南の海が緑に染まり、島がひと回り大きくなる 「あおさ」攻めが圧倒的に美しい
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イメージしてみてください。広大な波打ち際一帯が、若々しい緑で輝いてたら……違和感ありませんか? 見間違い、塗り間違い、初めからやり直し! と改めて想像し直すような。でも、本当に緑の海辺ってあるんです。春、岩場のある海辺は超緑! 正体は「あおさ」でした。前回の記事でご紹介した「もずく」と並んで、春っぽさ満点の南の海の風物詩です。迫力の動画は後半でご覧いただきますのでお楽しみに。
緑の海は突然に! 謎が募る徳之島の春
その光景を初めて見たのは3月、徳之島の中心地亀津から車で北へと走っていたときです。あるカーブの直前、海がよく見えるところがありまして……。
「???!」
まるで意味がわからなかったんですよ。道路と海がすぐに離れてしまったので、さっき視界に入った風景を頭の中で再生してみます。……やり直し、……やり直し、やっぱり戻らないとわかんない!
戻って見た海は、これでした。
緑と青のコントラストがお見事! て、緑?! 海に出て足元を見ると、どうやら海辺一帯に海藻らしきものが生えているようなんです。と言ってもねぇ、この緑の量ハンパないでしょ。海辺を占拠するほど勢いのある海藻って何?! 基本、海藻はカロリーが低いではないですか、だからか、そんな勢いがあるとは思えないんですよね(勝手なイメージ)。
謎は残るけど、これがリアルな風景です。ここだけの現象なのかと思い、グーグルマップに「緑の海」とタグをつけてひとまずほっ。自分の中で落ち着きどころをみつけました。
ところで緑が写真のように黄色っぽく見えるのは、光が強すぎるからです。実際に目で見ても、日差しの強い時はより黄色がかって見えます。
それにしても、島が直接水に接しないように、カバーをつけているみたいですよね。検索窓に「防水ケース 緑色 徳之島サイズ」と打ち込むと、スマホケースならぬ、島のケースが出てくるでしょうか。でもここは離島だから、配達には時間がかかりそう(笑)。
こちらは波打ち際を真上から俯瞰したところ。はじめにこの写真をパッと出されたら、何が写っているかわからないでしょう。マリメッコのお花柄を劇画バージョンにしたような。
これは沖の方から見た様子。結構な海の真ん中まで緑に染めてるんですね、海藻おそるべし!
春の風物詩、海の「あおさ」と陸のじゃがいも畑が一体化
緑の海を後にして、北上を続けます。すると今度は丘の上から海を見渡せる開けたところに出たので、車を停めて降りてみます。あらまー絶景。
手前に見える赤土地帯はじゃがいも畑で、そこに見える方々はちょうど収穫しているところ。これも徳之島の春ならではの情景なんですよ。内地に出回っているじゃがいもで「鹿児島産」と書かれていたら、徳之島産であることも多いとか。
そして問題はその奥。海が自然に畑から続いて見えるでしょ、海も緑なんです。そう、ここにも緑の海がありました。
徳之島の海は不思議だなぁと思っていたら、地元の人っぽいおっちゃんがすぐそこのご飯屋さんから出てきたので聞いてみます。
「あぁあれ? あおさだよ〜、今も採ってるんじゃない? ちょうど干潮でしょ」
あおさ! たまに食べるアレ?! まさかこんな風に生えているなんてまるで知りませんでした。初めてあおさという存在を、調理前の様子から認識できて感激です。
「徳之島はいつもこんな感じなんですか?」
「いやいや、春だよ。2月くらいから5月くらいはこうだね」
「へー! でもあっちの海は緑じゃなかったなぁ……」
「岩場に生えるからね、砂浜にはないよ」
なるほど、色々納得です。
石垣島の「あーさ」ワールドが圧倒的すぎる!
続いて4月、石垣島に行ったんです。ドローンを飛ばそうと、大潮の干潮の時間を狙って大浜へ出かけると、あらららら。
もうこれが「あーさ(沖縄でのあおさの呼び方)」と知っているから風景に納得はしているけど、びっくりもしています、思いっきり。こんな情景知らない! 徳之島で体感したのよりずっと広大だし!!
お待たせしました、感動を動画でどうぞ。
海の向こうの向こうの方まで緑に染まっているのは、石垣の珊瑚礁が広大だからでしょうか。あーさが生える岩場は、詳しく言うと隆起サンゴ礁石灰岩の岩場というから、サンゴ礁がより大きい方が生育地として適していそうですよね。ほらきた石垣、ここのサンゴ礁は、国内外に名を轟かせる広大で美しい「石西礁湖」ですよ。
ドローンで沖の方へ1キロ近く飛んで行っても、緑地帯は続きます。潮の満ち引きの大きい大潮の日の干潮の時間は、人間もずーっと向こうの海の中まで歩いていけるほどなんです。そんなときはあーさも水から顔を出し、緑の主張をめいっぱいし続けてくれるので、よりインパクトがありますね。なんだか、石垣の島がひと回り大きくなったみたい。
潮が引いても水から出ない所にはあーさは生えないようです。清々しい石垣の海の水色と、若々しいあーさの緑の仲よし加減がたまりません。自然の色の配色はいつもお見事です……というか、大昔から人間の目に映ってきた自然に合わせて、脳みそが美しいと判断するようになったのかもしれませんね。
そうそう、あーさの海を歩くときは滑るから、足もとに気をつけてください! マリンシューズか、濡れてもいい靴か、驚異的に滑らない漁業サンダル=ギョサンを履くのがおすすめです。石垣島の街中や離島ターミナル、ネット販売もしています。(連載第2回 ドローン“自撮り”は大自然との共同作業! 撮影のコツは服選びにありでも紹介しています。)
南の島の季節の印象は、9割が夏ではないかと思います。陽気な夏空の海と、天気予報で見る台風の激しい海。他の季節にもこんな豊かな表情があるなんて知ったら、ほんのちょっと、世界が広く感じられませんか? ぜひ春の島へ訪れて、この圧倒的な情景に包まれていただきたいです。