今年も台風シーズンに突入秒読みの時期となりました。同時に、沖縄の青い海万歳シーズンの到来でもあります。この組み合わせ、頭が痛いですね！　ただ、迷っていても始まりません。行くと決めなければ、トロピカルな世界に飛び込むすべはないのです。今回は、ドローン撮影のために沖縄にせっせと通うわたしの台風の経験と、そこで出合った絶景をご紹介します。みなさんの夏の計画の参考と勇気になりますように。

ご褒美その１・台風前の雲が芸術すぎる

2018年7月のはじめ、台風8号、通称マリアが宮古・石垣あたりを通ったとき、わたしは石垣にいました。沖縄で経験した台風では一番強烈でした！　地元の方々には笑われてしまいそうですけどね。この台風は日本の南の海を東から西へと横断したので、本土へのインパクトは大きくはなかったと思います。沖縄が台風銀座と言われるのは、本土まで到達するのもしないのも、発生するほとんどの台風の影響を受けるからなんですね。

もちろん、滞在中に台風に合うなんて嫌です。でも、こればっかりは仕方ないです。こういうときこそ「なんくるないさ〜」と笑い飛ばそうではありませんか。台風を耐え忍んだ者にしか味わえないご褒美もあることだし！

ひとつめのご褒美はこちら。台風の前の空が美しすぎて！

台風接近前日の朝、わたしは神々しい空の下に佇んでいました。いつもとはひと味違う迫力に心底うっとり。これから空が荒れることはもちろん知っています。でもこんなご褒美を先出しされたら受け入れるしかないじゃないですか。自然の優美なやり口はニクいですねぇ。

写真2枚目、立体的に発達した雲と、斜めの光が共鳴……世界のコントラストが強烈で絵画の中にいるみたい。自分がどこにいるのかわからなくなってくるんです。ちなみに、急に風の威力が強まってきたのでドローンはしまいましたよ。

太陽と反対を向いた瞬間、空気感が変わります。丸くて小さくてころころした雲のこどもがどんどこ流れて行くんです。みんなで一斉に遊びに繰り出したみたい。しかも空のずいぶん低いところにあるから、両手を広げて「おいで〜」と声をかければ胸に飛び込んで来そうなかわいらしい雰囲気です。

夕暮れ時になると、雲はさらなる進化を遂げていました。ほとんど『ゴーストバスターズ』。

夕日も強烈です！　バイクで走りながら、このまま行ったら異次元に突入なんじゃ……リアリティを持ってドキドキと考えてましたよ。

その直後が写真2枚目。太陽はまだそれなりの高さのところにあるのに、世界は渋く染まりました。台風の湿った空気の影響でしょうか。

そうして太陽が沈む頃、向こうの向こう、奥まで並ぶ雲が紫に染まっています。なんだかグッと来ちゃう色合いですよね。台風接近の前日、朝から晩まで、とにかく空が素敵で素敵で、すっかり心奪われました。

沖縄で台風とバッティング！　旅人は準備が肝心

さて、台風が近づくとわかったら、住人も旅行者も準備をしないとなりません。

まずはなるべく早めに買い物に出かけましょ。食料や水などは早い者勝ちなんです。スーパーやコンビニはあっという間に品薄になっていきますよ。とくにカップラーメンの棚なんてお見事なほどにスカスカ。本土に住んでいるとなかなかお目にかからない光景なので、ちょっとした感動がありました。

ところで懐中電灯は持っていますか？　なければ合わせて買っておいてくださいな。

充電大会も忘れずに。あらゆるものを充電しておいてください。スマホ、パソコン、カメラ、交換バッテリーなどなど。いつ、どんな長さの停電に見舞われるかわかりませんから。

昼間はスーパーで上記の買い物、その後友人の家に泊まっていたのですが、どんどん風が強まり台風接近を体感するにつれ、不安が募っていきます。「予想最大瞬間風速80m/s」とかいう恐ろしいフレーズまで聞いちゃったし。検索すると、車がひっくり返り屋根は吹き飛ぶとあるではありませんか。うそでしょ、うそと言ってちょうだい！　まぁ、にわかには信じられませんが、長い停電になるのは改めて覚悟するのでした。そんなとき元気を手軽に出すにはお酒と甘いものが必要じゃない？　まだ足りない気がして、夕刻に再び買い出しです（笑）。

