自転車旅に目覚めたきっかけ。初めてにして最高の「小豆島」

香川県

2022.05.03

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自転車旅に目覚めたきっかけ。初めてにして最高の「小豆島」

こんにちは! 山岳自転車旅ライターの土庄です。前回は、自転車旅の始め方についてご紹介しましたが、今回は私の経験をもとに、自転車旅の魅力について具体的にご紹介します。これまで7年ほど、日本全国を自転車で旅をしてきました。その中で原点と言える場所が香川県「小豆島」です。どこまでも美しい瀬戸内海や、旅先での一期一会、自分の殻を破った瞬間など、忘れられない思い出が詰まっています。

目次

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初めての自転車旅は香川県「小豆島」へ

日本の原風景を駆け抜けて、いざ姫路まで約130km

旅情がたまらない船旅。果てしなく美しい小豆島の風景に感動

半べそをかきながら、なんとか宿にたどり着いた切実な記憶

自由度の高い自転車旅と、登った者にしか見られない絶景

初めての自転車旅は香川県「小豆島」へ

(写真2)初めて購入した軽量アルミロードバイク「FUJI ROUBAIX1.3」

(写真2)初めて購入した軽量アルミロードバイク「FUJI ROUBAIX1.3」

前稿で紹介したように、クロスバイクを購入してすぐさま自転車の虜になった私。半年ほどすると、大学の夏期休暇を丸々アルバイトに投じて、よりスポーツ志向の高い「ロードバイク」を購入しました。

ペダルを漕いだ分だけ、ぐんぐん加速するロードバイク。「この自転車とならどこへでも行ける!」そんな感覚を覚えた記憶があります。

(写真3)“日本のエーゲ海”と呼ばれる穏やかな景観の「小豆島」

(写真3)“日本のエーゲ海”と呼ばれる穏やかな景観の「小豆島」

そして日帰りで100km以上の距離を走り慣れてくると、次第に「泊まりがけで自転車旅がしたい」という思いがふつふつと湧くように。学生時代に暮らしていた京都から近く、また旅情もたっぷり感じられそうな場所。そのフィルターをかけた結果、香川県「小豆島」を選択しました。

日本の原風景を駆け抜けて、いざ姫路まで約130km

(写真4)早朝4時に家を出て姫路までひたすら自走

(写真4)早朝4時に家を出て姫路までひたすら自走

当時、輪行(※)を知らなかった私は、京都〜姫路の約130kmを自力で走りました。今思うと中々クレイジーですが、この時の思い出が、いつまでも自分の心の中に残っています。

※輪行:自転車を専用の袋に入れて交通機関で運ぶこと

(写真5)見知らぬ土地で朝を迎える、忘れられない高揚感

(写真5)見知らぬ土地で朝を迎える、忘れられない高揚感

夜明け前から峠越えをして、南丹市で迎えた感動的な朝。リズムよく駆け抜けた兵庫県の山間部。走行中に流れていく、のどかな日本の原風景。爽快さと汗の匂いに満ちた記憶。旅先のなんてことないシーンでも愛おしくなる感情。自分の足で走ったからこそ、移動も最高の旅になります。自転車は、そんな楽しさを教えてくれた気がしました。

旅情がたまらない船旅。果てしなく美しい小豆島の風景に感動

(写真6)海を渡ると「いよいよ瀬戸内海まで来たんだ」という実感

(写真6)海を渡ると「いよいよ瀬戸内海まで来たんだ」という実感

姫路へ到着したら、小豆島フェリーに乗って、小豆島福田港へアクセスします。フェリーは小学生ぶりだったので、新鮮ながらどこか懐かしい気持ちに。

気持ちいい快晴の中、デッキから瀬戸内の多島美(たとうび)を眺めながら、非日常の時間を満喫しました。自転車旅の中にフェリーを挟むだけで、旅情がぐんと高まります。

(写真7)交通機関の活用次第で旅のルートは大きく変わる

(写真7)交通機関の活用次第で旅のルートは大きく変わる

電車や船、飛行機を活用すれば、自転車旅の可能性は無限大です。たくさんのフェリーが運行している瀬戸内を旅先に選んだことも、私が自転車旅にのめり込んでいくきっかけになりました。

このテーマについてお話しすると長くなるので、また別稿を期したいと思います!

(写真8)福田港周辺にて。どこで立ち止まっても美しい海

(写真8)福田港周辺にて。どこで立ち止まっても美しい海

小豆島に到着すると、今まで見たことのない透き通った海が広がっていました。荒々しくも美しい入り組んだ海岸線は、どこから眺めていても飽きません。

また島のいたるところに植えられているわっているオリーブの木々が異国情緒たっぷりです。すでに約130kmも走っている疲労感も忘れ、無我夢中にペダルを漕ぎ続けました。

半べそをかきながら、なんとか宿にたどり着いた切実な記憶

(写真9)コンビニ近くの海に見惚れている場合ではなかった……!!笑

(写真9)コンビニ近くの海に見惚れている場合ではなかった……!!笑

しかし実は、順調だったのはここまで。小豆島福田港から15kmほど走って、小豆島町のコンビニに立ち寄った時、地元のおばあちゃんと会話する中で、ひとつの誤算が明らかになったのです。

