壮大かつ繊細な彫刻の世界 マーク・マンダースの個展へ
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こんにちは。大石絵理です。季節はすっかり春になりましたね。満開だった桜もいつの間にか葉桜です。私は先日、東京都現代美術館に行ってきましたが、春のあかりが大きな窓から差し込み、ぽかぽかと気持ちがよかったです。
さて、今回ご紹介するのは、その東京都現代美術館で開催されている「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」という彫刻の展覧会です。
“静謐と不穏”の世界に惹かれ、展覧会へ
“触れると崩れそうな彫像、いつどこで作られたのか判然としないオブジェ、人の立ち去った気配が残るスタジオ、暗く長い廊下、…静謐と不穏が混交する、マーク・マンダースの世界へようこそ”
見出しにこんな言葉が書かれた展覧会を発見。マーク・マンダースは、オランダ生まれの彫刻家です。彫刻の展覧会にはあまり行ったことがなかったのですが、この言葉になんとなく強く惹かれ、入ってみることにしました。
マーク・マンダースとは
マーク・マンダースはオランダで生まれ、現在はベルギーを拠点に活動している彫刻家です。ヴェネツィア・ビエンナーレ(2013年)など多くの国際展に出展し、活躍しています。
家具職人の家庭に生まれたマーク・マンダースは、幼い頃からもの作りに取り組んできました。人間の複雑な精神に強く関心を抱き、詩や小説を通して探り続けていたと言われ、若いときには自伝的小説を執筆したこともあるそうです。
作品のコンセプトは、「建物としての自画像」。自身が架空の芸術家として名付けた「マーク・マンダース」という人物の自画像を「建物」として表現しています。空間全体を一つの作品として表現する、インスタレーションとして展開。彫刻やオブジェの一つひとつは独立していながらも、それぞれの配置全体によって人の像を構築するという、ユニークな世界観を持っています。
大きいけれど、繊細な作品たち
作品を見てみるとどれも儚く崩れそう。けれども、強く佇む美しさを感じました。オブジェの配置や連なり、余白、断片など、空間そのものを通して、架空の作家の頭の中をのぞいているような感覚になります。
まずは本邦初公開となる代表作から見てみましょう。2013 年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品された作品です。大きな木のダイニングセットに、彩色されたセラミックなどで作られた少女が微妙なバランスで立っています。木のテーブルとイスがナチュラルなだけに、より少女のオブジェの存在感が引き立っていました。
その大きさと圧倒的な存在感に思わず息を飲んでしまった彫刻作品です。粘土のような灰色に、くっきりとしたイエローの木のコントラストがとてもかっこよくて、見惚れてしまいました。崩れ堕ちかけている頭部や首のラインにも儚さを感じます。脆い素材に見えますが、実はブロンズ製で、とても丈夫に作られています。大胆ながらも細部まで繊細に表現されています。
12年もの月日をかけて完成されたこちらの作品。モダンで、シックで、漂う重厚感。この近くで焚き火を炊き、音楽をかけたらどんな気分になるだろう……と想像してしまうくらい、世界に入り込んでしまいました。
後ろ側に回ると恐竜の彫刻が! 遊び心にわくわくしました。
今回の展覧会で一番好きな作品でした。大きな本を側面から覗いたよう。インテリアとして家に飾りたいくらい(笑)それくらいおしゃれで素敵な彫刻でした。
おわりに
私はpaintingを見にいくことが多いのですが、今回初めての彫刻作品の展覧会に足を運びました。絵画とは違う存在感や大胆さがあり、とても楽しかったです。マークマンダースの歪で斬新な世界に入り込み、まるで異世界に来たような気分でした。ぜひみなさんもその世界を味わってみてください。それではまた次回、よろしくお願いしますー!
■「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」
会場:東京都現代美術館
期間:〜6月20日(休館日:月曜日、5月6日)※5月3日は開館
開館時間:10:00~18:00※展示室入場は閉館の30分前まで
料金:一般1,500円、大学生・専門学生・65歳以上1,000円、中高生600円、小学生以下無料
※予約優先チケットもあり