朝食ブッフェがすごいビジネスホテル3選(西日本編)/ホテル評論家・瀧澤信秋 連載vol.3
前回は、ビジネスホテルの競合が強まり、朝食による差別化の傾向から注目すべき進化を遂げているコンテンツとして解説しつつ、東日本の朝食ブッフェがすごいビジネスホテル3選を紹介しました。今回は西日本編の3ホテルを紹介します。
ここでいう“ビジネスホテル”とは、宿泊を主体とした宿泊施設という意味で捉えています。機能性や利便性と共に、ビジネスホテルというワードの持つリーズナブルさやチープさいったイメージとは無縁な、オシャレで秀逸なコンセプトのホテルも指していることをお含みいただければ幸いです。
写真/瀧澤信秋
目次
【大阪府】バリスタイルのエンタメホテル「ホテルバリタワー大阪天王寺」
いきなりで恐縮ですが“ここってビジネスホテルなの?”という声が聞こえてきそうな個性派ホテルです。ホテルの入るタワーには、アミューズメント施設、バンケット施設、レストラン、スパ施設などが集まっており、全体としてバリスタイルのコンセプトが貫かれています。ビジネスホテルは宿泊特化・宿泊主体と先述しましたが、“リゾートホテル”であり“ビジネスホテル”でもあり、“エンタメホテル”でもあるという多様な用途で利用できる複合的なホテルであると、ホテル側は標榜しており、ビジネスホテルとしても利用できる、ということになるでしょうか。
こちらのホテルと食でいえば、この季節に屋上でビアガーデン&BBQが楽しめます(19:00~)。デパート屋上などの定番風物詩ですが、さすがホテルライクなサービスです。テーブルのサイズや動線にはじまり、トングのサイズや食器のセレクト、インスタントラーメン!? まで感心することばかり。そして騒々しくないのは音が抜けるような環境だからでしょうか。そんなゲスト目線のホテルだけに朝食にも注目です。ミニバーガー、茶美豚のソーセージ、ハッシュドポテト、季節のフルーツマリネ、選べる人気のプチトーストなどなど多彩なメニューが目を惹きますが、感動的なのが“特製ビーフシチュー”。
濃厚なソースにたっぷり入った野菜や肉の食感がたまりません。朝からお代わり必至の大満足シチューです。リゾート感溢れるバリの雰囲気で味わう料理の数々、思わず夕食のメニューと間違えてしまうほどの充実な大阪天王寺の朝です。
【島根県】ご当地メニューと豪華スイーツも並ぶ「天然温泉 だんだんの湯 御宿 野乃 松江」
競合極まるビジネスホテルですが、多くのチェーンが顧客獲得のためにしのぎを削っています。そのような中でも人気ブランドとして名高いのが「ドーミーイン」。全国区のビジネスホテルで各地へ展開していますが、「ドーミーイン」をはじめ「ドーミーインPREMIUM」「ドーミーインEXPRESS」などいくつかのブランドがあります。今回紹介する「御宿 野乃(おんやど のの)」もドーミーインブランドで、ビジネスホテルと旅館の融合をイメージし、全館畳敷きで和風テイストのドーミーインがコンセプトなのです。
ドーミーインは、そもそも天然温泉大浴場の充実度でも知られるブランドですが、旅館をイメージするホテルだけに「御宿 野乃」の天然温泉大浴場も極めています。極めているといえばブッフェ朝食もしかり。充実の海鮮はもはや御宿 野乃のデフォルトともいえますが、各店の個性派メニューにも注目です。松江では宍道湖が近いこともありしじみ汁などご当地を感じるメニューが揃っていますが、なかでも“割子こそば”はおすすめ。食べやすさはもちろんトッピングの具材も充実しています。
そして驚愕なのがデザート。何と、北海道産の赤肉メロンがあるではないですか。ビジネスホテルのブッフェで高品質メロン……。御宿 野乃ブランドの期間限定メニューとのことですが、いやはやここまで極めるとは。食に温泉とリラックス度も抜群。仕事や観光旅行の疲れも癒せること請け合いです。
【福岡県】賞味期限が100秒のアレも魅力「The BREAKFAST HOTEL福岡中洲」
福岡の賑やかなエリアである中洲に立地するホテルです。中洲川端商店街やキャナルシティ博多、櫛田神社など有名スポットのほど近くへ2022年4月にリブランドオープンしました。総客室数134室のホテルですが、どの客室も丁寧にメイクされたベッドが印象的。清潔感も高くスタイリッシュなインテリアもあいまって快適に過ごすことができます。ここまできてお気づきでしょうか、こちらのホテル名、まさしく“朝食”にフィーチャーしているのです。冒頭でホテルは朝食での差別化が進んでいると指摘しましたが、そのようなフェーズにあって、敢えて“朝食”をホテル名にするとは……。出向く前から期待値タダ上がりです。
無論、そのホテル名から朝食が目的のひとつというゲストが多数チェックインしています。そして期待を持って出向いた朝食は素晴らしい時間。選び抜いた素材にできたてを提供したいとの思いが伝わってくる丁寧な調理、ディスプレイや照明など見せ方も秀逸です。そしてゲストが歓喜と驚きの渦に包まれるのがオリジナルメニュー。 「産地直送海鮮こぼれるぞ丼」「ありたどりの絶品とりまぶし」の2種類から選べるメインが大好評です。「あたり鶏の絶品とりまぶし」は地鶏昆布ダシで〆る満足度高きメニュー。「産地直送 海鮮こぼれるぞ丼」はたっぷりの地魚を堪能できます。
そして濃厚生クリームに柑橘系ソースのアクセントも印象的な「極上100秒フレンチトースト」。100秒とは「賞味期限が100秒」という聞いただけでたまらない、カリッ・フワッ・トロッ体験です。
おわりに
充実のビジネスホテル朝食いかがだったでしょうか。どこまで進化するの?と心配にもなってしまうほどですが、まだまだ目が離せないビジネスホテル朝食の今後にも目が離せません。
なお、ホテルによって宿泊プランがお得だったり、外部からの利用可否、紹介したメニューが変更になる場合などありますので、実際の利用に際しては公式サイトなどでチェックいだたければと思います。