おばあちゃん「君、どこから来たのかい?」
自分「京都です。自転車で来て、これから泊まる宿を目指しています。」
おばあちゃん「京都からとは大したもんだ! それでどこの宿に泊まるんだい?」
自分「小豆島ヴィラにある宿です!」
おばあちゃん「ヴィラってまだ人が住んでたのねぇ。この時間だと日没前には着けないと思うから、私の名刺を渡しておくよ。小豆島で車屋さんをやっているんだけど、何かあったらこの電話番号にかけてもらえば良いから」
自分「……!?!?」

(写真10)高負荷な登りに、心がポッキリと折れかけてしまう

(写真10)高負荷な登りに、心がポッキリと折れかけてしまう

一気に焦燥感と不安に駆られ、急いで宿を目指しましたが、その理由はすぐにわかりました。

なんと、この日泊まる「ライハのツボ」が位置しているのは、今は半分廃墟と化した小豆島ヴィラという旧別荘地で、標高約600mほどの場所。そこに至るまで6km以上の激坂ヒルクライムが待ち構えていたのです。

すでに160km以上走ってきた私は、すでに虫の息。何度も自転車の乗り降りを繰り返し、半分泣きべそをかきながら登りました。

(写真11)到着した歓喜とともに、張り詰めていた糸が切れる脱力感

(写真11)到着した歓喜とともに、張り詰めていた糸が切れる脱力感

街灯もなく、目の前に対峙するのは坂だけ。どんどん日が暮れ「果たしてこの先に本当に宿はあるのか?」という疑いさえよぎります。しかし電波も圏外だったため、宿主に連絡のしようがありません。

残された私にできることは、この先に宿があると信じて進むのみでした。逃げ出したくなる現実と格闘すること1時間半、日没後に宿へ到着します。この時の安堵感は今でも忘れられません。ようやく私の初自転車旅1日目が幕を閉じました。

自由度の高い自転車旅と、登った者にしか見られない絶景

(写真12)オーナーのTさんに会うために何度も「小豆島」を再訪。5年間で10回以上

(写真12)オーナーのTさんに会うために何度も「小豆島」を再訪。5年間で10回以上

今では、あの過酷なクライマックスで諦めて引き返さなくて本当によかったと思います。実は宿泊した「ライハのツボ」のオーナーTさんもサイクリスト。その後の私の自転車旅スタイルに大きな影響を与えてくれたのです。翌日には小豆島のお気に入りスポットをアテンドしてくれました。

たった半日ほどでしたが、寒霞渓やエンジェルロードをはじめとした絶景や、瀬戸内国際芸術祭の会場らしいアート作品「オリーブリーゼント」などを巡り、名物ランチやジェラートをいただくなど、とても充実していた記憶があります。

(写真13)絶景旅・アート旅・グルメ旅など。自由自在な小豆島の旅

(写真13)絶景旅・アート旅・グルメ旅など。自由自在な小豆島の旅

1周約100kmの小豆島には、自然風景やアート作品、グルメにいたるまで様々な要素が凝縮されています。自転車であれば、自分の感性にしたがって、どんなルートも引くことができるのです。自転車旅に型はありません。自由な感性と機動力の高い自転車を組み合わせることで、オリジナリティの高い旅へと変換されると実感しました。

一方で、道中は思いがけない発見に富んでいるのもポイント。自分の好きなようにルートを引きながら、一期一会の出会いを楽しめます。些細な瞬間が、旅から帰った時に宝物のような記憶へ変わることも多いです。

(写真14)小豆島ヴィラから眺める、瀬戸内海のドラマチックな夕日

(写真14)小豆島ヴィラから眺める、瀬戸内海のドラマチックな夕日

今回の旅では「ライハのツボ」に連泊したのですが、初日心折れた6kmの激坂を、2日目には足つきなしで登ることができました。旅を通じて、自分の成長を感じられたことも大きな収穫でした。坂を登り切ると、瀬戸内の多島美へ夕日が沈んでいく、ひたすらに美しい光景が待っていました。この時に味わった感動が忘れられず、登った者にしか見られない絶景が、次回以降の旅のモチベーションに変わっていきます。

体力を要する過酷なルートのため、そのままおすすめはできませんが、小豆島はがんばって走った後に美しい景色が待つ、自転車旅にぴったりの旅行先です。計画する際には、ルートの下調べを入念に行ってから訪れてみてください。

そうしてこの時、北は知床から、南は屋久島まで、絶景を求めて自転車で全国各地を巡るスタートラインに立ちました。詳細は今後の連載でお伝えしていこうと思います!


◆ライハのツボ
住所:香川県小豆島町池田5596-7
電話番号:090-5043-6189、0879-75-2110
予算:素泊まり1,000円~、食事付き2,500円~(応相談)

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自転車旅 土庄雄平

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土庄雄平

1993年生まれ、愛知県豊田市出身、同志社大学文学部卒。第二新卒を経験後、メーカー営業職とトラベルライターを両立。現在は、IT企業に勤務しながら、自然・暮らしに一歩踏み込んだ情報発信に精を出す。学生時代から、ライフワークにしている登山と自転車旅をかけ合わせ、四季に身を投じる旅スタイルで日本各地を巡っている。好きな被写体は、道や雪山の風景。最近は秘湯めぐりにハマっている。

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