すでに風は強く、緊張してバイクを走らせると、わいわい元気に遊ぶ子供とすれ違います。おぉ、なんて強靭なハート！　生まれてわずか数年の間に積まれた経験が、肝っ玉を強く大きく仕立てたのでしょうか。経験って偉大ですね。

ご褒美その２・台風籠城、長い停電。時間だけたっぷりある贅沢

さて、台風本番の朝を迎えました。昨夜から雨戸をぴっちり閉めているので朝感が薄いです。とはいえいつも通りに過ごしていると、昼前に突然iPhoneがなり、漢字だらけの怪しい画面が浮かび上がります。

おぉ、避難勧告が発令されているではありませんか！　ですが、地元の人は動じません。

「避難場所に行くまでに飛ばされちゃうよ」

確かに。いるところから距離があるのです。

ほどなく友人たちが食料を詰め込んだダンボールを持って車でやって来ました。他の離島に滞在していたけど、予定を繰り上げて石垣に戻って来ていたのです。そして一緒にここでやり過ごすというわけ。

もしあなたが台風前のタイミングで小さな離島にいるなら、船が欠航になる前に、こうして石垣島に移ることをおすすめいたします。離島は物資が乏しいから大変ですもんね。そして石垣の宿は、離島から急遽戻った人や、飛行機が欠航になった人たちですぐに埋まってしまうので、決断は早めがいいと思います。

それにしても風のすごさよ！

「ゴーゴゴゴーーー!!!!!」

風の爆音が大げさすぎてハリウッド映画みたい、マリア暴れすぎ!! 奥の木は左に大きく傾いているのに、手前の木は右に揺れて……どっちかはっきりしなさいよ！　その後、再び外の様子を見るべく玄関を開けようとしたけど、なんとまぁ、風圧がすごすぎて扉が開きません。ふぬっと力を込めて体で押してもビクともしないんです。もしもこの風を生身で受けたら……考えるだけでゾワッ。

怖い、怖すぎる！ しかも外に出られず窮屈だ!!　

そんな気持ちを紛らわすためにも、さぁさゆんたく始めましょうよ。「ゆんたく」とは沖縄の方言で「おしゃべり」の意味です。でもこんな風に「みんなで集まって、飲んでおしゃべりをする」という家飲みに近い意味合いで使われているのもよく聞きます。

夕方を迎えた頃、スッと明かりが消えました。夜になる直前とはいえ、雨戸を閉めているので家の中は暗闇です。ランタンの灯り頼みになったらいよいよ台風気分は最高潮！　

それにしても心配なのは冷蔵庫の中身。そして辛いのは暑さ。でも全てどうにもならないんだから「なんくるないさ」と受け入れるしかないのです。冷凍肉が解凍されても、ビールがぬるぬるになってもいいじゃない、めっちゃ暑くてもよくないけどいいじゃない。汗流しながら楽しく飲みましょうよ！　いつのまにか、ゴーゴー聞き分けなく荒れ狂うアリアの音は、ただのBGMになっていました。

ちなみにキッチンは電気コンロですが、鍋のためではなく、停電のために用意されたカセットコンロがあるので大丈夫。簡単な料理をカセットコンロでこなしたら、ランタンの下で再びのゆんたくです。時間だけはたっぷりあるので、話はあらぬ方向すごい深さ、超雑談へと進んで楽しいこと。パソコンやiPhoneの充電もいざという時のためにとっておき、電波欲求がスッキリ消え去る奇跡を味わいつつ、ただただ今を語り合う……あー贅沢。こんな時間の使い方、他の条件じゃちょっと難しいです。すばらしいでしょ、台風のご褒美。

いつのまにか眠りについて、気づくと雨戸の隙間から眩しい光が差し込んでいました。去るものは去るんですね。家の周りをパトロールしに出ると、折れた木の枝がたくさん道に落ちています。海に抜ける木のトンネルもそう、下にも緑が敷き詰められ、道の先には青く輝く爽快な海。なんならこうやって整えたら観光名所になりそうです。

