妓坂に、朱色の塀と茅葺の屋根が施された建物が佇むその空間は、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。木造の主屋は1894年の震災で焼失した後、残った土蔵を取り囲んで再建築されたもので、1996年に国の登録文化財に指定されています。歴史を残しながら、この町の文化や伝統を伝えていく施設として2000年にオープンしました。
毛氈(もうせん)が敷かれた館内は、水墨画が描かれた襖や陶器製の引き手など繊細な巧の技があちらこちらに見られ、当時の繁栄を感じさせます。1階では「茶房くつろぎ処」にて抹茶やコーヒーをいただくことができ、2階の大広間では今も活躍する酒田舞妓さんたちの艶やかな演舞を鑑賞しながら食事を楽しむことができます。また、美人画で名を博した竹久夢二美術館も併設されています。
日本海に面する鶴岡市には、個性豊かな海水浴場が点在しています。湯野浜温泉郷の長い海岸線に広がる県内最大規模の「湯野浜海水浴場」をはじめ、快水浴場百選に選定され、白山島と朱色の橋が織りなす景観が美しい「由良海水浴場」、人口の砂場・磯場として整備された「加茂レインボービーチ」、川砂利を敷き詰め、内海で波も穏やかな人口ビーチの「マリンパークねずがせき」、左右に奇岩怪岩があり、入江状の「三瀬海水浴場」、見晴らしがよく磯遊びも楽しめる「小波渡海水浴場」など、特色のある海で、さまざまなアクティビティを楽しむことができます。
おすすめは、シーカヤック体験。小型の船を漕ぎながら海上を進み、景色や水中の魚を鑑賞するアクティビティで、ライセンス不要なうえ、泳ぐのが得意でない方でも楽しめるのが魅力です。インストラクター指導のもと、自分のペースでカヤックを漕いでいくので、初めてでもリラックスしながら美しい日本海を満喫することができます。
日本海に浮かぶ飛島は、県唯一の有人離島。酒田港から「定期船とびしま」に乗り、1時間15分ほどでアクセスすることができます。島では釣りや海水浴が楽しめるのはもちろん、島全域が国定公園(鳥海国定公園)に指定されているため、手つかずの自然を満喫するウォーキングやバードウォッチングが人気です。暖流・活火山・湧水によって豊かな環境が育まれた鳥海山・飛島エリアは「日本ジオパーク」にも認定されており、ジオガイドとともに島の成り立ちや地質・地層を観察しながら島巡りを楽しむこともできます。
飛島ならではの絶景も見逃せません。「日本の渚百選」に選ばれた荒崎を見渡せ、沈みゆく夕日を眺めることができる「渚の鐘」や、雄大な鳥海山を望む鼻戸崎(はなとざき)展望台など、ビュースポットがたくさん。海岸では、海底火山と波の浸食によって形成されたローソク岩やマンモス岩などを見ることができ、自然のパワーを間近に感じられます。
鶴岡市にある加茂水族館は、クラゲの展示数が60種類以上と世界一を誇る水族館。「クラゲドリーム館」という愛称でも親しまれています。なかでも圧巻なのが、約2000のミズクラゲが漂う、直径5mの大水槽「クラゲドリームシアター」。透明感のあるクラゲが水の中でゆらめく姿は幻想的で、アートのよう。エリア内にはクラゲ解説コーナーなどがあり、「見て、触れて、知る。発見と感動」をテーマに、クラゲの生態や魅力を伝える展示が行われています。
クラゲのほかにも、アシカショーやウミネコの餌付けなど、子どもから大人まで楽しめる催しを随時開催。館内のレストラン「魚匠ダイニング沖海月」では、地元の鮮魚を使った海鮮丼や季節ごとの限定メニューを提供しており、クラゲラーメンやクラゲアイスなどのクラゲ料理も人気です。
鳥海山の麓、遊佐町にひっそりと湧く丸池様は、直径約20m、水深5mほどの池。隣接する牛渡川と同様にほぼ100%が火山起源湧水で、池の底からボコボコと水が湧き出るのが見えるほど。湧水が絶えず循環していることから、池に沈んだ樹木も腐敗することがないのだそう。水面は光の加減や気候条件により微妙に色を変えながら、幻想的なエメラルドグリーンをまとっています。
周辺は鳥海山大物忌神社(ちょうかいさん おおものいみ じんじゃ)の境内地であるため手つかずの天然林が残っており、「丸池神社の池と社叢」は町の天然記念物にも指定されています。美しく輝く池は大物忌神社のご神体そのものであり、古くから地域住民の信仰の対象として大切にされ、畏敬の念を込めて「丸池様」と呼ばれています。
約1200年前に高僧・弘法大師が神のお告げにより発見し、命名したといわれる玉簾の滝。滝が北西に向かい、太陽の位置によって水しぶきが玉簾のように見えることから、この名が付けられました。落差約63m、幅約5mにわたって断崖絶壁から豪快に流れる滝は、圧巻の迫力。誰もが認める出羽随一の名爆です。整備された遊歩道を通って滝壺の近くまで行くことができるので、水の流れる音やしぶきを直に感じてマイナスイオンを全身に浴びましょう。夏の夕涼みにも最適です。
毎年、大型連休とお盆(2021年は8月11日[水]~8月22日[日]予定)には夜間のライトアップが実施され、日中とはまた違った幻想的な景観を楽しむことができます。鳥海山・飛島ジオパークのひとつとして、ジオガイドの案内に参加すれば楽しみ方もグッと広がりますよ。
山形県庄内地域の自然や歴史を感じられるスポットをご紹介しました。日本古来の風土や文化が残るこのエリアでは、懐かしさや美しさに心が洗われるような体験が待っています。新しいことを始めたいときやリフレッシュしたいとき、山形県庄内地域に旅してみてはいかがでしょうか。
今回紹介した羽黒山を含む松尾芭蕉ゆかりの施設を巡る「おくのほそ道周遊チケット」も発売中なので、ぜひ次の旅の参考にしてみてください。
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