[タベサキ Vol.4]ご当地スーパーの味 イツモノ
まぐろたっぷりお好み寿司(山梨・イッツモア塩部店)
山梨県
2019.02.27
タベサキ
ご当地スーパー研究家の菅原佳己さんが、そのエリアの食を支えるご当地スーパーで、地元の“いつも”の味をピックアップ!
写真・文:菅原佳己
山梨県甲府市の『イッツモア塩部店』
「まぐろたっぷりお好み寿司(タレ)」 599円(税抜)
甘いタレがたっぷり!
なぜか「まぐろ消費量全国第2位」「人口1人あたりの寿司店数全国1位」と、食に関するランキングが港町レベルな“海なし県”の山梨。まぐろの水揚げ量日本一の静岡県と隣り合いながら、魚介類を簡単に入手することが難しかった時代が長く続くなか、「まぐろを食べたい!」と願い続けた県民の執念が築き上げたランキング。今も山梨ではご馳走の代名詞は「まぐろの握り」なのだ。
内陸で魚を食べられる地域に限りがあった時代、駿河湾で水揚げされた生のまぐろを人馬が運んで食べられる限界の地が、甲府であった。その甲府駅から1kmほどの距離にある「イッツモア塩部店」は、山梨を代表するご当地スーパー「いちやまマート」が展開するショッピングセンターのひとつ。流通網が発達し、全国から鮮度のいい魚を仕入れることができる現在も、お刺身売り場は赤が目立つ“まぐろ優勢”。握り寿司も“まぐろが主役”である。
ただ……江戸時代は、山道を運ぶうちにどうしても鮮度が落ちてしまう。そこで考案されたのが握り寿司に塗る「甘いタレ」。普通は穴子などに使用される定番の「ツメ」と呼ばれるあの甘い煮詰めたタレを、まぐろの上にたっぷり。瞬時にきらめく赤身の色と弾力を取り戻したかのように見え、さらに少々の風味の悪さも、タレの味がカバーしたと言われている。
県民の好みを知り尽くす「いちやまマート」の一部の店舗では、たっぷりのまぐろの赤身5貫とエビやイカなどの入った「お好み寿司」を用意。提供するネタのうち7割は醤油で食べる一般的なスタイルで、3割が「タレ」仕様。もはや鮮度など関係のない卵焼きにまでタレは塗られているのだが、そもそも、現在は船上から鮮度を保ったまま運ばれてくるネタばかり。なのに、惜しげもなく塗った甘いタレが、甲州人ならずとも「意外にイケる」と思える驚き! じつは「寿司と甘いタレの相性の良さはネタを選ばない」というのは大発見なのかもしれない。こんな味の大冒険も、スーパー価格で仲間とフードコートでシェアできる気軽さのお陰。予約や、ネタや予算の注文にも応える。
Profile
スーパーマーケット研究家。夫の転勤で国内外の転居を繰り返すうちに、スーパーの魅力に気づき、埋もれた日常食の発掘などの研究をスタート。ご当地スーパーやご当地グルメブームの火付け役として、テレビや雑誌、新聞などで活躍している。著書は『日本全国ご当地スーパー掘り出しの逸品』(講談社)など多数。新刊『東海 ご当地スーパー 珠玉の日常食』(ぴあMOOK中部)では、より狭くディープに探究。
https://www.gotouchisuper.online
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