写真2枚目、アダンの果実もドサッと落ちていました。アダンは南の島ではよく見かける、葉っぱがえらくトゲトゲした痛い木です。果実は食べられないこともないようですが、積極的にはそうしません。台風の後に散らばっているものも鮮やかで南国らしい様子です。

そうこうしているうちに電気が戻って来ました、14時間ぶりです。なんだかやりきった感！　そうして台風ゆんたくは解散となったのですが、祭りの後のように寂しいんだから不思議なものです。

これは民家でのお話ですが、籠城する場所をお宿と置き換えても、コンロこそないけどまぁ似たり寄ったりです。ちょっと縮小したゆんたくと思っておけばいいですよね。ぜひ楽しんじゃってください。

ご褒美その３・台風後の空の色が甘美すぎる

台風のご褒美はまだまだありますよ。台風一過の夕焼けほど、楽しみなことはありません!! 風が強くドローンはお預けになりがちですが、すばらしいものはすばらしい！

ぐっと印象的な、忘れられないシーンでした。佇んでいるだけなのに、泣きたくなるような色合いで辺りが包み込まれます。台風は本当に飴と鞭。


ここからは台風８号ではなく、他の数々の台風の直後の石垣島の様子をどうぞ。あまりにきれいで、なんなら台風とバッティングしてよかったなーと思えてしまうのですから。

このときはすぐに風がおさまって、こうして空から夕焼け空を写すことができました。陸沿いの海には濁りが見えるけど、それ含め世界全体が淡く柔く、メルヘンチック。実はこれ、東を向いているんです。照り返しだけでこんな夢のような情景に。西を向くと……

いつもは静かな石垣の海でも、ざぶーんざぶーん波は打ち寄せ、スイーッと太陽は沈んでいきます。丸く赤くまっしぐらに。なんとも正しい、THE夕日の姿を見せてくれました。

こちらのシーン、動画でもどうぞ。

このときは台風直後に干潟にやって来ましたよ。きれい、きれい、太陽に重みを感じるのは台風後ならではの空気のせいでしょうか？　ていうか、蚊がすごかったー!!　台風一過には蚊が増えるという噂は聞いたことあったけど、本当なんですね、お気をつけて。

そしてこちらもまた違う台風の直後。大風ビュービュー吹き荒れる中、世界が葡萄色に染まったのでした。

これほどまですごい夕日に出会える保証は普段はありません。でも、台風の後なら必ずワンダホーな空になるから、台風も悪くないんですよね。いや知ってます、台風にバッティングしないほうがいいに決まってます。でも、そうなったら仕方ない、台風への落胆の倍の熱意を持って堪能して、「あーすごいの拝んじゃった」と強がっておくのもいいでしょう。

台風で飛行機が欠航になったら。早い情報収集が吉

さて、あなたのフライトと台風が当たると、それはただただやっかいですね。でもやっぱり仕方ない、合言葉は「なんくるないさ」！　　

自分のフライトと台風が重なりそうだとわかったら、航空会社からのメールやHPのチェックはこまめにどうぞ。もしも欠航になったら日程変更はできるので、より都合のいい便をおさえましょ。それにはひとえに速さが肝心です。航空会社によっては電話対応もありますが、殺到してなかなか繋がりません。時間ロスになるのでHPから問い合わせるのが吉でしょう。

また、ホテルなどの予約も、事情を話せば返金してくれるところが多いと思います。めんどくさいけどこれも思い出です、あきらめずに交渉をどうぞ。

それから、空港についてから欠航と知るパターンもあると思います。そのときは空港近くのホテルが瞬く間に埋まっていくので、お宿の確保も忘れずに。わたしも思いがけず空港近くのホテルに泊まることもありましたが、やることを一切決めていない、ポカンと空いた貴重な時間にワクワクしたものです。


いかがでしょう、台風シーズンの旅行に勇気が湧いたでしょうか？　沖縄は台風の国だもの、旅行に当たって当然くらいの気持ちで、どーんと構えて楽しんでくださいね。ボンボヤージュ！