日本とフランスの“つながり”を名作で振り返る。箱根ポーラ美術館へアートトリップ

神奈川県

2020.12.28

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日本とフランスの“つながり”を名作で振り返る。箱根ポーラ美術館へアートトリップ

目次

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企画展「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」

モネ「睡蓮の池」と浮世絵の意外な関係

美しい日本の女性像はこうして生まれた

日本人がゴッホを愛する理由

日本とフランスが交差する歴史に感動!

皆さまこんにちは! 大石絵理です。
街はキラキラとクリスマスライトに囲まれ、心舞い上がる季節となりましたが、ここ最近は再び自粛ムードで遠出も難しい冬休みになりそうですよね……。そこで今回は、東京からフラッとドライブがてら行ける、箱根のポーラ美術館で開催中の展示をご紹介したいと思います。

ポーラ美術館は大きなガラス窓から太陽の光がたっぷり入る気持ちのいい建物で、私もお気に入りの美術館のひとつです!

企画展「Connections―海を越える憧れ、日本とフランスの150年」

(C)Ken KATO

(C)Ken KATO

さて、今回ご紹介する「Connections」ですが、テーマは日本とフランスの芸術史のつながり。19世紀後半から20世紀頭にかけて西洋のアーティストは日本の浮世絵や工芸品にインスピレーションを受けていたと言われています。

そのフランスを中心に巻き起こったジャポニズムをテーマに、日本と西洋の作品を一緒に展示した異文化のつながりを感じる展示となっています。

さっそく、作品をご紹介。

モネ「睡蓮の池」と浮世絵の意外な関係

クロード・モネ「睡蓮の池」

クロード・モネ「睡蓮の池」

クロード・モネ「バラ色のボート」

クロード・モネ「バラ色のボート」

クロード・モネ「花咲く堤 アルジャントゥイユ」

クロード・モネ「花咲く堤 アルジャントゥイユ」

モネは1883年にパリから北西に進んだ位置にあるジヴェルニーへと移住し、家を建て、庭園を造りました。その邸宅の前にたくさんの花を植え、1893年には隣の土地を買い、セーヌ川から水を引いた池を造り始めたそうです。この池に睡蓮の花を植え、その模様を描いたのが有名な作品「睡蓮の池」です。

モネは、実は江戸時代の浮世絵でよく描かれる「太鼓橋」から曲線の描き方のインスピレーションを受けたそうで、展示では、太鼓橋の描かれた二代目歌川広重の「東都三十六景 亀戸天満宮」が横に並べられていました。(※展示替えによる現在は展示なし)

太鼓橋の描かれた作品は写真を撮りそびれてしまったのですが……西洋画とともに展示されていた浮世絵の一部がこちら。

歌川広重「富士三十六景 武蔵越かや在」

歌川広重「富士三十六景 武蔵越かや在」

こうして日本画と西洋画を並べて見ていると、当時の芸術シーンへの想像が膨らみますね。

こちらは日本の芸術を紹介した19世紀当時の本たち。

フランス語と日本の浮世絵が妙に馴染んで、とてもおしゃれな作品でした。また自由に旅ができるようになってフランスに行く機会があったら、書店で探してみたいものです。部屋に飾ったりしてもすごくハイセンスですよね。

美しい日本の女性像はこうして生まれた

岡田三郎助「あやめの衣」

岡田三郎助「あやめの衣」

日本女性の雪のような美しい白い肌に、柔らかく丸みのある俯いた後ろ姿がまるで生きているようで、思わず息を飲む作品。

こういった裸婦像は、1900年頃から日本でたくさん描かれるようになりました。その背景にあるのが、西洋アカデミスムの重要テーマであった裸体表現。フランスで西洋絵画を学んだ黒田清輝や岡田三郎助によって日本にも広められ、近代洋画の土台となっていきました。

左)黒田清輝「野辺」 右)ラファエル・コラン「眠り」 (C)Ken KATO

左)黒田清輝「野辺」 右)ラファエル・コラン「眠り」 (C)Ken KATO

黒田を指導し、影響を与えた画家ラファエル・コランの裸婦像「眠り」が近年フランスで発見され、こちらの展示で120年ぶりに公開されています。弟子である黒田の作品との共演は初であり、歴史的瞬間をこのポーラ美術館で目の当たりにできるのです。

日本人がゴッホを愛する理由

モーリス・ユトリロ「シャップ通り」

モーリス・ユトリロ「シャップ通り」

モーリス・ ユトリロは、1883年パリ生まれ。素朴な都市の風景画に心和む作品の多い画家です。母はアートモデルをしていたことからフィンセント・ファン・ゴッホと知り合い、さらにはエドガー・ドガに見出されたことでユトリロは画家の道を踏み出すことになったと言われています。

当時の日本は大正時代。ゴッホ、ルノワール、セザンヌに憧れた日本の洋画家が活躍した時代で、この頃多くの日本人画家がゴッホ風の作品を残しました。ポスト印象派のなかでもゴッホは特に日本への憧れが強く、鮮やかな色彩や大胆な構図は日本の浮世絵から学んだとも言われています。そんな親和性から、日本でゴッホ信仰が形成されたようです。

同時に、フランス留学した日本人画家の中でルノワールやセザンヌ調の画風が流行していたり。さらには、日本でも西洋の絵画が数多く収集されるようになり、一世を風靡。それが当時の芸術界に大きな影響を与えたと言われています。

日本とフランスが交差する歴史に感動!

日本とフランス芸術がこんなに交わりあって作られていたんだと改めて知ることができる展示でした。作品を見ていて、これはフランス人画家かなと思ったら日本人の作品だったりして、似ているところと引き合っているように違うところとあり、同時に見られるのは貴重な体験だったと思います。

今回は少し堅い話も書いてしまいましたが、見ている間はどこか異世界を旅しているような気持ち! 柔らかいタッチと優しい色使いに心癒される空間でした。

また、ポーラ美術館1階にあるレストランは、箱根の森のなかで休憩している気分を味わえる素敵な場所でとってもおすすめ。ぜひ温泉旅行がてら立ち寄ってみてください。

それではみなさん体を冷やさないように、良いお年をお迎えください! 来年もたくさん素敵なアートを紹介させていただくことを楽しみにしています♪


■Connections - 海を越える憧れ、日本とフランスの150年
会場:ポーラ美術館(神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285)
会期:~2021年4月4日(日)会期中無休 ※会期中に展示替えがございます
開館時間:9:00~17:00(最終入館は16:30)
観覧料:大人1,800 円 ほか
※そのほか詳細、開館情報は公式ホームページをご確認ください

Author

アート旅 大石絵理

Ambassador

アート旅アート旅

大石絵理

1993年12月22日、東京都生まれ。高校2年生の時にモデルとしてデビュー。ロンドン留学時代、美術館に訪れたことがきっかけでアート鑑賞が趣味に。モデルとして活動し、アパレルブランド「KOL」をプロデュースしている。また、TV、雑誌、広告と多岐にわたって活動中。

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