旅色プラス
SNSでさまざまな著名人たちが描いていた「アマビエ」をご存じですか? 鳥のような、魚のようなイラストにちょっと怖いと感じる人もいたはずです。「アマビエ」とはいったいなんだったのか、詳しいお話を日本唯一の妖怪専門店「大怪店」の店主妖怪dj高☆梵さんに聞いてみました。
写真:大蛇堂作 「アマビエ 掛け軸」¥5,903
――――SNS上でブームになった「アマビエ」。そのきっかけを大怪店さんも担っていましたよね。
大怪店では、コロナウイルスが流行する1年ほど前、「金霊(かなだま)とアマビエ展」という【金霊】と【アマビエ】の2体の妖怪をテーマにした企画展を開催していました。その時の企画展に参加していた、大蛇堂(おろちどう)さんが自身のアマビエ作品の画像をtwitterにUPしたところ、しげおか秀満(ひでみつ)さんや赤綿(あかわた)さんら大怪店にもゆかりにある妖怪作家やクリエイターが次々と #アマビエ のハッシュタグでイラストや作品をUPしていて。大怪店のアカウントでもリツイートなどしていたら、2、3日後にはさまざまなクリエイターが #アマビエ をつけてアマビエの絵をUPしだし、それが大きなうねりとなって今回のアマビエブームになりました。
――――そもそも「アマビエ」は、そもそもどんな妖怪なのですか?
「アマビエ」は、海を輝かせるなどの現象を起こすと言われる、日本に古くから伝わる妖怪です。豊作・疫病などに関する予言をしたとされています。その姿は、京都大学付属図書館に所蔵されている、弘化三年(1846)4月中旬と記された瓦版に類する刷り物に、絵と文とが記されています。
――――「アマビエ」は、予言をする妖怪なんですね。
はい。現在の熊本県あたりにあった肥後国の海が夜ごと光り、それをその土地の役人が見に行くと、アマビエと名乗るものが出現したとされています。その際、役人に対して「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作が続く。しかし疫病が流行したら、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ。」と予言のようなものを告げ、海の中へと帰って行ったと言われています。
写真:芸人怪奇倶楽部作 「妖怪ステッカー アマビエ護符」¥157
――――「私の姿を描き写した絵」はどんなものと伝わっているのでしょうか?
鳥のようなクチバシ、長い髪に足のようなものが3本生えていると言う特徴があります。諸説ありますが、「アマビエ」の誤記された例の一つと考えられている予言を行い病を除ける妖怪「アマビコ」は、けむくじゃらの獣のような姿をしていると伝えられていますよ。
――――やはり不思議な風貌なのですね。予言のように疫病に対してのご利益は、本当にあったのでしょうか?
言い伝え通りであれば「アマビエ」自身の絵を見せる(描く)ことにより疫病を防ぐといった効果があると考えられますが、実際にそうだと言う記載はどこにもないのです。瓦版をたくさん販売するための売り文句とも考えられます。今流行しているコロナ同様、その当時もなにか目に見えない脅威に対して、みんなが収束を願って、アマビエを描く、作る、見せるといった行為が、息抜きのように一筋の光を見出すという効果があったのだろうと思います。
違う妖怪の話ですが、東北大震災の際も妖怪作家たちが「地震よ静まれ」といった願いを込めて「鯰絵(なまずえ)」を描いてSNS等にUPしています。これは「大鯰」が地震の原因とする伝説が残っていることに由来するもので、今回の「アマビエ」と同じように、みんなの願いの形なのかもしれませんね。
写真:赤綿作 アマビエちゃんとあそぼう
――――「アマビエ」以外にも、今願いを託せそうな妖怪はいますか?
姿、形などは異なりますが、予言と除災という内容を持ち、同じような性質で描かれた妖怪たちがいます。たとえば件(くだん)。牛から生まれた、人間の言葉を話す妖怪です。「生まれて数日で死ぬが、その間に作物の豊凶や流行病、旱魃、戦争など重大なことに関して様々な予言をし、それは間違いなく起こる」と言われていて、その絵姿は厄除招福の護符になるとされています。他にも、その写し絵を見ればその難を逃れ、さらには長寿を得るだろうと言われた神社姫(じんじゃひめ)やほうねん亀、亀女などに願いを込めてもいいかもしれません。これらも瓦版などに残されていますよ。
写真:幻妖商会◆流音作「微睡み妖怪白澤」¥4,624
――――収束のイメージが作られ始めた今、大怪店さんが次に気になる妖怪はいますか?
そうですね……。今回の「アマビエ」と一緒に企画展のテーマになった金霊もいいかもしれません。日本に伝わる金の精霊で、「金霊が入ってきた家はあっという間に億万長者になる」と言われています。あとは、白澤(はくたく)あたりでしょうか。中国に伝わる伝説の生き物で、「人語を解し万物に精通するとされる聖獣である」と言われ、麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)のように、徳の高い為政者の治世に姿を現すとされています。白澤の絵は厄よけになると信仰され、日本でも江戸時代には道中のお守りとして身につけたり、病魔よけに枕元においたりしたそうですよ。
写真:大怪店「LEDライト付き・妖怪アマビエねぷた」¥2,812
――――これからの願いを込めてみたくなりました。今回紹介してくださった妖怪のグッズなどはありますか?
大怪店では、「アマビエ」など妖怪に関する作家やクリエイターのグッズやアート作品をWEB上でも販売しています。南部鉄器の置物や、アマビエ墨絵、キーホルダーなど、様々な形で「アマビエ」を楽しんでみて下さい。妖怪の姿が怖いと感じる方には、可愛らしい「アマビエ」グッズがあるので、お気に入りの「アマビエ」を見つけていただけたらうれしいです。
この自粛が落ち着いた時には、大怪店の店舗でさらに多くの妖怪に触れてみてください。常時1000点を超える妖怪作品を展示販売し、作家/クリエイターによるワークショップ等も不定期に怪催しているので、今の自分に合った妖怪を探してみるのも楽しいはずです。
◆大怪店
住所:東京都杉並区高円寺南3丁目44-17 2F
営業時間:12:00〜19:00
定休日:火曜、水曜
TEL:050-5309-2219
※企画により変更や臨時休業有
※自粛の影響により、営業日に変更がある場合があります。詳しくは、お問い合わせください。
HP:https://otonoke-enoke.jimdo.com/
オンラインギャラリー兼通販サイト:https://otonokeenoke.base.ec/
どことなく怖い印象だった「アマビエ」。その成り立ちを知ったら、なんだか素敵に見えてきませんか? 妖怪や伝説の生き物に願いを込めつつ、不安が多いこの時代を乗り越え出ていきましょう!
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